薬機法、景品表示法|海外デジタルマーケティングで気を付けるべき法律・規制②

海外デジタルマーケティングを考える上で、マーケティング戦略を考える際に欠かせないのが薬機法や景品表示法といった法律や規制についてです。

安全性や信頼性を担保し、誇大広告から消費者を守る法律である薬機法や景品表示法ですが、具体的な内容について知らない方も多いのではないでしょうか?

この記事では、薬機法と景品表示法の概要や目的、規制対象について解説します。

海外マーケティングを展開するにあたって重要な法律や規制について知って、マーケティング戦略を検討する際の参考にしてみてください。

薬機法とは?安全性と有用性の基準を定める

薬機法(旧薬事法)は、2014年に改正された「医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品」の有効性・安全性を確保するために制定された法律です。

この章では、薬機法の概要や目的、具体的な規制対象について確認しましょう。

参考URL:https://www.89ji.com/law/6/

参考URL:https://www.yakujihou.com/knowledge/yakkihou/

参考URL:https://service.aainc.co.jp/product/letro/article/pmd-act

参考URL:https://www.komon-lawyer.jp/yakkihou/

薬機法の概要

薬機法とは、医薬品や医薬部外品、化粧品などの有効性・安全性を証明するため商品の製造・販売・流通・広告などについて、細かく定められたルールです。

正式名称を「医薬品・医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といい、医薬品だけでなく化粧品も広く対象範囲となる点がポイントだといえます。

薬機法の目的

薬機法が制定された目的は、以下の3点にまとめられます。

  • 医療品・医療機器等の実用化を促進するにあたって、安全対策を強化する
  • 添付される文書には最新の知見が反映されることが求められる
  • 添付文書の抜本的な見直しで、医薬品・医療品機器等の安全対策を強化

薬害肝炎などの健康被害が検証されていくなかで、注意書きに副作用や最新の知見に基づいたデータの記載についての規則がない点が、問題視されている状況がありました。

薬機法の制定によって、知見データが掲載された書類の添付が法整備され医薬品や化粧品などの品質が強化されることが見込まれているのです。

参考URL:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000066816.pdf

薬機法の規制対象

薬機法の規制対象には、下記のような対象が挙げられます。

  • 医薬品
  • 医薬外部品
  • 化粧品
  • 医療機器
  • 再生医療等製品
  • 誇大広告

ここでは、項目ごとに条文に書かれている内容と特徴についてみていきましょう。

医薬品

薬機法の条文には、医薬品の定義は下記のように記載されています。

  • 日本薬局方に収められているもの
  • 人又は動物の疾病の診断、治療もしくは予防に使用されるのが目的とされているのであって、機械器具等でないもの
  • 人又は動物の身体の構造または機能に影響を及ぼすことを目的とされているものであって、機械器具等ではないもの

出典:薬機法:第一章 総則 第二条

医薬品とは、人や動物の診断、治療、もしくは予防に使用される機器・機械機器以外のものをさします。

医師の処方箋で処方される風邪薬や頭痛薬など、治療に使われる医薬品に加えて病気の予防や診断に使われる医薬品も含まれることを覚えておきましょう。

医薬外部品

薬機法の条文には、医薬外部品の定義は下記のように記載されています。

この法律で「医薬部外品」とは、次に掲げる物であつて人体に対する作用が緩和的なものをいう。

1.次のイからハまでに掲げる目的のために使用される物(これらの使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの

  •  吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止
  •  あせも、ただれ等の防止
  •  脱毛の防止、育毛又は除毛

2.人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物(この使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの

3.前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物(前二号に掲げる物を除く。)のうち、厚生労働大臣が指定するもの

出典:薬機法:第一章 総則 第二条 第二項

医薬部外品とは吐き気や不快感、体臭、口臭、脱毛の防止などに使われる作用が軽微なもので、どのような使い方をしても人体に強い作用をもたらしません。

たとえば育毛剤や殺虫剤、消毒液などの商品が医薬部外品に当たります。

化粧品

薬機法の条文には、化粧品の定義は下記のように記載されています。

“この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。”

引用:薬機法:第一章 総則 第二条 第三項

化粧品は人の身体を清潔にし、美化して魅力を増すための商品のことです。女性が使用する口紅やファンデーション、口紅だけでなく、シャンプーやリンス、制汗剤などの商品も「化粧品」のカテゴリーに該当します。

医療機器

薬機法の条文には、医療機関の定義は下記のように掲載されています。

“この法律で「医療機器」とは、人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であって、政令で定めるものをいう。”

引用:薬機法:第一章 総則 第二条 第四項

人や動物の診断、治療・予防に使われている機械器具等が医療機器に当たります。

医療機器ではない場合は医薬品となります。

再生医療等製品

薬機法の条文には、再生医療等製品の定義は下記のように記載されています。

 ”この法律で「再生医療等製品」とは、次に掲げる物(医薬部外品及び化粧品を除く。)であって、政令で定めるものをいう。

 次に掲げる医療又は獣医療に使用されることが目的とされている物のうち、人又は動物の細胞に培養その他の加工を施したもの

 人又は動物の身体の構造又は機能の再建、修復又は形成

 人又は動物の疾病の治療又は予防

 人又は動物の疾病の治療に使用されることが目的とされている物のうち、人又は動物の細胞に導入され、これらの体内で発現する遺伝子を含有させたもの”

引用:薬機法:第一章 総則 第二条 第九項

これらの商品に関しては、薬機法の法律によって品質をも担保されているのです。

誇大広告

誇大広告のカテゴリーは、上記したカテゴリーの商品の広告に関する規制です。下記の内容を含んだ広告は、誇大広告として掲載が禁止されています。

  • 虚偽、または誇大広告を掲載してはならない(第六十六条)
  • がんその他の特定疾病用の医薬品、再生医療等製品の広告制限(第六十七条)
  • 承認前の医療品、再生医療等製品の広告禁止(第六十八条)

引用:薬機法:第十章 第六十六〜六十八章

2021年8月に改訂された改正薬機法に基づき、第六十六条に違反した場合には違反対象商品の売上の4.5%相当にあたる課徴金が課されるリスクがあります。

景品表示法とは?

景品表示法とは、正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」と呼ばれる商品やサービスの品質・内容・価格等の虚偽を規制し、景品の最高金額を制限する法律です。

安心して商品本体の価値を見極めながら、合理的に商品を購入できる環境づくりを消費者に提案できる側面が大きい法律だといえます。

デジタル商品を販売する立場である企業は、消費者に手にとってもらうために広告文やおまけなどを考える際に景品表示法について念頭においたマーケティングが必要です。

参考URL:https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/#introduction

参考URL:https://www.jfftc.org/rule_keihyo/index.html

参考URL:https://kigyobengo.com/media/useful/2122.html

参考URL:https://corporate.vbest.jp/columns/2931/

誇大広告に関する禁止する項目

誇大広告に関する禁止項目には、下記の3つの規制が含まれます。

  • 優良誤認表示の禁止
  • 有利誤認表示の禁止
  • その他の誤認させる恐れのある表現の禁止

優良誤認表示とは、実際の商品よりも過剰に優良であるかのように宣伝したり他の商品と比較して過剰に優良であるかのように誇大広告を出したりすることです。

有利誤認表示とは、価格や商品の量、アフターサービスなどについて実際よりも著しく優良であるかのように宣伝したり、他の商品と比較して著しく優良であるかのように誇大広告を出したりすることです。

そのほかにも、下記の6つの誇大広告の表現が挙げられます。

  • 無果汁の清涼飲料水等の表示
  • 商品の原産国に関する表示
  • 消費者信用の融資信用に関する表示
  • 不動産のおとり広告に関する表示
  • おとり広告に関する表示
  • 有料老人ホームに関する不当な表示

これらの誇大広告について意識しながら、項目について考えていきましょう。

参考URL:https://kigyobengo.com/media/useful/2122.html#i-4

参考URL:https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/premium_regulation/

過大な景品提供を禁止する項目

過大な景品提供を禁止する項目では、過剰な景品等の付属によって消費者にPRすることが禁止されています。

過大景品の流れが広がると景品の充実化に力を入れてしまうあまり、商品自体のクオリティが担保されないといったリスクもあります。

このような過剰な景品競争に歯止めをかけるべく、景品の種類やかけられる金額を制限することで、景品による過剰な集客効果を制限する目的があるようです。

景品表示法に記載されている景品の定義は、顧客を勧誘する手段で、取引に付随し、経済上の利益をもたらすものだとされています。

具体的には、下記のようなものを景品と呼ぶことが多いです。

  • 物品及び土地、建物その他の工作物
  • 金銭、金券、預金証書、株券など
  • 招待券や優待券など
  • 便益、労務その他の役務

なかでもくじ・懸賞等の偶然性、特定の優劣度によって景品を提供することを「懸賞」と呼び、共同懸賞以外は一般懸賞と呼ばれています。

一般懸賞の景品の限度額は下記の通り。

【一般懸賞の景品の限度額】

懸賞による取引金額景品限度額(最高額)景品限度額(総額)
5,000円未満取引金額の20倍まで懸賞の売上総額の2%
5,000円以上10万円同上

複数の事業者が共同で参加するのが共同懸賞で、限度額は以下の通りです。

【共同懸賞の景品の限度額】

景品限度額(最高額)景品限度額(総額)
取引金額に関わらず30万円まで懸賞の売上総額の2%

懸賞なしに提供される景品類は「総付景品(ベタ付け景品)」と呼ばれており、商品・サービスの利用者にもれなくついてくるお金や商品のことをさします。

【総付景品の限度額】

取引金額景品類の最高額
1,000円未満200円
1,000円以上取引金額の2/10

このように景品の性質や販売価格によって、景品にかけられる費用は異なります。

また特定の業種については、個別に限度額が設定されている場合も。

具体例を挙げると、以下の業種には個別に制限が設けられています。

  • 新聞業
  • 雑誌業
  • 不動産業
  • 医療用医薬品業

詳しい情報については、消費者庁の公式ホームページより、業種別景品告示の欄を参考にしてみてください。

またWebサイトや新聞、雑誌などで告知し、Webページやハガキ、メールなどで申し込める懸賞は「オープン懸賞」と呼ばれ、現在は金額の上限が撤廃されている模様です。

参考URL:https://corporate.vbest.jp/columns/2931/

違反した時の流れ

景品表示法に違反している場合、消費者庁は資料の収集・事業者への事情聴取をします。

調査の結果、違反行為が認められた場合は、事業者に「措置命令」が下されます。

措置命令が下されると「消費者に違反について知らせる」「再発防止策を講じる」「違反行為を将来繰り返さない」などの措置が命じられます。

また再発防止のために違反した事業者には弁明の機会を与えた上で、課徴金の納付が求められることになっています。

課徴金額は売上の3%を金額に設定されているのが特徴です。

ただし違反した事業者の弁明が認められた場合や、課徴金額が150万円未満の場合は課徴金は課されません。

参考URL:https://corporate.vbest.jp/columns/2931/

海外デジタルマーケティングをする際には薬事法と景品表示法に注意!

薬事法は医薬品や医薬部外品、化粧品などの安全性を担保し、誇大広告から消費者を守る法律です。

また景品表示法は商品・サービスの誇大広告や過度な景品競争を抑え、商品自体の品質を担保するための法律だといえます。

これらの法律によって規制されている広告内容や景品に該当しないようなマーケティング戦略を展開して、ペナルティの心配をすることなく、マーケティングを実施しましょう。

この記事を書いた人

野口慎平

GDX 事業責任者 兼 UDX株式会社ゼネラルマネージャー。
新卒で大手外資系総合コンサルティングファームにビジネス&テクノロジーコンサルタント職として就職。2016年よりプルーヴ株式会社に法人営業職として入社。慶應義塾大学理工学部・同大学院 理工学研究科電子工学修了。
海外SEOとマーケティングオートメーションを軸としたデジタルマーケティングを得意とする。
Salesforce Pardot甲子園2021優勝

取得資格:
ITストラテジスト、応用情報技術者、IPAプロジェクトマネージャ、情報処理安全確保支援士、上級ウェブ解析士、IoTコーディネーター取得
Salesforce認定アドミニストレーター