マレーシアのデジタルマーケティングトレンド2022(Web/SNS事情/EC、マーケット傾向分析)

マレーシアはソーシャルメディアの利用時間が日本の約3倍だと言われています。国別のソーシャルメディア(SNS)の利用時間ランキングを見ると、マレーシアは1日あたり3時間で、世界トップ10位に入るほど熱心にSNSを利用しています。

今回は、 マレーシアへの事業進出を検討している方に向けて、同国の2022年における基本的なデジタルマーケティングトレンドについてご紹介します。

マレーシアの概要

2022年1月現在、マレーシアの人口は3,298万人で前年比プラス1.3%、40万8,000人程度の増加が見られます。また男女比は48.6%が女性、51.4%が男性と、やや男性の方が多い結果となっています。マレーシアの人口の78.2%は都心部に住んでおり、ほとんどが進学や就職に伴い都心部へ移住していると見られます。また年齢の中央値は31歳と比較的若く、人口の年齢層別内訳は、最も多い人口が25歳から34歳で17.6%、続いて35歳から44歳で15.6%、そして5歳から12歳で12.2%となっています。

マレーシアで話されている公用語は、マレー語と英語です。マレーシアは多くの民族が混在する国のため、マレー語(マレーシア語)や英語の他にも、中国語やタミル語などが使用されています。マレーシアの国教はイスラム教ですが、多宗教国家です。イスラム教が61%、仏教が20%、ヒンズー教が6%、その他キリスト教が9%となっています。

2021年のマレーシアのGDPは3,730億ドルで、前年比プラス3.1%増加しました。2020年はアジア通貨危機以降最大の落ち込みとなっていましたが、中銀によると、国内外の需要改善に伴い、マレーシア経済の回復は続く見通しです。直近5年の数値は以下の通りです。

 2018年2019年2020年2021年2022年
各目GDP(10億ドル)358.994365.385337.28372.754439.373
各目GDP(10億リンギット)1,447.761,513.161,416.611,544.211,695.67
一人当たりの各目GDP(ドル)11,086.1111,234.6610,351.0811,399.1213,268.34
一人当たりの各目GDP(リンギット)44,708.3846,525.7843,475.4847,223.2951,206.54
経済成長率(%)4.84.4-5.63.15.6
物価上昇率(%)0.970.66-1.142.483.05
失業率(%)3.333.284.534.654.45

※ 2022年の数値はIMFによる2022年4月時点の推計 

出展:IMF – World Economic Outlook Databases(2022年

マレーシアのデジタルマーケティング概況

ここから、マレーシアのデジタルマーケティングに関する情報をご紹介します。まずマレーシアにおけるインターネットユーザーの数ですが、2022年2月時点で2,955万人を記録しています。インターネット普及率は総人口比でみると89.6%にも達していて、おおむね全ての人がインターネット利用環境にあります。

マレーシアのインターネットユーザーは2021年から2022年にかけて、前年比プラス1.3%の36万5,000人に増加しています。また1日におけるインターネット利用時間が9時間10分と、勉強や読書などの活動と比べると最も多くの時間を割いており、その内の98%がスマートフォンを媒体として利用しています。

インターネットを利用する主な目的としては、「情報収集」が81.6%、「ニュースやイベントを見るため」が75.5%、「家族や友人との連絡」が72.2%となっています。

マレーシアにおけるSNSユーザー数

マレーシアでは総人口の91.7%にあたる3,025万人のSNSユーザーが存在し、複数のサービスを利用しています。2021年から2022年にかけて、前年比プラス8%の230万人増加したことが明らかになっています。このうち女性ユーザーが48.6%、男性ユーザーが51.4%と、やや男性ユーザーが多くなっています。

1日の平均SNS利用時間は3時間2分で、1ヶ月の利用SNS数は平均8.2コンテンツとなっています。

SNSを利用する主な目的は、60.7%が「友人や家族と連絡を取るため」で、58.6%が「暇つぶし」、47.4%が「新着のニュースを読むため」としています。

ここで、それぞれの主要なSNSの人口について、確認しておきましょう。

Facebookのユーザー数

WHATSAPPに次いで、マレーシア国内で最も使用されているSNSであり、88.7%が使用しています。2022年時点で、マレーシアにおけるFacebookのユーザー数は2,170万人にも達しています。広告リーチが総人口の65.8%に相当し、このうち45.7%が女性で、54.3%が男性となっています。

80%以上のユーザーがスマートフォンのみを利用してアクセスしており、パソコンとスマートフォンの両方でアクセスしているユーザーが15.8%、パソコンからのみアクセスしているユーザーがわずか0.6%と、圧倒的にスマートフォンからのアクセスが多いことがわかります。

Youtubeのユーザー数

世界最大の動画共有サイトであるYoutubeのマレーシアにおけるユーザー数は、2022年の時点で2,360万人に達しています。Youtube広告のリーチ数は、マレーシア人口の71.6%にあたる数となっています。その内、女性ユーザーが47.5%で、男性ユーザーは52.5%となっています。

Youtube内で検索されているワードとしては、1位「movie」で2位「lagu(インドネシア語で「音楽」)」、3位「song」となっており、映画や音楽を楽しむツールとして利用しているユーザーが多いことがわかります。

Instagramのユーザー数

写真共有サービスのInstagramでのユーザー数は、2022年時点で1,550万人(前年比プラス11.1%の16万人増)となっています。Instagramの広告リーチ数は総人口の47.2%に相当します。しかしInstagramには年齢制限があり13歳以上しか利用できないことになっているため、他のSNSよりもユーザー数は若干劣るものの、若年層に対して強力な広告効果を有しています。

広告オーディエンスの56.4%は女性で、43.6%が男性となっており、男性よりも女性にとって有力なSNSであることがわかります。また「国内で人気のあるSNS」と「国内で最も使用されるSNS」のランキングにおいていずれも3位にランクインしており、「国内で人気のあるSNS」では2位のFacebookに続いて17.4%の支持を獲得しています。

TikTokのユーザー数

短い動画を共有できる新興SNSのTikTokは、四半期プラス8.8%の1,100万人増で、18歳以上のユーザー数が1,459万人となっており、今一番勢いがあるSNSです。マレーシアの18歳以上の成人全体における61.2%にTikTok広告はリーチしており、利用者の56.8%は女性です。他のSNSに比べて女性人気が高くなっている点が特徴です。

「国内で人気のあるSNS」ではFacebook、Instagramに続いて第4位にランクインし、9.7%の支持を得ています。

Facebook Messengerのユーザー数

Facebookのメッセージ機能を担うFacebook Messengerは、マレーシアにおいて1,215万人のユーザー数を抱えています。マレーシアにおけるFacebook Messengerの広告リーチ数は総人口の36.8%であり、46.5%が女性で、53.5%が男性ユーザーになっています。

国内ではFacebook、InstagramやTelegramに続いて5番目に多く使用されており、61.6%の支持を獲得しています。

LinkedInのユーザー数

求人SNSとして世界中で人気のLinkedInのマレーシアのユーザー数は、前年比プラス8.6%の630万人に達しています。

広告のオーディエンス数はマレーシア人口の19.1%で、そのうち41.9%が女性、58.1%が男性ユーザーとなっており、他のサービスに比べてやや男性ユーザーが多くなっています。

就職・転職活動や情報収集に便利だと認められるLinkedInはデジタル化の今の時代に、ユーザー数がさらに増えることが期待できます。

SnapChatのユーザー数

24時間でアップした写真や動画が削除されるSnapChatのマレーシアにおけるユーザー数は、135万人に達しています。

広告のオーディエンス数は総人口の4.1%に相当し、65.8%は女性ユーザーで、33.5%は男性ユーザーと、女性の人気が高くなっています。近年はInstagramなどの他のサービスにトレンドが奪われている影響により、ユーザー数は前年比マイナス32.5%の65万人減少になりましたが、いまだにマレーシアのインターネットユーザーの約5%に広告はリーチしており、女性中心に人気のあるサービスであるため、無視できないSNSであることがわかります。

Twitterのユーザー数

少ない文字数のつぶやきが可能なTwitterは、マレーシアにおいては四半期マイナス1.1%の440万人のユーザー数となっています。この数字はマレーシアの人口の13.3%にあたり、相応の発信力を抱えていることがわかります。

広告のリーチ数については、マレーシアのインターネットユーザーの約15%にあたります。

検索エンジンシェア率

マレーシアにおける検索エンジンのシェア率は、Googleが97.5%を占めるなど、圧倒的な人気を誇ります。続いてBingやYahoo!がランクインしますが、いずれも5%以下にとどまるなど、影響力はGoogleが一強の状態です。

マレーシアの検索言語

マレーシアでは公用語が英語ということもあり、検索キーワードもほとんどがマレー語もしくは英語です。ただ、海外の情報を仕入れる場合は、その他の言語が使われているケースもあります。また上述した通り、マレーシアでは様々な民族が混在しているので、中国語やタミール語、インドネシア語なども使用されているケースが多くあります。

新しい商品・ブランドを何で最初に知るか

マレーシアで新しい商品やブランドを認知するにあたって、最も有力な媒体はSNSです。マレーシアでは39.3%のユーザーが新商品の情報をSNSから仕入れることが明らかになっており、ブランド認知を高める上でSNSが重要な役割を担っていることがわかります。

ソーシャルメディア広告39.3%
通販サイト39.0%
検索エンジン38.2%
TV広告33.4%
ブランドウェブサイト32.9%
ソーシャルメディアコメント31.7%
口コミ31.6%
ウェブサイトの広告29.5%
モバイルアプリ内の広告27.5%
消費者レビューサイト26.4%
店舗ディスプレイ・プロモーション26.1%
TV番組・映画23.7%
オンラインビデオプリロール22.6%
パンフレット・カタログ22.3%
ブランドのSNS投稿21.3%
引用:GWI.com

商品・ブランドを何を通じて調べるか

ブランド認知がSNSを通じて行われる一方で、ブランドについての深堀りもSNSで行われています。54.7%のユーザーはSNS経由で更なる追加情報を獲得しており、消費を大きく支えるツールとして機能していることがわかります。

デジタルマーケティングとSNSマーケティングは、少なくともマレーシアにおいては同義的な手法として機能しつつあります。

SNS54.7%
検索エンジン54.1%
消費者レビュー43.7%
ブランドウェブサイト42.4%
モバイルアプリ37.6%
価格比較サイト28.9%
クーポンサイト27.2%
ビデオサイト26.8%
ブランド・商品のブログ24.1%
Q&Aサイト21.4%
専門家のレビューサイト20.2%
フォーラム・メッセージボード17.3%
VLOGS16.4%
メッセージ・ライブチャット14.4%
個人ブログ14.2%
引用:GWI.com

デバイスの比率(スマートフォン)

マレーシアにおけるインターネット利用を大いに支えているだけあり、スマートフォンの保有率は非常に高いと言えます。モバイル接続は3999万、人口比で122.8%にもなります。10人に約3人が2台持ちしており、他のデバイスと比べても圧倒的なシェアを誇ります。

スマートフォンの中で最も利用されている機種はAndroidで、約75%を占めています。続いてApple iOSが全体の20%あまりを占めています。Apple iOSについては前年比プラス2.1%と、マレーシア国内でのiPhone需要の高まりが見て取れます。一方でAndroidは前年比マイナス0.8%とやや減少傾向にあります。

アプリの総ダウンロード数は10億を超えており、前年と比べるとプラス10%と増加傾向にあります。アプリ内課金は年間約6億円となっており、前年比プラス34%の増加傾向にあります。

デジタルマーケティングを考える場合、意図するユーザー像としてはスマホユーザーが適切と言えるでしょう。

まとめ

今回はマレーシアのデジタルマーケティングトレンドについてご紹介しました。

マレーシアは人口増加や所得増加による購買力の上昇などの要因から、東南アジアの中でも事業進出におすすめの国の1つです。ただ、マレーシアでマーケティングを行う際には、多民族国家であることやマレーシア人の商習慣など、配慮すべきことが沢山あります。 マレーシアをターゲットにして事業展開を検討している方は、本記事でご紹介した内容を十分に活用し、マーケティングトレンドを掴みましょう。

この記事を書いた人

野口慎平

GDX 事業責任者 兼 UDX株式会社ゼネラルマネージャー。
新卒で大手外資系総合コンサルティングファームにビジネス&テクノロジーコンサルタント職として就職。2016年よりプルーヴ株式会社に法人営業職として入社。慶應義塾大学理工学部・同大学院 理工学研究科電子工学修了。
海外SEOとマーケティングオートメーションを軸としたデジタルマーケティングを得意とする。
Salesforce Pardot甲子園2021優勝

取得資格:
ITストラテジスト、応用情報技術者、IPAプロジェクトマネージャ、情報処理安全確保支援士、上級ウェブ解析士、IoTコーディネーター取得
Salesforce認定アドミニストレーター