ASEANの中心に位置し、観光・製造業・サービス業を軸に成長を続けるタイ王国。近年は急速なデジタルシフトが進み、インターネット普及率は80%超、SNS利用も日常生活に密着しています。
特にLINE、Facebook、YouTube、InstagramといったSNSはビジネス活用の鍵となっており、ローカル文化に合わせたマーケティング戦略が成果を分ける時代に突入しています。
本記事では、最新統計とデジタルトレンドをもとに、タイ市場のWeb・SNS事情、EC市場、ユーザー行動傾向を網羅的に解説します。タイ進出や東南アジア展開を検討する企業・マーケター必見の内容です。
目次
タイとは
東南アジアの経済ハブとして知られるタイ王国は、堅調な経済成長と安定した財政政策により、デジタル化と消費拡大が進む有望なマーケットです。2023年時点での人口は約7,180万人、1人あたりGDPは7,338ドルと報告されており、今後も内需と輸出を軸に着実な成長が見込まれています。
タイ経済の2023年~2030年にかけての主要指標の推移は以下の通りです。
タイの経済指標推移(2019〜2030)
| 指標 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026 | 2027 | 2028 | 2029 | 2030 |
| 実質GDP成長率(%) | 2.1 | -6.1 | 1.5 | 2.6 | 2.5 | 3.2 | 3.7 | 2.7 | 2.7 | 2.7 | 2.7 | 2.6 |
| 消費者物価上昇率(CPI, %) | 0.7 | -0.8 | 1.2 | 6.1 | 1.5 | 1.2 | 1.2 | 1.2 | 1.4 | 1.4 | 1.5 | 1.6 |
| 総国内貯蓄(対GDP比, %) | 30.8 | 29.7 | 30.9 | 29.7 | 29.5 | 29.8 | 29.8 | 30.0 | 30.1 | 30.2 | 30.3 | 30.4 |
| 総国内投資(対GDP比, %) | 28.3 | 23.0 | 26.2 | 27.5 | 28.0 | 28.0 | 28.3 | 28.6 | 28.9 | 29.1 | 29.3 | 29.4 |
| 財政収支(対GDP比, %) | -4.5 | -6.5 | -3.4 | -2.3 | -2.3 | -2.1 | -2.0 | -2.0 | -2.0 | -2.0 | -2.0 | -2.0 |
| 公的債務残高(対GDP比, %) | 41.1 | 49.4 | 59.4 | 61.3 | 62.3 | 63.1 | 63.3 | 64.7 | 65.4 | 65.9 | 66.4 | 66.4 |
| 輸出額(十億ドル) | 247.7 | 228.7 | 271.6 | 289.4 | 281.6 | 288.3 | 297.4 | 308.1 | 319.1 | 330.6 | 342.3 | 354.5 |
| 輸入額(十億ドル) | 220.6 | 187.1 | 234.1 | 276.0 | 257.6 | 261.0 | 267.7 | 275.4 | 283.8 | 292.6 | 301.7 | 311.0 |
| 経常収支(十億ドル) | 38.0 | 21.1 | -10.7 | -15.1 | 9.5 | 11.9 | 12.6 | 13.4 | 14.6 | 15.8 | 17.2 | 18.4 |
| 外貨準備高(十億ドル) | 259.6 | 284.6 | 279.2 | 248.8 | 256.6 | 262.5 | 262.5 | 262.5 | 262.5 | 262.5 | 262.5 | 262.5 |
注目ポイント
- GDP成長率は2025年に3.7%へ上昇見込み:コロナ禍からの回復基調が続くなか、消費と輸出が牽引。
- CPIは安定しており、インフレ懸念は限定的。
- 公的債務は上昇傾向にあるものの、管理可能な水準。
- 経常収支は黒字転換へ:観光収入の回復や貿易の安定化が寄与。
- 外貨準備高は安定的で通貨バーツの信頼性を下支え。
このように、マクロ経済の安定感と中期的な成長ポテンシャルが評価されており、企業のタイ進出やデジタルマーケティング施策にも好影響を与える環境が整っています。今後は国内市場だけでなく、近隣ASEAN諸国へのゲートウェイとしての役割もさらに拡大していくと見られます。
タイのデジタルマーケティング概況

タイにおけるデジタル化の波は、2025年現在も堅調に進行しています。総人口約7,160万人に対して、インターネットユーザーは6,540万人(普及率91.2%)に達し、東南アジア諸国の中でも高水準のデジタル接続率を誇っています。前年からは120万人(+1.8%)の増加が確認されており、依然として緩やかな成長が継続中です。
特筆すべきは、SNSユーザー数が5,100万人(普及率71.1%)に到達した点です。これは前年から190万人(+3.8%)増加したことを意味し、ソーシャルメディアが日常生活・消費行動に深く浸透していることを物語っています。
また、携帯電話の契約件数は9,950万件で、人口比139%と一人あたり複数回線を保持するモバイルリテラシーの高さが伺えます。スマートフォンを通じた情報収集・購買行動が一般化しており、「モバイルファースト戦略」はあらゆる業界で不可欠なアプローチとなっています。
加えて、都市化率は54.7%と、農村地域へのインターネット普及も進んでおり、今後は地方ユーザーへの訴求を意識したローカライズ戦略や動画コンテンツの需要がさらに高まると見込まれます。
ポイントまとめ:
- インターネット普及率91.2%、SNS普及率71.1%と高水準
- モバイル契約数は人口の139%に達し、マルチデバイス所有が一般的
- 地方への浸透拡大に伴い、地域特化型のコンテンツマーケティングが重要に
このような背景から、タイ市場におけるデジタルマーケティングは、「モバイル最適化」「SNS主導」「地方戦略との両立」が成功の鍵となるでしょう。
タイにおけるSNSユーザー数

タイはソーシャルメディア利用率が非常に高く、総人口7,160万人のうちSNSアクティブユーザーは5,100万人(71.1%)に達しています(2025年2月時点)。若年層を中心にSNSが生活インフラとして定着しており、マーケティングチャネルとしての価値も年々高まっています。
以下は、主要SNSプラットフォームの月間利用率(16歳以上)ランキングと、各社が公表している広告リーチ人数(Meta広告マネージャー、TikTok for Businessなど)をもとにした推定ユーザー数一覧です。
| プラットフォーム | 利用率(%) | 推定ユーザー数(万人) |
|---|---|---|
| 90.7 | 4625.7 万人 | |
| LINE | 90.6 | 4620.6 万人 |
| TikTok | 85.7 | 4370.7 万人 |
| Messenger | 82.4 | 4202.4 万人 |
| 63.7 | 3248.7 万人 | |
| X(旧Twitter) | 45.9 | 2340.9 万人 |
| Lemon8 | 31.0 | 1581.0 万人 |
| 23.9 | 1218.9 万人 | |
| Telegram | 17.5 | 892.5 万人 |
| 14.0 | 714.0 万人 | |
| iMessage | 12.8 | 652.8 万人 |
| Threads | 11.2 | 571.2 万人 |
| Discord | 10.1 | 515.1 万人 |
| 8.2 | 418.2 万人 | |
| 6.8 | 346.8 万人 |
※ユーザー数は、インターネットユーザー数6,540万人に対する各利用率から算出した概算値です。

タイ市場でのSNS活用戦略のポイント
- LINEは日常連絡インフラとして根付いており、公式アカウント・LINE広告・EC連携を活用するローカル企業が多い。
- Facebook/Messengerはあらゆる年齢層にリーチ可能で、リマーケティングやチャットボット連携での運用が定番。
- Instagram/TikTokは、若年層向けブランド訴求・動画広告・インフルエンサーマーケティングに非常に有効。
- X(旧Twitter)やTelegramは、速報性やセキュリティ意識の高いユーザー向けに活用されており、政治・経済関連の発信に強い。
これらを踏まえ、目的・商材・ターゲット層に応じたSNSの選定と活用がROI最大化の鍵となります。
タイにおけるSNSユーザー数

タイではソーシャルメディアの利用が非常に活発で、人口7,160万人のうち5,100万人(71.1%)がSNSを使用しています(2025年2月時点)。以下は、主要SNSプラットフォームの利用率ランキングです(出典:GWI 2024 Q3)。
| ランキング | プラットフォーム | 月間利用率(16歳以上) |
| 1位 | 90.7% | |
| 2位 | LINE | 90.6% |
| 3位 | TikTok | 85.7% |
| 4位 | Messenger | 82.4% |
| 5位 | 63.7% | |
| 6位 | X(旧Twitter) | 45.9% |
上位6プラットフォームの特徴と活用法
1. Facebook(リーチ率:68.3%)
特徴・利用理由
- 幅広い年齢層への到達:広告リーチはタイ人口の68.3%、インターネット利用者の77.7%に相当。
- 豊富なフォーマットと精緻なターゲティング:動画、カルーセル、コレクション、ライブ配信、ショッピング機能など、多彩な広告フォーマットを駆使できる。
具体的マーケティング活用事例
- AP Thailand:Facebook/Instagramのリード広告最適化で、これまでより75%多い高品質リードを獲得。
- Garnier Thailand:Collaborative Adsとブランド認知施策の組み合わせで、オンライン・オフライン売上を同時に拡大。
2. LINE(アクティブユーザー:56M/人口比78.2%)
特徴・利用理由
- スーパーアプリとしての定着:チャット、決済、クーポン、ニュース、ショッピングをLINE内で完結でき、日常の「常用アプリ」として欠かせない存在。
- CRM/EC連携の充実:公式アカウントとチャットボットによるOne-to-Oneコミュニケーションや、MyShopを活用したEC誘導が可能。
具体的マーケティング活用事例
- POW Thai Herbal Medicine:Step Message機能を使ったパーソナライズド配信で既存顧客への販促を強化し、売上を急増(ほぼ4倍)に至らせた。
- Mor Sup Thai Traditional Medicine Herbs:LINE公式アカウント×クーポン連携で、既存顧客向けLTVを大幅に向上させ、収益をほぼ3倍に増加。
3. TikTok(成人ユーザー:44.38M/成人比75.8%)
特徴・利用理由
- エンタメ型ショート動画の没入感:Z世代を中心に高い視聴時間を誇り、バイラル拡散を狙いやすい。
- 多機能広告プラットフォーム:In-Feed Ads、Branded Hashtag Challenge、Spark Ads、Branded Effectなど、参加型・体験型の施策が可能。
具体的マーケティング活用事例
- McDonald’s Thailand:ソフトクリーム“#SoftServeMashup”チャレンジで動画視聴数9M、売上130%増、店頭来客83%増を達成。
- Clyn Thailand:TikTok DM広告を最適化し、1週間でTotal Conversationsを3倍、会話単価を67%削減、900件超の会話を獲得。
4. Facebook Messenger(リーチ率:49.5%)
特徴・利用理由
- 高い開封率・即時性:チャット型通知の開封率は70–80%、CTRも20%程度とメールを大きく上回る。
- API連携による自動化:チャットボットを使ったFAQ対応や予約、決済リンク送付など、顧客対応の自動化が容易。
具体的マーケティング活用事例
- Lazada Thailand:Messengerを軸としたロイヤリティプログラムで、会員の96%が週1回利用、売上2.6倍・ライブ配信視聴3.3倍を実現。
- Era-won:Messenger広告(Click-to-Messenger)でターゲティング広告を展開し、広告投資対効果で8×ROASを達成。
5. Instagram(利用者:18.75M/人口比26.1%)
特徴・利用理由
- ビジュアル訴求力の高さ:写真・動画中心のフィード、ストーリーズ、リールで商品・サービスを直感的にアピール可能。
- ショッピング機能とEC連携:タグ付け機能で“見る→買う”の導線がシームレスに。
具体的マーケティング活用事例
- Amazing Thailand × Smartzer:インタラクティブ動画広告でエンゲージメント39%、CTR24%を達成し、観光誘客認知を強化。
- Yuedpao:カスタムオーディエンス+LAL配信でCPAを20–30%削減、売上拡大に貢献。
6. X(旧Twitter)(利用者:14.68M/人口比20.4%)
特徴・利用理由
- リアルタイム&トレンド感度:ニュースやハッシュタグキャンペーンによる話題化が得意。
- 会話型マーケティング:自動応答やカスタム絵文字でユーザー参加を促進。
具体的マーケティング活用事例
- Pepsi Thailand #PepsiLime:Promoted Trend+First Viewで35Mインプレッション、6.9Mメンションを獲得、販売目標109%達成・市場シェア1%アップ。
- #BanKorea運動:ハッシュタグによる世論形成と注目獲得の事例(トレンド化により数百万インプレッション) ※政治的話題の拡散事例として注目。
以上のように、各プラットフォームは利用文脈やユーザー属性、提供機能が大きく異なるため、ターゲットセグメントの特定→KPI設定→プラットフォーム選定→クリエイティブ設計→PDCAの流れを徹底し、最適なチャネルミックスを組むことが最重要です。マーケティングフェーズ(認知→検討→獲得→リピート)に応じて、上記手法を組み合わせ、ROI最大化を目指しましょう。
DataReportal – Global Digital Insights
Log in or sign up to view
lineforbusiness.com
TikTok For Business
8×8 CPaaS
smartzer.com
X Business
nationthailand
検索エンジンシェア率

2025年時点におけるタイのWebブラウザ別シェア率から、検索エンジンの利用傾向を把握することができます。StatCounterのデータによると、以下のようなブラウザ別トラフィックシェアが確認されています。
| 順位 | ブラウザ名 | シェア率 |
| 1位 | Chrome | 69.54% |
| 2位 | Safari | 18.53% |
| 3位 | Edge | 4.12% |
| 4位 | Firefox | 3.38% |
| 5位 | Samsung Internet | 2.97% |
| 6位 | Opera | 0.72% |
| 7位 | Internet Explorer | 0.25% |
| 8位 | その他 | 0.49% |
このデータから分かるように、Google Chromeが圧倒的に支配的(約7割)なシェアを占めており、Google検索エンジンの利用が主流であると推察されます。次点のSafariは主にApple製品ユーザーが使用しており、こちらもGoogle検索がデフォルトで設定されています。
マーケティングへの示唆
- SEO対策はGoogle中心で設計すべきであり、構造化データやコアウェブバイタルへの対応が成果に直結します。
- モバイルファーストの最適化も重要であり、AMPやレスポンシブデザインの導入が望まれます。
- ブラウザ別に表示最適化やUI調整をする際には、Chrome・Safariを優先順位の高いターゲットとすることが合理的です。
タイの検索言語
タイにおける検索エンジン利用時の言語は、主にタイ語と英語の2言語が併用されているのが特徴です。タイ語は公用語として大多数のユーザーが日常的に使用しており、ローカル検索(飲食店、サービス、観光など)では圧倒的に多く使われています。一方、英語も高等教育を受けた層や国際企業勤務者を中心に広く利用されており、特にIT・ファッション・学術・ビジネスなどの分野では英語での検索が一般的です。
タイの検索言語の傾向
- タイ語検索が中心(約70〜75%):地域密着型ビジネス、EC、ニュース、日用品系で顕著。
- 英語検索も一定数存在(約25〜30%):外国人居住者(特にバンコク)、高学歴層、専門分野での利用が中心。
マーケティング施策への示唆
| 施策ポイント | 解説 |
| 2言語対応のSEO設計 | 特にECサイトや観光業では、タイ語と英語の両方でコンテンツ・メタ情報を最適化することでアクセス拡大が可能。 |
| ローカルSEOにおけるタイ語重視 | Googleマップ、レビュー、ローカル検索での表示を強化するにはタイ語キーワードが効果的。 |
| 英語圏のキーワード活用 | 「ブランド名 + 製品名」「how to系」「レビュー系」などは英語での検索も多く、訪日旅行者や在住外国人層にも訴求できる。 |
| SNS広告の言語選定 | ターゲットに応じて言語切り替え。若年層にはタイ語、ビジネスパーソンや観光客向けには英語を併用。 |
今後の展望
タイでは若年層を中心に英語教育が拡大していることもあり、今後は英語検索の割合が徐々に増えると予想されます。特に、ASEAN域内でのクロスボーダーECや観光事業の発展に伴い、バイリンガル対応が競争優位性に直結するでしょう。
新しい商品・ブランドを何で最初に知るか
タイにおけるインターネットユーザー(16歳以上)が新しい商品やブランドを発見する主なチャネルは多様化しており、検索エンジンだけでなくモバイルアプリ広告やテレビCM、SNSなど、複数の経路が活用されています。
以下は、2025年2月時点での主なブランド発見チャネルの割合です(出典:GWI 2024 Q3)。
| 順位 | チャネル | 発見率 |
| 1位 | 検索エンジン | 37.1% |
| 2位 | モバイルアプリ内広告 | 30.8% |
| 3位 | テレビ広告 | 29.6% |
| 4位 | ブランド公式サイト | 28.8% |
| 5位 | テレビ番組・映画内での紹介 | 27.5% |
| 6位 | 商品比較サイト | 27.4% |
| 7位 | ソーシャルメディア広告 | 26.8% |
| 8位 | ウェブサイト上の広告 | 25.4% |
| 9位 | 消費者レビューサイト | 23.8% |
| 10位 | 店頭プロモーション | 22.5% |
| 11位 | 口コミ(Word of Mouth) | 22.5% |
| 12位 | SNSコメント | 21.1% |
| 13位 | サンプル・試供品 | 19.8% |
| 14位 | ゲーム内広告(モバイル含む) | 17.4% |
| 15位 | 専門ブロガーの紹介 | 16.6% |
考察とマーケティングへの示唆
- 検索エンジンが依然として王道:Googleを中心とした検索エンジンでのSEO対策・リスティング広告は、最初の認知獲得に極めて重要です。
- モバイルアプリ広告の成長:モバイル利用率が高いタイ市場では、アプリ内バナーや動画広告も強力なリーチ手段に。
- テレビメディアの影響力:依然としてTVの影響力が高く、マス広告との連携による統合マーケティングが効果的。
- SNSとUGCの活用:ソーシャルメディア広告やコメント、口コミ、インフルエンサーによる波及効果も無視できない。
施策提案
| チャネルカテゴリ | マーケティング施策例 |
| SEO/SEM | 商品名・カテゴリ名での上位表示、Google広告活用 |
| モバイル広告 | TikTok Ads、LINE広告、ゲームアプリとの連携 |
| SNS広告+インフルエンサー | リール動画・ストーリーズでのPR、Lemon8やTikTokでのレビュー訴求 |
| 口コミ・レビュー施策 | サンプル配布やレビュー依頼、UGC投稿促進 |
| オウンドメディア運用 | ブランドサイトの最適化+EFO対策(入力フォーム改善) |
タイ市場では複数チャネルでの多面的なアプローチが求められており、特に「検索 + SNS + アプリ広告」の3本柱が有効な戦略となります。

商品・ブランドを何を通じて調べるか
タイにおけるインターネットユーザー(16歳以上)が商品・ブランドについてリサーチを行う際の主なチャネルは、検索エンジンとモバイルアプリを筆頭に多岐にわたります。企業やマーケターが消費者の意思決定プロセスに介入するには、これらの主要チャネルに最適化した情報発信が不可欠です。
タイの主なオンラインブランドリサーチチャネル(2025年2月時点)
| 順位 | チャネル | 利用率 |
| 1位 | 検索エンジン | 54.7% |
| 2位 | モバイルアプリ | 48.3% |
| 3位 | ソーシャルネットワーク | 44.4% |
| 4位 | 商品・ブランド公式サイト | 33.7% |
| 5位 | 消費者レビューサイト | 33.2% |
| 6位 | 価格比較サイト | 31.9% |
| 7位 | クーポンサイト | 26.7% |
| 8位 | 動画サイト(YouTube等) | 23.7% |
| 9位 | 専門レビューメディア | 19.7% |
| 10位 | ブランド・製品ブログ | 17.9% |
| 11位 | Q&Aサイト(例:Pantipなど) | 14.9% |
| 12位 | Vlog(動画ブログ) | 12.7% |
| 13位 | メッセンジャーサービス | 12.6% |
| 14位 | フォーラム/掲示板 | 9.4% |
| 15位 | ミニブログ(例:Xなど) | 8.8% |
分析と戦略的活用ポイント
- 検索エンジン対策(SEO/SEM): 最も多くのユーザーが利用するチャネルであり、Googleでの上位表示を狙うSEO対策や、検索連動型広告(Google広告)への出稿がブランドリサーチの入口になります。
- モバイルアプリの存在感: モバイル端末利用が主流のタイ市場では、アプリ内でのプロモーション表示やPush通知など、アプリ経由でのブランド接触機会が非常に多い点が注目です。
- ソーシャルネットワークと動画: FacebookやTikTok、YouTubeなどのSNSや動画チャネルでのレビュー・紹介動画、口コミが消費者の検索行動に直結しているため、インフルエンサーやUGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用が有効です。
- 比較・レビュー系の強み: 商品比較サイトやレビューサイトが3割超の利用率を誇り、価格競争力やレビュー評価の管理が購入検討に直結します。レビュー施策やカスタマーボイスの掲載最適化も重要です。
対策と施策案
| カテゴリ | 実施すべき施策 |
| 検索エンジン最適化 | SEO対策・ローカルSEO・Google広告運用 |
| アプリ対応 | 自社アプリの最適化・モバイル広告出稿 |
| SNS連携 | Facebook・Instagram・TikTokでの動画PR |
| 比較・レビュー対策 | サイト掲載情報の正確性・評価レビュー促進 |
| コンテンツマーケティング | 商品Q&A・ブログ・How-to記事の作成 |
このように、ユーザーの情報探索行動を理解し、それに合わせてチャネルを分散・最適化することで、ブランドの認知から購買検討までのスムーズな導線設計が可能になります。
デバイスの比率
2025年2月時点におけるタイ国内のWebトラフィックシェアを見ると、依然としてモバイルファーストの傾向が根強い一方で、PCのシェアが増加するなど、ユーザーの利用環境に変化が見られます。
デバイス別Webトラフィックシェア(2025年2月)
| デバイス種類 | シェア率 | 前年比の変化 | BPS変化量 |
| モバイル(スマートフォン) | 57.68% | -4.7% | -285 BPS |
| ノート・デスクトップPC | 39.74% | +8.7% | +318 BPS |
| タブレット | 2.58% | -9.2% | -26 BPS |
| その他デバイス(ゲーム機等) | 0% | -100% | -7 BPS |
(出典:Statcounter / Meltwater / We Are Social, Feb 2025)
分析ポイントと傾向
- モバイル利用率の減少:依然として過半数のWebトラフィックをモバイルが占めていますが、前年比で4.7%減少。これは長文・詳細情報の検索や作業系タスクでPC回帰が進んでいることを示唆しています。
- PCの復権:PCの利用率は39.74%まで上昇。特にEコマースや業務系サイト、B2B向けサービスにおいて、PC最適化されたUI/UXの重要性が増しています。
- タブレットとその他デバイスの停滞:タブレットはシェアが微減しており、特定用途(教育・閲覧等)以外での汎用性は限られています。「その他デバイス」はほぼゼロに。
対策と活用戦略
| 目的・領域 | 推奨デバイス別施策 |
| ECサイト運営 | モバイルUXの最適化とPC向けチェックアウト改善を両立 |
| コンテンツマーケティング | モバイル対応の縦長記事、PC閲覧用の長文SEOコンテンツ |
| B2B営業資料・フォーム設計 | PC閲覧を想定したレスポンシブデザインとPDF整備 |
| 動画・SNS運用 | モバイルファーストの縦型ショート動画 |

Webサイトや広告キャンペーンの設計においては、ユーザーがアクセスしてくるデバイスごとの傾向と利用目的の違いを意識することが重要です。特にPCユーザーの増加傾向を活かした戦略的なUI強化や、モバイルでのエンゲージメント向上施策が、CVR改善のカギとなるでしょう。
まとめ|タイのデジタルマーケティング環境と今後の戦略提案

■ 過去と現状の推移まとめ(2025年2月時点)
| 指標 | 数値(2025年2月) | 傾向 |
| 総人口 | 7,160万人 | 微減傾向(前年比▲0.06%) |
| インターネット利用者数 | 6,540万人(91.2%) | 年間+1.2百万人(+1.8%)で高水準維持 |
| SNSユーザー数 | 5,100万人(71.1%) | 年間+1.9百万人(+3.8%)で安定成長 |
| モバイル経由Webトラフィック | 57.68% | 減少傾向(▲4.7%) |
| PC経由Webトラフィック | 39.74% | 増加傾向(+8.7%) |
| SNS利用率トッププラットフォーム | Facebook・LINE・TikTok | 全て90%前後と高浸透 |
| ブランド認知経路(1位) | 検索エンジン(37.1%) | 自主的な情報取得が起点 |
| ブランド調査経路(1位) | 検索エンジン(54.7%) | 依然として検索中心に情報探索 |
■ 今後の動向の予測
- PCユーザーの回帰
ビジネス用途やECサイト利用者の一部が、より利便性の高いPCに戻る傾向が見られる。特に情報収集や大画面での購入意思決定が必要な場面ではPC利用が有効。
- LINEとFacebookの安定利用+TikTokの拡大
コミュニケーション+CRMの基盤としてLINE、汎用的な情報伝達に強いFacebook、さらに動画でのブランディング・認知拡大にTikTokが三本柱となる。
- 検索を起点としたマーケティングファネル強化
タイでは「検索エンジン」が認知・調査ともに最多チャネル。SEO対策やリスティング広告の重要性は今後も変わらず高い。
■ 今後のマーケティング戦略・対策
| 領域 | 対策のポイント |
| SEO対策・検索広告 | Google対策に加え、ローカル言語(タイ語)対応の強化が重要 |
| SNS運用 | Facebook・LINEでの公式アカウント強化+CRM連携/TikTokでリーチ&拡散 |
| コンテンツ企画 | モバイルファースト設計+PC閲覧も意識したデュアル対応のLP・記事コンテンツ設計 |
| EC施策 | スマホからの離脱を防ぐ決済UI最適化とPCユーザーへのUX設計強化 |
| 動画活用 | TikTok・Instagramリールで短尺かつ共感性の高いコンテンツを定期配信 |
| 顧客ロイヤルティ | LINE公式アカウントやMessengerによるステップ配信・リマインド設計でLTVを高める施策強化 |

総括
タイのデジタルユーザーは成熟段階にあり、チャネル選定とパーソナライズ戦略の精度が問われるフェーズに入っています。マルチデバイス対応とSNS×検索連携、そしてCRM施策の強化が、2025年以降の競争優位を築く鍵となるでしょう。


