急速に進化する欧州のデジタル先進国・イギリスにおいて、SNSや検索エンジン、モバイルデバイスの活用状況はどうなっているのでしょうか?本記事では、最新データをもとにイギリス市場の特性を深掘りし、中小企業や海外進出を狙う企業に向けたマーケティング施策のヒントを提供します。
目次
イギリスの概要
イギリス(英国)は、2025年時点で人口約6,810万人を有する先進経済国であり、名目GDPでは世界上位に位置しています。1人あたりGDPは約49,049米ドルと高水準で、生活水準や消費力の高さが特徴です。主要な輸出先はユーロ圏(36%)およびアメリカ(21%)で、欧米市場との結びつきが非常に強い経済構造を有しています。
以下は、2023年~2026年の主要経済指標をまとめたものです(出典:IMF、Bank of England、ONSなど)。
| 指標 | 2023年 | 2024年 | 2025年(予測) | 2026年(予測) |
| 実質GDP成長率(%) | 0.1 | 0.7 | 1.5 | 1.7 |
| 失業率(%) | 4.0 | 4.2 | 4.1 | 4.0 |
| インフレ率(年間平均・%) | 7.3 | 2.7 | 2.1 | 2.0 |
| インフレ率(年末時点・%) | 4.0 | 2.5 | 2.0 | 2.0 |
| 政府収入(GDP比・%) | 40.6 | 40.3 | 40.3 | 40.5 |
| 政府支出(GDP比・%) | 44.8 | 43.7 | 43.5 | 43.4 |
| 財政赤字(政府全体・GDP比・%) | -4.2 | -3.4 | -3.2 | -2.9 |
| 公的債務(中銀除く・GDP比・%) | 89.2 | 91.6 | 93.1 | 94.5 |
| 経常収支(GDP比・%) | -3.3 | -3.2 | -3.5 | -3.3 |
| 外貨準備高(10億米ドル) | 190.5 | – | – | – |
イギリス経済は、2023年のゼロ成長を経て、2024年以降は徐々に回復基調へ転じると予測されています。インフレはピークを越えて沈静化しており、2025年には安定的な物価水準に戻る見通しです。失業率も4%前後で安定しており、労働市場の回復も期待されます。
財政赤字や公的債務は依然として課題ですが、GDP比での収支改善が進めば、国際的な信認の回復にもつながると見られます。外貨準備も1900億ドル規模と潤沢で、金融安定性も一定水準を保っています。
このように、イギリスは欧州・北米との貿易に強みを持ちつつ、成熟した消費市場としても高いポテンシャルを持っています。特に中小企業や越境EC企業にとっては、購買力の高いターゲット市場として注目すべき国のひとつです。
デジタルマーケティング概況

2025年2月時点におけるイギリスのデジタル環境は、先進国の中でも極めて成熟した状態にあり、デジタルマーケティングにとって高いポテンシャルを持つ市場といえます。
総人口は6,940万人で、過去1年間に43万人(+0.6%)の増加を記録。都市化率は85.0%と高く、デジタル接触ポイントの多い都市部に人口が集中しています。これにより、オンライン広告やエリアターゲティング型のデジタル施策が効果を発揮しやすい環境が整っています。
モバイル接続数は8,840万件にのぼり、人口比で127%という高水準を維持。これは1人が複数のSIMやデバイスを保有していることを示しており、クロスデバイスでのコンテンツ接触や行動追跡の重要性が増していることを物語っています。前年比では微減(-0.08%、約6.8万件の減少)となっていますが、これはSIM契約の整理や物理端末依存の減少といったユーザー行動の変化と捉えるべきでしょう。
インターネット利用者数は6,780万人に達し、人口の97.8%が何らかの形でオンラインにアクセスしていることになります。この数値はグローバルでもトップレベルの普及率であり、ほぼ全ての国民がデジタルチャネルに接触しているという前提でマーケティング施策を設計できます。
一方で、ソーシャルメディアの利用者数は5,480万人と、前年から140万人(-2.5%)の減少が見られました。これはプラットフォームの利用分散や、一部ユーザーのSNS離れ、アカウント整理といった要因が考えられます。ただし、全人口に対する普及率は79.0%と依然として高く、SNSは依然として主要なマーケティングチャネルとしての地位を維持しています。
これらのデータから、イギリス市場におけるデジタル施策では以下のポイントが鍵となります:
- ほぼ全員がオンラインに接続していることを前提としたフルファネル戦略
- クロスデバイス施策の設計(モバイル+PC)
- SNSに依存しすぎない、検索・動画・Eメールなどを含めたマルチチャネル運用
特に、SNSの伸び悩み傾向を踏まえたうえで、検索連動型広告(Google Ads)やインフルエンサーを活用したYouTube・Podcastなど、SNS外の媒体との連携強化が今後の成功に直結すると考えられます。
イギリスにおけるSNSユーザー数と主要プラットフォーム

2025年時点で、イギリスのソーシャルメディアユーザーは 約5,480万人 にのぼり、これは総人口の 79.0% に相当します。前年比では 約140万人の減少(-2.5%)となっており、成熟市場らしく飽和状態に近づいていることが読み取れます。一方で、特定のプラットフォームでは利用者の増減に差が見られ、戦略的な選定が求められる段階にあります。
主要SNSプラットフォーム別ユーザー数
| SNSプラットフォーム | 利用率(%) | 推定ユーザー数(万人) |
|---|---|---|
| 79.9% | 4,379万人 | |
| 72.3% | 3,964万人 | |
| Messenger | 56.6% | 3,103万人 |
| 54.1% | 2,964万人 | |
| X(旧Twitter) | 36.9% | 2,023万人 |
| TikTok | 36.0% | 1,973万人 |
| iMessage | 33.6% | 1,842万人 |
| 30.2% | 1,655万人 | |
| 26.2% | 1,434万人 | |
| Snapchat | 25.6% | 1,403万人 |
| 20.6% | 1,129万人 | |
| Telegram | 14.6% | 800万人 |
| Skype | 12.2% | 669万人 |
| Nextdoor | 11.2% | 614万人 |
| Discord | 10.0% | 548万人 |
※ユーザー数はStatista、DataReportal(2025年2月版)、各公式データ等をもとに再集計した推計値です。
※利用率は、全SNS利用者(5,480万人)を母数とした概算値です。
イギリス市場でのSNS活用ポイント
- Facebook/Instagram/WhatsAppの3点セットは依然としてデジタル戦略の中心にあり、Meta広告の設計最適化が鍵。
- TikTok・Snapchatを活用するなら、Z世代・ミレニアル層向けの商品・サービスに絞って戦略設計を行うべき。
- LinkedInは、BtoBリード獲得において欧州随一の成果が期待できる媒体として、業種によっては最重要チャネルとなり得ます。
イギリスで最も使われているSNSプラットフォーム(2025年版)
2025年2月時点のデータ(出典:GWI / We Are Social & Meltwater)によると、イギリスでは以下のSNSプラットフォームが特に高い利用率を示しています。
上位6プラットフォーム利用率一覧

| 順位 | プラットフォーム | 月間利用率(%) |
| 1 | 79.9% | |
| 2 | 72.3% | |
| 3 | Messenger | 56.6% |
| 4 | 54.1% | |
| 5 | X(旧Twitter) | 36.9% |
| 6 | TikTok | 36.0% |

各SNSの特徴とマーケティングへの活用法
- WhatsApp(利用率:79.9%)
- 特徴・利用理由
- エンドツーエンド暗号化による高いセキュリティとプライバシー保護。
- 16~64歳のインターネットユーザーの79%が日常的にチャットに利用しており、開封率・応答率ともに高水準。
- 電話番号ベースのIDで手軽に始められ、ユーザー側の障壁が低い。
- マーケティング活用法
- チャットボットによる顧客対応:航空会社のBritish Airwaysは、機内Wi-FiでWhatsAppを無料解放し、フライト遅延通知やアップセル提案を行うことで顧客満足度を向上。
- ラグジュアリーブランドのパーソナルショッピング:Vogue Business調査では、GucciやBurberryなど高級ブランドが、WhatsAppでの写真送信/会話を通じた“デジタル・クライアントリング”を導入し、53%の消費者がリアルタイムでの直接相談を重視。
- 予約・注文通知:飲食店チェーンが注文完了やテーブル予約リマインダーを自動配信、ECサイトでは購入サンクスメッセージや配送ステータス更新に利用。
- 特徴・利用理由
- Facebook(利用率:72.3%)
- 特徴・利用理由
- 広い年齢層(13歳以上、特に30~60代)をカバー。
- 広告リーチは総人口の55.2%に相当し、18歳以上では69.6%が利用。
- イベント機能、グループ機能、動画ライブ配信、ショッピング機能など、多彩なコンテンツフォーマットと高いセグメント精度。
- マーケティング活用法
- ダイナミック広告(Dynamic Ads):アパレルECのTeepublicが、Facebookのダイナミック広告で商品レコメンドを自動化し、リターン・オン・アド・スペンド(ROAS)を98%向上。
- コミュニティ形成・イベント告知:PizzaExpressはMessengerではなくFB公式ページで新店舗オープンを告知し、Facebook Liveを通じたバーチャルツアーで集客を強化。
- Brand Page運営:B2B企業でもビジネスページでホワイトペーパーDLを促進し、リードジェネレーション広告(Lead Ads)を活用する事例が増加。
- 特徴・利用理由
- Instagram(利用率:54.1%)
- 特徴・利用理由
- 13歳以上の利用者の48.2%がアドリーチ(広告到達)を受け、56.3%が「利用可能な年齢層(eligible)」で利用。
- ストーリーズ、リール、ショッピングタグ(Shop Nowボタン)など、ビジュアル訴求に特化した機能が豊富。
- 若年層~ミレニアル世代のブランド認知・検討フェーズで特に強い。
- マーケティング活用法
- UGC+ハッシュタグチャレンジ:フィットネスブランドGymsharkの「#Gymshark66」チャレンジでは、ユーザーが66日間のトレーニング成果を投稿。2021年版だけで193M回再生、140k以上の動画投稿を獲得し、フォロワーを1.4M→4M超に拡大。
- インフルエンサーマーケティング:マイクロインフルエンサーとのタイアップでストーリーズ広告を配信し、ECサイトへのクリック率を平均3.5倍に改善した事例も。
- ショッピング機能活用:ファッション、小売業でプロダクトタグを直接投稿に埋め込み、タップ1回で商品ページへ遷移させる「Instagram Shops」を導入。
- 特徴・利用理由
- Facebook Messenger(利用率:56.6%)
- 特徴・利用理由
- Metaファミリーの一員としてFacebookアカウントとシームレス連携。
- 広告リーチは総人口の38.5%、成人の48.5%が利用。
- APIを介したボット構築が容易で、24/7の自動応答が可能。
- マーケティング活用法
- チャットボット予約:PizzaExpressがMessengerボットで店舗予約を自動化。90秒以内に最寄り店舗の空席状況からテーブル確保まで完了し、カスタマーエクスペリエンスを向上。
- リマインダー配信:金融機関が新商品リリースやセミナー案内をMessengerプッシュで送信し、従来のメールに比べて開封率を30%向上。
- パーソナライズド広告:ユーザーの過去問い合わせ内容を元に、最適化したプロモーションメッセージを配信。
- 特徴・利用理由
- TikTok(利用率:36.0%)
- 特徴・利用理由
- Ad Reachは18歳以上で45.0%、全インターネットユーザーの36.6%に到達。
- ショート動画特化型アルゴリズムでバイラル拡散力が高い。
- Z世代を中心に、ブランドとの双方向コミュニケーションを重視。
- マーケティング活用法
- 参加型ハッシュタグチャレンジ:Gymshark「#Gymshark66」のほか、飲料ブランドが「#SipWithUs」チャレンジを展開し、3週間でUGC投稿50万本、ブランド公式フォロワーを20%増加。
- インフルエンサーマーケティング:英国のコスメ企業がマイクロ&ナノインフルエンサーを起用し、製品レビュー動画で購入CVRを2倍に。
- TikTok For Business広告:詳細ターゲティング(興味・行動ベース)やSpark Ads(既存投稿の広告利用)でROI最適化。
- 特徴・利用理由
- X(旧Twitter)(利用率:36.9%)
- 特徴・利用理由
- リアタイム性に優れ、速報性・拡散性が高い。
- 総人口の33.0%、成人の41.1%に広告到達。
- IT・投資・ニュース系のコアファン層が購読し、BtoBコミュニケーションでも活用。
- マーケティング活用法
- プロモートアカウント/プロモートトレンド:PizzaExpressがUK向けにプロモートアカウントキャンペーンを実施し、費用対効果(Cost-per-follower)を50%改善、ROIは4,400%を達成。
- ハッシュタグキャンペーン:小売ブランドが「#SummerSaleUK」ハッシュタグを推進し、1週間でツイート数10万件・エンゲージメント率5%を記録。
- カスタマーサポート:通信事業者が公式アカウントで障害情報やFAQをリアルタイム発信し、サポートコールを20%削減。
- 特徴・利用理由
各SNSは、それぞれ異なるユーザー属性と利用シーンを持つため、プラットフォームの特性を活かしたターゲティングとコンテンツ設計がマーケティング成果を大きく左右します。これらの事例を参考に、御社のKPIやターゲット像に合わせた最適な施策をご検討ください。
Sinch
Yahoo!
Vogue Business
DataReportal – Global Digital Insights
Wpromote
House of Marketers
Marketing Week
Audiense Resources
検索エンジンシェア率

イギリスにおける検索エンジン(および使用ブラウザ)シェアは、デジタル広告やSEO戦略に大きく影響を与える重要な指標です。2025年2月時点のStatCounterデータによると、以下のブラウザを通じて検索されるWebトラフィックの割合は以下のとおりです。
ブラウザ別Webトラフィックシェア(イギリス|2025年2月)
| ブラウザ | シェア(%) |
| Chrome | 49.91% |
| Safari | 31.88% |
| Edge | 9.05% |
| Samsung Internet | 4.11% |
| Firefox | 2.45% |
| Opera | 1.13% |
| Android Browser | 0.94% |
| その他 | 0.53% |

考察とマーケティング活用のポイント
■ Chrome(約50%)の圧倒的シェア
Google Chromeは依然として英国市場でトップの座を維持しており、Google検索エンジンに最適化されたSEO施策が最重要とされます。検索連動型広告(Google Ads)によるリーチも最大化できる環境です。
■ Safariユーザーの多さ
約3割を占めるSafariユーザーは、主にiPhoneおよびiPadユーザーを示しており、Apple製品向けのUI/UX最適化やApple Search Ads対策も無視できません。特にリッチコンテンツの読み込み速度やモバイル広告表示最適化がカギになります。
■ EdgeとSamsung Internetの台頭
Microsoft Edge(9.05%)とSamsung Internet(4.11%)は、WindowsユーザーやSamsungスマホユーザーの利用が多く、B2Bユーザーやアンドロイド系ターゲットへのアプローチにおいて重視すべきブラウザです。
■ Firefox・Operaのニッチ活用
FirefoxやOperaユーザーはテクニカルな層やプライバシー志向が強いとされ、エンジニア・研究者向けの広告や信頼性訴求型のLP設計が効果的です。

SEO・広告施策への示唆
- Google最適化を基本に据える(特にChrome+Safari対策で8割超)
- iOSユーザーを意識した広告配信(Safari)とUX改善を同時に検討
- B2BターゲットにはEdge、Android端末にはSamsung Internetを意識
- Firefoxユーザーにはコンテンツの透明性・信頼性強化を徹底
補足:検索エンジン自体のシェアは、ブラウザシェアと相関が強く、Chrome=Google、Safari=Google or Bing、Edge=Bing が主流と考えられます。
検索に使用される言語の傾向
イギリス国内における検索行動に使用される言語は、ほぼ圧倒的に「英語(UK English)」が支配的です。しかし、多国籍国家・移民国家としての側面も強いイギリスでは、多言語検索の傾向も一部存在し、特定のコミュニティやビジネス領域では注目すべきポイントとなります。
主な検索言語の割合
| 言語 | 検索使用傾向の特徴 |
| 英語(UK) | 約95%以上。最も一般的で標準。 |
| 英語(US) | 一部ユーザーにより使用(特にIT分野) |
| ポーランド語 | 東欧系移民の影響で一定の検索あり |
| アラビア語 | 中東系コミュニティで利用 |
| ヒンディー語・ウルドゥー語 | 南アジア系(インド・パキスタン系)移民向け |
| 中国語(簡体字) | 中国人居住者・旅行者・ビジネス層向け |
※出典:Googleトレンド、Statista、英国統計局(ONS)言語使用データ等をもとにした分析

マーケティングへの示唆と活用ポイント
✅ 英語(UK)対応が最優先
検索エンジン対策やWebコンテンツ、広告コピーは、イギリス英語(スペリング・表現含む)に最適化することが基本です。特に「colour / organisation / analyse」などUK表記を使用し、信頼性を高めましょう。
✅ 多言語検索にも戦略的に対応
ローカル・コミュニティ施策や海外からの集客を意識する場合、以下の施策が有効です。
- ポーランド語やアラビア語のLP展開(地域密着型ビジネス向け)
- 中国語やヒンディー語による広告配信(旅行・教育・金融サービス向け)
- Google Adsの言語ターゲティング活用(特定言語ユーザーへの効率的アプローチ)
✅ B2B・IT業界ではUS英語の併用も視野に
テック業界や海外製品のレビュー、API関連検索ではUS英語ベースのキーワードも検索されやすく、Google.com 英語設定のSEO戦略も場合により検討が必要です。
イギリスの検索市場では「UK英語」が圧倒的主流である一方、多民族国家ゆえの多言語検索層も無視できません。SEOやリスティング広告のターゲティング精度を高めるためには、地域別・言語別のニーズに応じたローカライズ戦略を取り入れることが、今後さらに重要になるでしょう
新しい商品・ブランドを何で最初に知るか
2025年現在、イギリスのインターネットユーザー(16歳以上)が新しい商品やブランドを最初に知るきっかけとなるチャネルは多岐にわたります。中でも検索エンジン(38.8%)、テレビ広告(38.7%)、口コミ(38.3%)がトップ3に並び、情報探索型・受動視聴型・感情共有型の3要素がバランスよくブランド認知に影響を与えていることが分かります。
主なブランド認知チャネル(2025年|イギリス)
| チャネル | 認知率(%) |
| 検索エンジン | 38.8% |
| テレビ広告 | 38.7% |
| 口コミ(Word of Mouth) | 38.3% |
| 小売系Webサイト(Retail) | 33.6% |
| 店頭プロモーション | 27.6% |
| ブランド公式サイト | 26.7% |
| ソーシャルメディア広告 | 23.3% |
| メール・DM | 21.1% |
| Web上のバナー広告 | 19.7% |
| 比較サイト | 19.1% |
| 映画・ドラマ | 18.6% |
| レビューサイト | 18.5% |
| アプリ内広告 | 15.5% |
| 紙媒体広告(新聞・雑誌) | 15.0% |
| ソーシャルメディアでのコメント | 14.6% |
出典:GWI, Q3 2024(イギリス国内調査)

分析と示唆
1. 「検索+TV+口コミ」の三軸が鍵
検索エンジンによる自主的な情報収集、TV広告による大量リーチ、そして口コミによる共感・信頼の獲得。この3つのチャネルが拮抗している点は、イギリス市場の情報取得行動が多様でバランス型であることを示しています。
2. 「店舗」と「デジタル」の融合が重要
「小売サイト」「店頭プロモーション」「ブランドサイト」「アプリ広告」など、O2O施策(Online to Offline)が依然として効果的です。オンラインで認知させ、オフラインで体験・購入へと誘導する導線設計が求められます。
3. ソーシャルメディアの役割は“補完的”
InstagramやFacebookでの広告(23.3%)やコメント(14.6%)は、検索やTVほどの即効性はないものの、認知後の興味喚起・関与強化フェーズで効果的です。

マーケティング施策への応用例
| チャネル | 活用アイデア |
| 検索広告 | 商品名+機能でのSEM施策、ショッピング広告最適化 |
| テレビ広告 | 主要時間帯での感情訴求型スポットCM、連携したSNSキャンペーン |
| 口コミ | 商品体験者レビューのSNSシェア促進、UGC(ユーザー投稿)活用 |
| 小売系サイト | Amazon・大手ECでのブランドページ強化、特集企画との連動 |
| ソーシャル広告 | ターゲティング精度を高めたリターゲティング広告の展開 |
商品・ブランドを何を通じて調べるか
2025年のイギリスにおいて、インターネットユーザー(16歳以上)がブランドや商品についてオンラインで情報収集する際、最も利用されているチャネルは検索エンジン(64.4%)です。次いで、口コミ・レビュー系のチャネルが上位を占めており、「信頼性のある情報を自ら能動的に探す傾向」が強いことがうかがえます。
主なオンラインブランドリサーチチャネル(2025年|イギリス)
| チャネル | 利用率(%) |
| 検索エンジン | 64.4% |
| 消費者レビューサイト | 41.6% |
| ブランド&商品公式サイト | 38.0% |
| 価格比較サイト | 34.8% |
| ソーシャルメディア(SNS) | 26.6% |
| 専門レビューメディアサイト | 20.2% |
| クーポン・割引サイト | 15.8% |
| モバイルアプリ | 15.2% |
| Q&Aサイト | 14.9% |
| フォーラム・掲示板 | 10.6% |
| 動画サイト(例:YouTube) | 9.9% |
| ブログ(ブランド・製品紹介) | 8.4% |
| メッセンジャーアプリ内での情報共有 | 7.5% |
| オンラインピンボード(例:Pinterest) | 6.5% |
| Vlog(個人発信の動画ブログ) | 5.2% |
出典:GWI(Q3 2024、イギリス)

考察と戦略的示唆
1. 「検索×レビュー」型のリサーチが主流
検索エンジン(64.4%)と消費者レビュー(41.6%)が主軸であり、ユーザーは商品購入前に中立的で信頼性のある情報を複数ソースから取得する行動様式が定着しています。SEO対策に加え、GoogleレビューやTrustpilotなどのレビュー施策強化がカギを握ります。
2. ブランド公式サイトと価格比較が重要な判断材料
公式サイト(38.0%)と価格比較サイト(34.8%)の高い利用率は、ユーザーが自社サイトと競合他社の情報を同時に検討していることを意味します。競合比較を前提とした「強み訴求型ランディングページ」の設計が推奨されます。
3. SNSは「認知」から「補足情報」への移行チャネル
SNS(26.6%)はブランド認知に加え、実際の使用感・口コミ・ビジュアルイメージなど定性的な情報の補完チャネルとして活用されています。特にInstagramやXでの投稿内容が判断材料となるため、ハッシュタグ設計やUGC戦略が不可欠です。

マーケティング施策への応用ポイント
| チャネル | 施策例 |
| 検索エンジン | SEO強化、構造化データマークアップ、Googleビジネスプロフィールの最適化 |
| レビューサイト | Trustpilotなど外部レビュー活用、アンケート依頼によるレビュー獲得 |
| ブランドサイト | 比較表・FAQ・実績紹介・第三者評価の掲載で信頼性訴求 |
| 価格比較サイト | 商品登録の最適化、割引情報の自動更新、レビューとの連携表示 |
| SNS | 商品利用シーンの動画投稿、インフルエンサー・顧客のUGC活用 |
デバイスの比率
2025年2月時点におけるイギリスのウェブトラフィックにおいて、使用されるデバイスには顕著な傾向が見られます。特にスマートフォンのシェア拡大と、パソコンの利用減少が際立っており、モバイルファーストのデジタル戦略がより重要になっています。
各デバイスのウェブトラフィック構成比(2025年2月|イギリス)
| デバイス種類 | シェア(%) | 前年比増減(%) | BPS(ベーシスポイント)変化 |
| モバイル端末(スマートフォン) | 55.34% | +17.3% | +817 BPS |
| パソコン(ラップトップ・デスクトップ) | 39.77% | -18.2% | -885 BPS |
| タブレット端末 | 4.77% | +16.3% | +67 BPS |
| その他のデバイス(ゲーム機など) | 0.12% | +9.1% | +1 BPS |
出典:StatCounter(2025年2月、ウェブページトラフィックシェア)

考察:モバイル中心社会へのシフトが加速
- スマートフォンの圧倒的成長:前年から+17.3%増加し、全ウェブトラフィックの過半数を超える55.3%を占めています。日常の検索・SNS・ECすべてがモバイルで完結するユーザーが主流化している証左です。
- パソコンの利用率低下:依然として約40%と一定の比率を保っていますが、前年より-18.2%と大幅に減少。特に若年層やモバイルネイティブ世代の利用がスマホにシフトしています。
- タブレットやその他端末も微増:タブレットが+16.3%、ゲーム機等のその他デバイスも+9.1%と、補助的チャネルとして成長傾向が見られます。

マーケティング施策への示唆
| 項目 | 推奨施策 |
| モバイル最適化 | モバイルファーストなUI/UX設計、読み込み速度改善、レスポンシブデザイン対応 |
| スマホ向け広告 | Google AdsやMeta広告での縦長動画・カルーセル活用 |
| パソコン向けの情報設計 | BtoBや金融業界ではPC向けコンテンツを維持。資料DLや導線整備を徹底 |
| タブレット対応 | 横向き動画や商品カタログなど「体験型コンテンツ」の拡充 |
まとめ|イギリスのデジタルマーケティング動向と戦略提言

過去と現状の推移(2022〜2025年)
イギリスでは、デジタル接続環境の成熟とともに、ユーザー行動やメディア接触のスタイルも大きく変化しています。
| 分野 | 主な変化(2022〜2025年) |
| インターネット利用率 | 98%近くに達し、ほぼ飽和状態。デジタルリテラシーが高く、全年齢層で常時接続が前提に。 |
| SNSユーザー数 | 約5,480万人(人口の79%)と高水準だが、前年比で-2.5%(約140万人減)と頭打ち傾向。 |
| 利用デバイス | モバイル端末が主流化(55.3%)。PCは減少、タブレットや他デバイスは微増。 |
| ブラウザシェア | Chrome(49.9%)とSafari(31.8%)で8割以上を占有。広告配信や表示対応もこの2強前提で設計が必須。 |
| 商品・ブランドの発見経路 | 検索エンジン・テレビ広告・口コミがほぼ同率(約38%)。検索・SNS・TVの三位一体戦略が鍵。 |
| ブランド調査経路 | 検索エンジン(64.4%)、レビュー(41.6%)、公式サイト(38%)が上位。購買前に自ら調べる傾向が顕著。 |

今後の動向予測(2025年以降)
- SNS市場は成熟・横ばい:Meta系(WhatsApp・Facebook・Instagram)の利用は高止まりし、今後はXやTikTokのエンゲージメント戦略が差別化要素に。
- モバイル特化設計が前提:2025年で+17%の成長を記録したモバイル端末は、あらゆるデジタル接点の中心へ。モバイルで完結できないUXは脱落要因になり得ます。
- 検索+レビュー重視の傾向加速:購買前に「調べる」「比較する」文化がさらに定着。特にB2C領域ではレビューや比較サイトでの評価対策が重要。
- TVと検索の連携強化:テレビCMや番組タイアップは引き続き影響力が高く、検索やSNSとのクロスメディア連携がROI向上の鍵になります。
総括
イギリス市場においては、「情報を自分で調べ、納得して購入する」ユーザー行動が一層強まり、企業側には検索・レビュー・モバイル・SNSすべてを網羅した総合設計力が求められています。今後は、「点」ではなく「面」で接点を設計するクロスチャネル戦略の最適化が成功の分岐点となるでしょう。


