2025年現在、日本企業のグローバル展開はますます活発化しています。製品やサービスの質の高さはすでに世界で広く認められているものの、現地市場でのブランド認知の獲得は、依然として大きな課題の一つです。その中で注目されているのが、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用したマーケティング戦略です。
特に、現代の消費者は購買意思決定の前段階でSNSを活用する傾向が強く、各種調査でも「SNS上の情報がブランド印象や信頼度に与える影響は極めて大きい」とされています。つまり、海外市場での認知向上には、ターゲット地域・年齢層に合わせたSNS戦略が不可欠なのです。
とはいえ、Instagram、Facebook、TikTok、YouTubeといった主要SNSは、それぞれに機能的特徴・ユーザー層・アルゴリズムが異なり、単に同じコンテンツを投稿するだけでは成果を得ることは困難です。むしろ、それぞれの特性を理解した上で、最適なコンテンツフォーマット、投稿頻度、広告運用を設計することが成功の鍵となります。
本記事では、2025年最新版の統計データをもとに、各SNSプラットフォームの特徴とその活用戦略を詳しく解説します。さらに、日本企業による海外市場での成功事例や、効果測定に不可欠なKPIの設計方法にも触れ、SNSを通じてどのようにブランド認知を高めていけるのかを体系的にお伝えします。
目次
各プラットフォームの特徴と統計データ

SNSマーケティングを成功に導く第一歩は、各プラットフォームの機能的特徴とユーザーの利用傾向を正確に理解することです。ここでは、2025年時点における代表的な4つのSNS(Instagram、Facebook、TikTok、YouTube)について、信頼できる統計データとともにその特性を紹介します。
Instagram:視覚重視のブランド調査ツール
Instagramは、写真や動画といったビジュアルコンテンツに特化したプラットフォームであり、特に「ブランドリサーチ」において非常に高い利用率を誇ります。2025年4月時点の調査では、世界の消費者の62%がInstagramをブランド調査の手段として利用していると回答しており、これは全SNSの中で最も高い数字です。
その特性から、プロダクトのデザイン性や企業の世界観、製造背景といった視覚的訴求が強い要素の発信に向いており、ブランドの第一印象形成に大きく寄与します。
Facebook:最大規模のリーチを誇る老舗SNS
Facebookは、全世界で約29.6億人の月間アクティブユーザー(MAU)を抱える、SNSの中でも圧倒的な規模を誇るプラットフォームです。幅広い年齢層と多国籍ユーザーが存在するため、グローバル展開を視野に入れる日本企業にとっては、ターゲット層が非常に広いのが強みです。
また、SNS広告全体のうち約59%がFacebook広告に投下されている点からも、企業にとって「広告の効果が期待できる媒体」として認識されていることが分かります。
TikTok:若年層のブランド認知を加速する短尺動画の力
TikTokは15~30秒の短尺動画を中心としたコンテンツが主流で、ユーザーのエンゲージメント率やブランド発見率が非常に高いのが特徴です。2025年4月の調査では、51%のユーザーがTikTokでブランド調査を行うと回答しており、その影響力は年々拡大しています。
特に若年層に強く、エンタメ性と情報性を融合させたコンテンツが好まれる傾向があるため、斬新でキャッチーな動画によるブランディングが効果的です。
YouTube:深い理解と信頼醸成を実現する動画プラットフォーム
YouTubeは動画共有サービスとしてスタートしましたが、現在では月間24.9億人以上のアクティブユーザーを抱え、SNSとしても強力な影響力を持っています。
長尺動画を通じて、製品の使用方法、企業理念、導入事例などを丁寧に伝えることができるため、ブランドへの理解や信頼の醸成に最適です。特に、検討フェーズに入った顧客に対して強い影響を与える傾向があり、コンバージョンを後押しする役割も担います。
Instagram:ビジュアルストーリーテリングとUGC活用

Instagramは、視覚的インパクトを活かしてブランドの世界観を構築するのに適したSNSです。グローバル市場では特に、プロダクトの美しさやストーリー性を前面に出した投稿がユーザーの共感とエンゲージメントを高める鍵となります。本節では、Instagramを活用した効果的なSNS運用戦略について解説します。
世界が注目するビジュアルブランドの拠点
2025年時点で、Instagramは世界の消費者の62%がブランドリサーチに活用している最重要プラットフォームとされています。視覚中心の構造は、第一印象の形成や製品・サービスの「体験イメージ」の訴求に非常に効果的です。特に、美意識やクラフトマンシップを重視する日本ブランドにとって、その価値を直感的に伝えるための重要な舞台です。
ブランディング強化と共感の仕組み
ブランドアカウントの運用では、統一感あるビジュアルトーンを保つことが信頼性の構築につながります。カラーコードやフィルターを統一し、プロダクトや企業文化、制作現場の様子などを物語性のある投稿で届けることで、フォロワーとの関係性が深まります。特に「Carousel(複数枚投稿)」は、ストーリー性のあるチュートリアルや製造過程の紹介に適しており、保存率やエンゲージメント率を高める手段として有効です。
UGC(User-Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)の活用も重要です。海外マイクロインフルエンサー(1万~10万フォロワー)と提携し、製品体験を投稿してもらうことで、現地ユーザーにとっての“等身大の信頼感”を創出できます。さらに、フォロワーの投稿をリポストすることで参加型キャンペーンを展開し、ブランドのソーシャルプレゼンスを強化できます。
また、投稿には10〜15個程度のハッシュタグを設定するのが効果的です。「#MadeInJapan」「#Craftsmanship」「#SustainableDesign」といったグローバル共通タグに加え、ターゲット国の言語によるハッシュタグを組み合わせることで、検索性と発見性が大幅に向上します。
アルゴリズムと広告を味方につける運用術
Instagramでは、アルゴリズムの仕様上、エンゲージメント率(いいね・保存・コメント)が高い投稿ほど多くのユーザーにリーチされやすくなります。そのため、投稿のタイミングやフォロワーの活動時間帯を分析し、最大限のリーチを狙う運用が求められます。
「ストーリーズ」は24時間限定の速報性あるフォーマットで、新商品やイベントの告知に有効です。また、「リール(Reels)」はアルゴリズムの優遇対象となっており、ショートムービーでの認知拡散に非常に強い効果を発揮します。トレンド音源や人気フィルターを活用することで、自然な形でエンゲージメントを高めることが可能です。
広告面では、「フィード広告」でブランドイメージを静止画やカルーセルで訴求しつつ、「ストーリーズ広告」で画面全体を使って印象的な訴求ができます。ターゲティング設定は、興味関心(例:日本文化、ハンドメイド)と地理(主要都市)を掛け合わせることで、狙った層への効率的なアプローチが可能です。
ビジュアルと参加型体験で構築するブランド信頼
Instagramは、ブランドのビジュアル的魅力を直感的に伝えるだけでなく、ユーザーと共に物語を紡ぐ場でもあります。UGCやマイクロインフルエンサーとの連携を通じて「共感されるブランド体験」を提供しつつ、定量的な分析と広告戦略を組み合わせることで、より強固なブランド認知の確立が可能です。
Facebook:コミュニティ運営と広告最適化

Facebookは、規模・年齢層・地域の多様性において他のSNSを凌駕しており、日本企業が海外でブランドの信頼を構築し、ロイヤリティを高めるには極めて有効なプラットフォームです。特に現地に根差したコミュニティ形成と、高度に最適化された広告戦略が成果を左右します。
最大級の接触面を活かした多層的展開
2025年の統計によると、Facebookの月間アクティブユーザーは約29.6億人に達し、あらゆるSNSの中で最大規模を誇ります。特に、30代以上の購買決定権を持つ層が多く利用しており、日本ブランドが「信頼」「実績」「社会性」といった価値観を伝えるのに適しています。
また、Facebookは「情報の蓄積性」「投稿の検索性」が高く、長期的なブランド構築に貢献する点も見逃せません。
ローカル密着と多様な投稿形式
Facebookを活用する日本企業の多くが効果を上げているのが「地域別コミュニティの運営」です。例えば、ブランドのグローバルページに加えて国別・言語別のグループを設置し、現地ユーザーとのQ&Aやライブ配信を現地語で行うことで、エンゲージメントを高めています。これにより、「顔が見えるブランド」としての信頼性が向上します。
投稿形式も多様で、画像+テキストによる製品紹介、導入事例、企業の裏側に迫るストーリーを継続的に発信することで、ブランドの“人間味”を伝えられます。さらに、動画コンテンツでは、商品デモや会社紹介ツアー、従業員インタビューなどを組み合わせることで、視覚的かつ感情的な訴求が可能です。公式ブログ記事へのリンク投稿も、サイト流入数の増加につながります。
Facebook Liveの活用も効果的です。新製品発表やイベントをライブ配信することで、リアルタイムでの双方向コミュニケーションが可能となり、コメントによる質問・回答を通じてブランドへの関心と信頼を高めることができます。
広告の精緻化とA/Bテストによる最適化
Facebook広告は、精緻なターゲティング機能を持ち、認知からコンバージョンまで多段階にわたるマーケティングが可能です。例えば、初期フェーズでは「認知キャンペーン」で幅広い層にCPM(コスト・パー・ミル)重視の広告を展開し、関心層を可視化。次に、「リード獲得キャンペーン」でサンプル配布やホワイトペーパーの提供によって見込み顧客情報を収集します。
また、「リターゲティング広告」により、公式サイトの訪問者や動画視聴者を絞り込み、再訴求することで広告費対効果(ROAS)を高めることができます。
A/BテストもFacebook広告の重要な手法です。広告のクリエイティブ(画像、見出し、CTAボタン)を少しずつ変更した複数バージョンを同時に配信し、反応が最も良い組み合わせを検証することで、無駄な出稿を減らし、成果の出る広告に集中することが可能です。
信頼と持続的関係性を育む“長寿型”SNS戦略
Facebookは、一時的なバズよりも、長期にわたる信頼構築とコミュニティとの継続的な対話に優れています。特に現地語による細やかな対応、ライブ配信によるリアルタイム性、広告とA/Bテストによる高精度な運用がブランド認知とロイヤルティの向上に貢献します。
TikTok:ショート動画による認知拡散

TikTokは、エンタメと情報性が融合した短尺動画コンテンツによって、ブランドの世界的認知を爆発的に拡散できる新興SNSとして、今や欠かせない存在です。特に若年層をターゲットとする日本企業にとっては、TikTokらしい表現を取り入れたコンテンツ設計がブランド浸透の鍵を握ります。
認知フェーズでの突破力を持つSNS
2025年4月の時点で、TikTokユーザーの約51%がブランドのリサーチにこのプラットフォームを利用していると回答しており、その存在感は年々増しています。特に15~30秒の短尺フォーマットは、視覚と音声による直感的な印象を与えやすく、第一印象で「気になるブランド」に引き上げる効果が高いとされています。
また、TikTokは他のSNSと比べてもアルゴリズムによる拡散力が非常に強く、フォロワー数が少なくても「おすすめ」フィードに掲載されれば一気に認知度を高めることが可能です。
トレンドと“らしさ”の融合が鍵
TikTokでは、“ブランドらしさ”と“TikTokらしさ”を融合させたクリエイティブ設計が重要です。たとえば、製品の使い方をテンポ良く15〜30秒で紹介する「ビフォー・アフター動画」や、視覚的に印象に残る変化を見せる「チャレンジ形式」の投稿が高いエンゲージメントを記録しています。
トレンドの音源やハッシュタグを毎週リサーチし、自社の製品やメッセージに落とし込むことも欠かせません。TikTokのアルゴリズムは“トレンド適応度”を評価軸の一つとしており、流行中のBGM、効果的なフィルターやエフェクトを活用することで、表示回数(インプレッション)を大きく伸ばすことができます。
インフルエンサーとのコラボレーションも強力な施策です。ターゲット層にマッチするクリエイターに製品を体験してもらい、そのリアクションを公式アカウントや拡散パートナー経由で広げることで、説得力のあるブランド体験を提供できます。
広告運用と分析でさらに効率化
TikTok広告にはいくつかのフォーマットがありますが、特に「In-Feed Ads(インフィード広告)」は、通常の動画と同じ形式で自然にユーザーのフィードに表示されるため、広告色を抑えながら訴求できる利点があります。
他にも、アプリ起動時に全画面表示される「Brand Takeover」や、オリジナルのARフィルターなどを使ってUGCを促す「Branded Effects」も認知フェーズに効果的です。特に若年層は、インタラクティブな体験に高い関心を示すため、ゲーム性や遊び心のある広告が成功につながります。
効果測定の面では、再生数、完視聴率、いいね・コメント・シェア数、フォロワー増加数といった指標をもとに、TikTok Analyticsでトラッキングします。中でも「視聴完了率」の高い動画は、アルゴリズム上でも優遇されやすく、次回コンテンツ設計の参考になります。
拡散力と共感性を両立した戦略設計を
TikTokは、他のSNSにはない“爆発的な認知拡散”という武器を持つ一方で、形式に対する適応と工夫が必要なプラットフォームです。若年層が共感しやすいクリエイティブ設計、トレンドとの高い親和性、そしてエンタメ性を忘れずにブランドメッセージを伝えることが、成果を上げるポイントとなります。
YouTube:長尺動画で検討フェーズを誘導

YouTubeは、世界最大級の動画プラットフォームでありながら、マーケティングツールとしても非常に強力な影響力を持っています。ブランドの理解促進や信頼形成に長けており、認知の次フェーズである「比較・検討」段階への誘導において他のSNSとは一線を画します。
理解と納得を生むプラットフォーム
2025年初頭の調査では、YouTubeの月間アクティブユーザーは約24.9億人にのぼり、全SNSの中でもトップクラスの規模を誇ります。特に、製品やサービスに対して深い関心を抱いたユーザーが「さらに詳しく知る」ために訪れる傾向が強く、コンバージョン手前の意思決定に直結するコンテンツ発信が可能です。
企業の背景、開発ストーリー、導入事例、操作方法など、言葉と映像で丁寧に伝えることができるYouTubeは、日本企業が持つ“職人気質”や“製品へのこだわり”をグローバルに伝えるのに理想的な場といえるでしょう。
字幕とシリーズ設計による多言語展開
YouTubeでは、3〜10分の中長尺動画が視聴者にとって最も情報価値が高く、かつエンゲージメントを得やすい傾向があります。製品デモンストレーションや導入事例紹介、ドキュメンタリー形式の企業ストーリーをシリーズとして定期的に投稿することで、ユーザーの継続的関心を維持することができます。
さらに、字幕(英語、中国語、スペイン語など)を追加することで、多国籍な視聴者にも情報を正確に伝えることが可能になります。これは日本企業にとって、グローバルマーケット全体に対して“誤解なく魅力を伝える”上で極めて重要なポイントです。
プレイリスト機能も有効です。製品カテゴリー別、業界別、ユーザーQ&A別などに整理した再生リストを設けることで、視聴者が自分のニーズに合ったコンテンツへスムーズにアクセスできる導線が作れます。
SEO最適化と広告連携による効果拡張
YouTubeはGoogle傘下であるため、検索エンジン対策(SEO)との親和性も非常に高いのが特長です。動画タイトルや説明文、タグには自然な形でキーワードを盛り込み、「ブランド名」「製品名」「用途」などの検索意図を先読みした設計が求められます。
クリック率(CTR)に直結するサムネイルの設計も重要です。「顔+製品+キャッチコピー」の組み合わせや、ブランドカラーを使ったデザインによって、視認性とクリック誘導力が高まります。
YouTube広告も見逃せません。スキップ可能な「TrueView インストリーム広告」では、冒頭5秒で興味を引く演出がカギとなり、視聴者の記憶に残る設計が求められます。短尺で印象を残す「バンパー広告」(6秒)と組み合わせることで、認知と記憶の両方に働きかけることが可能です。
ターゲティングも細かく設定でき、キーワードやトピック、カスタムインテントオーディエンスを用いて、購買意欲の高い層へピンポイントでリーチする施策が構築できます。
信頼構築と転換率向上を担う“検討特化型”SNS
YouTubeは、ブランドに対する理解と信頼の土台を築くことに優れ、購買への最終的な後押しを担う“検討フェーズ特化型SNS”といえます。字幕とSEOを活かした多言語対応、長尺コンテンツの継続配信、ターゲティング広告の併用によって、認知から購入までの導線を一貫して設計できる点が最大の魅力です。
SNS戦略を成功へ導く第一歩とは?
2025年のSNS環境は、もはや単なる“拡散ツール”ではなく、ブランド理解と信頼の構築、そして購買への導線を担う重要なマーケティング基盤となっています。Instagramのビジュアル訴求、Facebookのコミュニティ形成、TikTokの短尺拡散力、YouTubeの深い理解促進――それぞれの特性を活かしたSNS戦略は、海外市場に挑戦する日本企業にとって極めて有効です。
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