スペインのデジタルマーケティングトレンド2022(Web/SNS事情/EC、マーケット傾向分析)

スペインは地中海と太平洋に面し、南側にはアフリカ大陸があるヨーロッパ南部に位置する国家です。古くから多くの民族が存在し、言語や宗教などから分かるように、かなり多文化国家であると言えます。

そんな多様なユーザーが存在するスペインですが、今回は同国におけるデジタルマーケティングの概況についてご紹介し、スペインにおけるマーケティングのポイントについて解説していきます。

スペインの概要

スペインは日本の1.3倍の広さであり、国土面積は50.6万平方キロメートルの国家です。人口は2022年1月時点で4673万人でした。この人口は2021年から2022年の間で1万8千人(- 0.04%)減少しています。

また、スペインの公用語はスペイン語であり、スペイン標準のスペイン語のことをカスティージと呼びます。しかしスペインでは、憲法によって各自治州の自治憲章の定めにより他の言語も当該自治州の公用語とすることを認めています。そのため現在、バスク語、カタルーニャ語などの言語も州内の公用語として認められています。宗教については、スペイン憲法によって信仰の自由が保証されており、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教など様々な宗教が信仰されています。

国全体のGDPは2020年時点で約1兆2,804億ドルで、一人当たり国民所得は27,039米ドルでした。直近5年の数値は以下の通りです。

2018年2019年2020年2021年2022年※
各目GDP(10億ドル)1,421.641,393.201,280.461,426.221,435.56
各目GDP(10億ユーロ)1,203.261,244.381,121.951,205.061,288.11
一人当たりの各目GDP(ドル)30,423.1729,576.2527,039.1830,089.5230,156.69
一人当たりの各目GDP(ユーロ)25,749.8326,416.8523,691.9425,423.6127,059.18
経済成長率(%)2.32.1-10.85.14.8
物価上昇率(%)1.6750.7-0.3233.0935.304
失業率(%)15.25514.10515.53314.78513.378

※2022年の数値はIMFによる2022年4月時点の推計 

出展:IMF – World Economic Outlook Databases(2022年4月版)

デジタルマーケティング概況

続いてスペインにおけるデジタルマーケティングを支えるインターネット環境について、紹介します。スペインのインターネットユーザー数は4393万人で、総人口の94.0%の人がインターネットを利用できる環境にあります。インターネットユーザーの数は増加傾向にあり、同国のユーザー数は2021年から2022年の間に、35万5000人(+0.8%)の増加が見られました。現在、スペインでオフライン環境にある人は280万人と見られており、これは人口の6.0%に当たります。このようなデータを見ると、スペインはかなりインターネット普及が進んでいると言えるでしょう。

またスペイン人の1日あたりのインターネット利用時間は、平均で6.04時間にのぼり、昨年比では7分(−1.9%)減りました。しかし、テレビを視聴している平均時間が3.13時間、ラジオの視聴時間が1.00時間であることを考えると、スペインではインターネットが国民にとってかなり身近な存在であることが分かります。

スペインにおけるSNSユーザー数

次に、スペインにおけるSNSユーザーの数を見ていきましょう。スペインでは現在、4070万人ものSNSユーザーが存在し、全人口の約87.1%がソーシャルメディアを活用しています。

SNSユーザー数は2021年から2022年の間に330万人(+8.8%)増加していて、多くの国民にとってSNSは生活に欠かせない存在となりつつあります。

1日あたりの平均利用時間は1.53時間で、前年よりも約0.9%減少しています。

対象SNSユーザー数
Facebook2,020万人
Youtube4,070万人
Instagram2,285万人
Tiktok1,373万人
Facebook Messenger925万人
LinkedIn1,400万人
Snapchat360万人
Twitter875万人
引用:Meta,Google,Twitter,Tiktokなど各社のオープンデータ
対象SNS1カ月に利用する割合
Whatsapp91.0%
Facebook73.3%
Instagram71.7%
Twitter46.7%
Facebook Messenger38.6%
TikTok38.6%
Telegram38.3%
Pinterest32.0%
LinkedIn30.5%
Skype23.2%
SnapChat14.4%
Discord13.2%
IMessage10.8%
Reddit7.3%
Badoo5.8%
引用:GWI.com

Facebookのユーザー数

世界で圧倒的なユーザー数を誇り、SNS随一の人気を集めるのがFacebookです。スペインでも2022年初頭で2020万人と多くのユーザーを抱えています。他のSNSより、双方向性が高いことはFacebookの人気になる理由の一つだと言えます。

また2022年の開始時点で、スペインにおけるFacebookの広告リーチは総人口の43.2%に達しており、さらに13歳以上のFacebook利用対象ユーザーに限定すると、そのリーチ数は49.0%となります。スペインにおいて、SNS利用目的の調査結果により、「もともと知人とコミュニケーションを取るため」という答えが多く占めると明らかになります。ヨーロッパに主流コミュニケーションアプリとなるWhatsappの次はFacebookなので、上記のパーセンテージがまだ高く認められます。

アカウントを登録する際に、ユーザーが年齢をはじめ基本的な情報や興味を持っているコンテンツについての回答が求められます。セグメント別に広告キャンペーンを行う予定があれば、Facebookが最適なプラットフォームだと思われます。

Youtubeのユーザー数

世界的動画共有プラットフォームであるYoutubeは、スペインにおいても多くのユーザーに利用されています。フィリピン国内でのYoutubeのユーザー数は4070万人で、インターネットユーザーのほとんどがYouTubeを利用していることが分かります。2022年の広告リーチ率は、スペインの総人口比で87.1%でした。

またインターネットユーザーに限定すると、そのリーチ数は92.7%と高く、男女ともに多くの国民が活用していると分かります。YouTubeはスペインを対象とするデジタルマーケティングにおいて、かなり重要なサービスと言えるでしょう。

Instagramのユーザー数

続いては、画像や動画といったビジュアル要素を共有するInstagramです。スペインではユーザー数が2285万人で、広告リーチ数は総人口の48.9%でした。インターネットユーザーに限定するとリーチ率は52.0%となっており、成長性が一番高いSNSであり、Facebookと同程度の利用度合いと言えます。

また、スペインにおけるInstagram広告利用者の男女比は、男性が44.8%、女性が55.2%と、やや女性が多い傾向にある点も特徴です。

TikTokのユーザー数

ByteDanceが運営する中国発のSNSとして世界的な人気を誇るTikTokは、スペインでも若者を中心に人気を得ています。2022年時点で18歳以上の1373万人のユーザーを同国で抱えています。

またByteDanceが発表する、成人に到達したフィリピン全体への広告リーチ数は、全体の35.4%に及びます。年齢に関係ない、インターネットユーザーに限定した場合、その割合は31.2%です。

また、TikTokはスペインにて女性ユーザーに人気のあるサービスで、ユーザー全体の38.9%が男性、61.1%が女性とかなり差があります。

Facebook Messengerのユーザー数

Facebookユーザー同士がリアルタイムでメッセージのやりとりを行えるFacebook Messengerは、スペイン国内にて925万人の人々に広告がリーチしています。メッセージ専用のWhatsAppのシェアが圧倒的に高いにつれて、Facebookと連動するサービスであっても、ユーザー数は少なめと言えます。総人口で見ると、全体の19.8%にあたる数字で、インターネットユーザーに限定すると、21.1%にリーチしています。

LinkedInのユーザー数

ビジネス特化型SNSであるLinkedInは、フィリピンにおいて1400万人の登録ユーザーを獲得しています。広告のリーチ数は、総人口比で30.0%、インターネットユーザーに限定して31.9%です。

ビジネス向けのSNSではありますが、登録ユーザー、リーチ数ともに一定以上の数値を得ていることが分かります。

Twitterのユーザー数

日本では老若男女問わず、圧倒的なユーザー数を誇るTwitterですが、スペインのユーザー数は875万人と、他のSNSと比較するとユーザー数は少なめです。広告リーチ数は総人口の18.7%、インターネットユーザー全体の19.9%と、デジタルマーケティングによる幅広いアプローチには若干不向きと言えるでしょう。

検索エンジンシェア率

続いて、検索エンジンのシェアを見ていきます。スペインで最も利用されている検索エンジンは、95.51%で圧倒的にGoogleです。そのほかBingが2.94%、Yahoo!が0.98%と続きますが、ほとんどの人はGoogleを利用しているということになります。

検索エンジンシェア率前年比
Google95.51%-0.0%
Bing2.94%-6.1%
Baidu0.01%前年データなし
Yahoo!0.98%+30.7%
YANDEX0.04%+100%
DUCKDUCKGO0.30%0
ECOSIA0.17%-15.0%
その他0.05% 
引用:Statcounter

新しい商品・ブランドを何で最初に知るか

スペインの人々にとって、最も新たな商品やブランドとの接点となっているのは、検索エンジンです。35.8%の人々が検索エンジンを通じてこれらのコンテンツを発見しています。その他には、35.3%の人が口コミ、30.6%の人々がTV広告で知ると回答しています。

検索エンジン35.8%
口コミ35.3%
TV広告30.6%
ブランドウェブサイト29.0%
パンフレット・カタログ26.0%
小売サイト25.5%
ソーシャルメディア広告24.5%
ウェブサイト内広告22.2%
TV番組・映画19.7%
商品比較サイト19.5%
ソーシャルメディア内コメント19.4%
消費者レビューサイト18.9%
店舗内展示・プロモーション17.9%
商品サンプル16.5%
ウェブリコメンデーション14.8%
引用:GWI.com

商品・ブランドを何を通じて調べるか

続いて詳しい商品情報をどのような手段で調べるかについてです。スペインでは、検索エンジンやSNS、ブランドウェブサイト、消費者レビューで調べる人が多く、特に55.7%を占める人々が検索エンジンと回答しています。

検索エンジン55.7%
SNS39.8%
ブランドウェブサイト38.0%
消費者レビュー36.9%
価格比較サイト25.7%
専門家レビューサイト19.9%
クーポンサイト19.8%
モバイルアプリ18.0%
Q&Aサイト17.2%
ビデオサイト15.5%
ブランド&商品ブログ15.4%
フォーラム&メッセージボード13.2%
VLOGS7.8%
メッセージ&ライブチャット7.4%
ミニブログ7.4%
引用:GWI.com

デバイスの比率(PC・スマートフォン・タブレット)

ウェブトラフィックのシェアは下記のようになっています。

デバイス流入シェア前年比
スマートフォン48.97%+2.5%
デスクトップ48.28%-1.9%
タブレット2.69%-7.9%
その他0.06%-40.0%
引用:Statcounter

まとめ

今回はスペインのデジタル環境やデジタルマーケティング施策に関して、概要をご紹介していきました。スペインは他の国と比べても、かなりインターネットの普及が進んでいて、日常的にインターネットが利用されています。

しかしSNS利用にはサービスによってかなり利用度のバラつきがあるため、デジタルマーケティングを行う際は注意が必要です。またSNSだけでなく、スペイン人は情報収集などに検索エンジンや広告を活用することも多いため、マーケティングでも複数のサービスを組み合わせて活用できると効果が高いでしょう。

この記事を書いた人

野口慎平

GDX 事業責任者 兼 UDX株式会社ゼネラルマネージャー。
新卒で大手外資系総合コンサルティングファームにビジネス&テクノロジーコンサルタント職として就職。2016年よりプルーヴ株式会社に法人営業職として入社。慶應義塾大学理工学部・同大学院 理工学研究科電子工学修了。
海外SEOとマーケティングオートメーションを軸としたデジタルマーケティングを得意とする。
Salesforce Pardot甲子園2021優勝

取得資格:
ITストラテジスト、応用情報技術者、IPAプロジェクトマネージャ、情報処理安全確保支援士、上級ウェブ解析士、IoTコーディネーター取得
Salesforce認定アドミニストレーター