海外デジタルマーケティングを実施していく上で、気をつけるべき法律や規制はいくつかあります。
とくに特定商品取引法は、商品トラブルに関して消費者を保護する規制。
消費者に対して、商品の返品対応や返金対応する際におさえておくべき法律です。
この章では、そんな特定商取引法のタイプごとの特徴や規制、最近改訂されたネガティブオプションなどの新しい規制について解説します。
消費者との商品・サービスのトラブルについて知りたい方は、参考にしてみてください。
目次
特定商取引法とは?
そもそも特定商取引法とは、事業者による悪質で違法な勧誘行為等を防止し消費者の利益を守る法律です。
企業と消費者の間でとくにトラブルになりやすい7つの取引タイプを規定し、それぞれに具体的な規制内容が明記されています。
企業が守るべき商品・サービス販売のルールを周知させ、クーリングオフ制度などを適用し、消費者を守る仕組みだといえます。
特定商取引にあたる7つのタイプ
デジタルマーケティングについて考える際に、自社のマーケティング戦略が、日本国内の特定商取引に該当する取引ではないか、もう一度考えてみましょう。
ここでは特定商取引法に該当する7つのタイプと取引内容を紹介し、デジタルマーケティングをする際に、対応しなければいけないポイントについて解説します。
通信販売
通信販売は事業者が新聞や雑誌、インターネットなどで広告し、ハガキや電話などの通信手段を活用して申し込みを受け付ける商取引が該当するタイプです。
通信販売を行う際に記載すべき情報は下記のとおり。
- 販売価格(役務の対価)(送料についても表示が必要)
- 代金(対価)の支払時期、方法
- 商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
- 申込みの期間に関する定めがあるときは、その旨及びその内容
- 契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(売買契約に係る返品特約がある場合はその内容を含む。)
- 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
- 事業者が法人であって、電子情報処理組織を利用する方法により広告をする場合には、当該事業者の代表者又は通信販売に関する業務の責任者の氏名
- 事業者が外国法人又は外国に住所を有する個人であって、国内に事務所等を有する場合には、その所在場所及び電話番号
- 販売価格、送料等以外に購入者等が負担すべき金銭があるときには、その内容及びその額
- 引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容
- いわゆるソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境
- 契約を2回以上継続して締結する必要があるときは、その旨及び販売条件又は提供条件
- 商品の販売数量の制限等、特別な販売条件(役務提供条件)があるときは、その内容
- 請求によりカタログ等を別途送付する場合、それが有料であるときには、その金額
- 電子メールによる商業広告を送る場合には、事業者の電子メールアドレス
ただし、下記の場合には特定商取引法が適用されません。
- 営業のため、もしくは営業として締結する
- 海外にいる人に対する販売、または役務の提供
- 国、地方公共団体が行う販売、または役務の提供
- 特別法に基づく組合、公務員の職員団体、労働組合がそれぞれの組合員に対して行う販売、または役務の提供
- 事業者がその従業員に対して行う販売、または役務の提供
- 株式会社以外は発行する新聞紙の販売
- 他の法令で消費者が利益を保護することができる等と認められるもの
日本国内の日本人に向けたマーケティングを行う場合には法律の対象となります。
ただし海外に向けたマーケティングであれば、特別商取引法の適用外になる点が特徴です。
また特定商取引法に記載には、実際の商品よりも明らかに誇張された広告文や実際の商品にはない、嘘の広告文を記載することは禁止されています。
個人が商取引をする場合でも営利の意思をもって継続的に販売しているなら「事業者」に該当して、特定商取引法に該当する点に注意しましょう。
参考URL:https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/
参考URL:https://keiyaku-watch.jp/media/hourei/tokuteishoutorihikihou/#
訪問販売
訪問販売は事業者が消費者の自宅を訪問し、商品・サービスの販売、または役務を行う契約を行う商取引のタイプです。
営業所等で締結された契約でも、路上等で消費者を呼び止めて契約を成立させる(キャッチセールス)や電話やSNSなどで消費者を呼び出して契約させる(アポイントメントセールス)などは訪問販売に当たります。
訪問販売を行う際に、明言すべき情報は下記のとおり。
- 事業者の氏名(名称)
- 契約の締結について勧誘する目的であること
- 販売しようとする商品(権利、役務)の種類
消費者が契約の意思を示さない場合に、強引に勧誘を続けることは禁止されています。
特定商取引法が適用されないケースは通信販売の場合と同じです。
海外にいる人との取引では、適用されない法律だと覚えておきましょう。
参考URL:特定商取引法
電話勧誘販売
電話勧誘販売は、事業者が電話で勧誘を行い、申し込みを受ける取引です。
売買契約・役務提供契約を、郵便や電話、ネット等で受け付けます。
また消費者に目的を伝えずに電話をかけさせることや、類似サービスよりも圧倒的に有利な条件を伝えて電話をさせるような行為も電話勧誘に該当します。
電話勧誘販売をする際は、下記の情報を口頭で伝えることが必要です。
- 事業者の氏名(名称)
- 勧誘を行う者の氏名
- 販売商品の種類
- 契約の締結について勧誘する目的であること
一度契約を拒否した消費者に対して再勧誘を行うことは禁止されており、海外にいる人への勧誘には適用されません。
参考URL:特定商取引法
連鎖販売取引
連鎖販売取引は個人を販売員として勧誘し、その販売員に別の個人を販売員として勧誘するといった方法で、販売網を連鎖的に拡大して行う商品・役務の取引です。
特定商取引法は「連鎖販売業」を下記のように定義しています。
- 物品の販売業者であって、再販売、受託販売もしくは販売のあっせんをする者を特定利益が得られると誘引し、特定負担を伴う取引をするもの
事業者や勧誘者には下記の情報を明言することが求められている点に注意です。
- 統括者、勧誘者または一般連鎖販売業者の氏名(名称)
- 特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をする目的である旨
- その勧誘の係る商品または役務の種類
連鎖販売取引の事業者や勧誘者は、消費者に対して嘘をついたり圧力をかけたりして、契約の延長を迫ることは禁止されています。
誇大広告も禁止の対象です。
参考URL:特定商取引法
特定継続的役務提供
特定継続的役務提供は、長期的・継続的な役務の提供と高額の対価を要求する取引です。
具体的には、下記の7つの業務が特定継続的役務提供に該当します。
業務内容 | 期間 | 金額 |
エステ | 1ヶ月以上 | 5万円を超える |
美容医療 | 1ヶ月以上 | 5万円を超える |
語学教室 | 2ヶ月以上 | 5万円を超える |
家庭教師 | 2ヶ月以上 | 5万円を超える |
学習塾 | 2ヶ月以上 | 5万円を超える |
パソコン教室 | 2ヶ月以上 | 5万円を超える |
結婚相手紹介サービス | 2ヶ月以上 | 5万円を超える |
また下記の場合は特定商取引法が適用されません。
- 営業のため、または営業として締結するもの
- 海外にいる人に対する販売、または役務の提供
- 国、地方公共団体が行う販売、または役務の提供
- 特別法に基づく組合、公務員の職員団体労働組合がそれぞれの組合員に対して行う販売または役務の提供
- 事業者がその従業員に対して行った販売又は役務の提供の場合
ちなみに特定継続的役務提供にあたる場所で消費者が商品やサービスの購入をした場合でも、クーリングオフが成立する仕組みができています。
参考URL:特定商取引法
業務提供誘引販売取引
業務提供誘引販売取引は「仕事を提供するので収入が得られる」などといった口実で消費者を勧誘し、仕事に必要だと商品・サービスを購入させること。
特定商取引法に規定されている「業務提供誘引販売」の定義は下記のとおり。
- 物品の販売または役務の提供の事業であって、業務提供利益が得られると相手方を誘引し、その者と特定負担を伴う取引をするもの
誇大広告や嘘、圧迫的な態度による契約の強制は禁止されています。
参考URL:特定商取引法
訪問購入
訪問購入は、購入業者が消費者の自宅を訪問し物品を買い取る取引です。
営業所以外で行われる買取業務が該当し、喫茶店や路上、イベント会場など買取を行う店舗以外で行われる買取取引が「訪問購入」にあたると覚えておきましょう。
ちなみに訪問購入に該当しない業務は、下記のとおりです。
- 営業のため、又は営業として締結するもの
- 海外にいる人に対する訪問購入
- 国、地方公共団体が行う訪問購入
- 特別法に基づく組合、公務員の職員団体、労働組合がそれぞれの組合員に対して行う訪問購入
- 事業者がその従業員に対して行う訪問購入
また、以下の場合は一部規定(法第58条の5、法第58条の6第2項及び同条第3項)を除いて、特定商取引法が適用されません(政令第16条の5)。 - いわゆる御用聞き取引の場合
- いわゆる常連取引の場合
- 住居からの退去に際し、売買契約の相手方から取引を誘引した場
訪問購入の際は、事業者の氏名(名称)・契約目的の訪問であること・購入予定の物品について口頭で伝える義務があり、契約の意思がない方を再勧誘することは禁止です。
また勧誘なしに飛び込みで買取業務を行うことも法律違反となっています。
参考URL:特定商取引法
特定商取引法における規制
特定商取引法における規制は、行政による規制と民事ルールの2種類に分類されます。
この章では、それぞれの規制やルールについて確認しましょう。
参考URL:特定商取引法とは
参考URL:特定商取引法
行政による規制
特定商取引法においては、業者に対して下記のような義務が課されています。
- 氏名(名称等)の明示を義務づけ:事前に事業者名や勧誘者名を明示する
- 不当な勧誘の禁止:事前告知なしに、もしくは高圧的に契約を迫ることは禁止
- 広告規制:必ず重要事項を明記し、虚偽・誇大広告は禁止
- 書面交付義務:契約締結時に、重要事項を明記した書面を交付する
消費者に公平な情報提供をした上で、商品・サービスの契約を促します。
違反した場合は業務改善や停止、禁止命令の行政処分を受けることになるので注意しましょう。
民事ルールによる規制
消費者と事業者の間のトラブルを防止、または消費者を救済するために下記のようなルールが定められています。
- クーリング・オフ制度:契約の書面を受け取ってから所定の期限内であれば無条件で解約できること
- 意思表示の取り消し:事業者の偽の情報や誇大広告などによって、商品・サービスを購入させられた場合は、購入の意思を取り消すことができる
- 損害賠償等の額の制限:消費者が中途解約する場合の損害賠償金に制限
特定商取引法には消費者を事業者から守る民事ルールがあるので、事業者側は誇大広告や嘘の情報でマーケティングをするのは避けるべきでしょう。
ネガティブオプション
ネガティブオプションとは、事業者が消費者に対して売買契約なしに勝手に送りつけた商品・サービスの代金を消費者は支払う義務がないというルールです。
このようなケースを避けるためにも、契約内容を記した文章で売買契約を締結して商品・サービスを提供できるようにしていきましょう。
参考URL:特定商取引法
海外デジタルマーケティングをする際は、特定商取引法にも注意しよう!
この記事では、海外デジタルマーケティングで気をつけるべき特定商取引法の具体的な規制内容について解説しました。
海外マーケティングであれば適用外ですが、国内に住む方を対象とした販売業務には特定商取引法が適用される場合があり、違反すると業務改善や停止、禁止命令が下されます。
また民事ルールには、クーリング・オフ制度や意思表示の取り消し、損害賠償等額の制限など、消費者を守る各種のルールが定められています。
守るべき規則をおさえて、デジタルマーケティングを円滑に進めていきましょう。