中東地域はオイルマネーをはじめとする資源豊かな国が複数存在します。その中でもサウジアラビアは巨大な産油国であるだけでなく、イスラム教徒の聖地を抱えていることもあり、文化的にも重要視されているアラビア半島の大国です。
今回は、そんなサウジアラビアにおけるデジタルマーケティングのトレンドについて、最新の状況をお伝えします。
目次
サウジアラビアの概要
サウジアラビアはアラビア半島最大の面積を誇る国家で、国土は日本の5.7倍にあたる215万平方キロメートルにおよびます。人口は3,427万人で、アラブ人が大多数を占めている王国です。
日本よりも総人口は少ないものの、2022年は前年比で1.5%の増加、人数に換算して51万6,000人ものサウジアラビア人が新たに増えています。サウジアラビアにおける年齢の中央値は32.4歳で、日本よりも若者の多い国であることがわかります。そのため、労働人口と消費者の数が豊富で、経済的な成長力の高い国であると言えるでしょう。
宗教についてはイスラム教がほぼ100%を占めており、国内に同宗教の聖地とされるメッカがあります。世界中のイスラム教徒が巡礼のため来訪し、巡礼者向けの観光業も盛んです。アラブ人の多いサウジアラビアにおける公用語は、もちろんアラビア語です。
サウジアラビアは都市化が非常に進んでいる国でもあり、国民の84.7%は都市部に住んでいます。農村部に定住しているのはわずか15.3%で、これは砂漠化が進んだ地域であり、第一次産業が盛んでは無いことに起因すると見られます。
また、一人当たりのGDPは20,088ドルで、国全体のGDPは7,033億ドルに達します。産業の多くを石油事業に依存しており、近年の石油需要の減少に伴い、新しい産業の創出に力を入れている点も特徴です。2020年のGDP成長率は-4.1%を記録していますが、これは新型コロナウイルスの感染拡大による影響が大きいものと見られ、時期に回復すると見込まれます。
直近5年の数値は以下の通りです。
2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年※ | |
各目GDP(10億ドル) | 816.58 | 803.62 | 703.37 | 833.54 | 1,040.17 |
各目GDP(サウジアラビア・リヤル) | 3,062.17 | 3,013.56 | 2,637.63 | 3,125.78 | 3,900.62 |
一人当たりの各目GDP(ドル) | 24,438.46 | 23,485.08 | 20,088.52 | 23,507.28 | 28,759.28 |
一人当たりの各目GDP(リヤル) | 91,644.23 | 88,069.03 | 75,331.96 | 88,152.28 | 107,847.28 |
経済成長率(%) | 2.50 | 0.30 | -4.10 | 3.20 | 7.60 |
物価上昇率(%) | 2.46 | -2.09 | 3.45 | 3.06 | 2.51 |
失業率(%) | 6.00 | 5.70 | 7.40 | 6.65 | 不明 |
※1 2022年の数値はIMFによる2022年4月時点の推計
出展:IMF – World Economic Outlook Databases(2022年4月版)
サウジアラビアのデジタルマーケティング概況
続いて、サウジアラビアにおけるデジタル事情について見ていきましょう。同国ではハイテク産業への注目度も高まっていますが、インターネットユーザーの数は3,484万人と、ほぼ全ての国民にインターネットが行き渡っていると言えます。
普及率を割合で見ても、人口の97.9%に達しており、インターネットの影響力が高い国であるとも言えるでしょう。
インターネットユーザーの数は現在も増加傾向にあり、2022年には前年比1.5%の増加、人数にして50万5,000人ものユーザー増加が見られました。
また、モバイル端末については4,103万台もの数が国内で利用されており、最低でも国民一人につき1台以上が普及していることになります。1日の平均インターネット利用時間は8時間5分と、多くの時間をネット空間で過ごしている様子も明らかになりました。ネットの利用時間は前年比で20分増加しており、Webサービスの拡充も進んでいることが推測できます。
対象SNS | 1ヵ月に利用する割合 |
---|---|
87.4% | |
78.1% | |
71.9% | |
Snapchat | 68.8% |
Tiktok | 63.6% |
63.4% | |
Telegram | 59.5% |
Facebook Messenger | 43.3% |
26.4% | |
24.5% | |
IMessage | 22.5% |
Skype | 14.2% |
LINE | 14.0% |
Discord | 6.2% |
6.0% |
サウジアラビアにおけるSNSユーザー数

続いて、サウジアラビアにおけるSNSユーザーの動向について見ていきましょう。サウジアラビアのSNSユーザー数は2,930万人に到達しており、総人口の82.3%に達しています。おおむね全ての国民がSNSを利用していると言え、その影響力は同国において巨大であると言えるでしょう。
また、SNSユーザーの数は増加傾向にあり、2022年は前年比で5.4%の増加、人数にして150万人の増加が見られました。また、SNSユーザーの男女比はいずれの主要サービスも60〜70%が男性を占め、女性ユーザーは少数であることがわかります。サウジアラビアにおける男女比は4割程度が女性であることを踏まえると、ある程度人口比が反映されたユーザー層であると言えそうです。
対象SNS | SNS利用ユーザー数 |
---|---|
1,140万人 | |
Youtube | 2,930万人 |
1,545万人 | |
TikTok | 2,237万人 |
Facebook Messenger | 770万人 |
610万人 | |
SnapChat | 2,020万人 |
1,410万人 |
Facebookのユーザー数
世界で最も有名なSNSの一つであるFacebookのサウジアラビアにおけるユーザー数は1,140万人にのぼります。Facebook広告のリーチ数は総人口に対して、約32.0%、インターネットユーザーに限定すると、40.7%となります。
インターネットが広く国内に普及していることを踏まえると、十分高い影響力を持った媒体であると言えそうです。
Youtubeのユーザー数
世界最大の動画共有プラットフォームであるYoutubeは、サウジアラビアにおいて2,930万人のユーザーを獲得しています。この数字は同国においては圧倒的で、総人口の82.3%、インターネットユーザーに限定すると、84.1%の広告リーチ数を誇ります。
全年齢をユーザーとして獲得しているYoutubeの広告は、もはやテレビCMと同等の価値があると言っても過言ではないでしょう。
Instagramのユーザー数
写真や動画を気軽に共有できることで有名なInstagramのユーザー数は、1,545万人に達しています。Instagram広告のリーチ数は、総人口比でみると43.4%、インターネットユーザーに限定すると、44.3%に達しています。インターネットを利用している人のおおよそ2人に1人はInstagram広告を見ているという試算になります。
欧米圏を中心に、Instagramは女性ユーザーが多い傾向にあるSNSでもありますが、サウジアラビアでは女性ユーザーは41.6%と、人口比や他のSNSと変わらずやや男性ユーザーに比べて少ない点も特徴です。
TikTokのユーザー数
ByteDanceが運営する中国発のSNSとして世界中で人気のTikTokは、サウジアラビアにおいておよそ2,237万人ものユーザーを獲得しています。広告のリーチ数は同国の18歳以上の87.9%に及び、年齢を問わないインターネットユーザーに絞ると、その比率は64.2%となります。
また、多くの国と違って、サウジアラビアにおいての男性ユーザーに圧倒的に人気のあるサービスです。具体的にはユーザー全体の60.9%が男性、39.1%が女性と若干男性の割合が1.5倍多くなっています。
Facebook Messengerのユーザー数
Metaの広告リソースで公開されているデータによると、Facebookのメッセージ機能であるFacebook Messengerは、2022年時点で770万人のユーザーを抱えています。Facebook Messengerの広告リーチ数は総人口比で21.6%、インターネットユーザーに限定すると、27.5%になります。
LinkedInのユーザー数
ビジネスパーソン向けSNSとしてユーザーを増やしているLinkedInは、サウジアラビア国内において610万人のユーザーを抱えています。LinkedIn広告のリーチ数は総人口比で17.1%、インターネットに限定しても17.5%程度にとどまります。
他のSNSと比べると、やや心もとない数字ではありますが、これはLinkedInというSNSの特性上当たり前とも言えるでしょう。
SnapChatのユーザー数
欧米を中心に根強い人気を誇るSnapChatのサウジアラビアにおけるユーザー数は、2,020万人と非常に多くの人口を確保しているのが特徴です。
SnapChat広告のリーチ数は、総人口比で56.8%、インターネットユーザーに限定すると58.0%と、高い影響力を有していることがわかります。
また、サウジアラビアでは珍しく、男女のユーザー比率がどちらも49.6%と、同数であるという点も特徴です。同国内では比較的女性ユーザーに支持されているサービスと言えます。
Twitterのユーザー数
日本では多大な人気を誇るTwitterです、サウジアラビアにおいてもユーザー数は1,410万人と多く、決して影響力は大きいことがわかります。サウジアラビアはTwitterの大きい市場の一つであることとも言えます。サウジアラビア人がTwitterを通して、国民の思想や要望を言い出すところであります。
Twitter広告のリーチ数は、総人口比で39.6%、インターネットユーザー全体で40.5%です。
検索エンジンシェア率
サウジアラビアにおいて最も人気のある検索エンジンは、他の国々同様Googleです。同国においてGoogleのシェアは96.6%に達しており、他の追随を許さないのが現状です。次点でbingがランクインしていますが、それでも割合は2.06%に留まっているため、Googleのシェアが崩れることはないでしょう。
検索エンジン | シェア率 | 前年比 |
---|---|---|
96.6% | -1.6% | |
BING | 2.06% | +60.9% |
BAIDU | 0.01% | – |
YAHOO! | 0.36% | +16.1% |
YANDEX | 0.21% | +50% |
DUCKDUCKGO | 0.09% | +28.6% |
ECOSIA | 0.01% | 不明 |
その他 | 0.66% | +1.55% |
サウジアラビアの検索言語
サウジアラビアは公用語がアラビア語の国ということもあり、検索言語の大半もアラビア語です。同国では外国語の翻訳もある程度進んでいるため、知名度の高いキーワードは全てアラビア語で検索されるケースが一般的です。
新しい商品・ブランドを何で最初に知るか
新商品やブランドの認知拡大は、SNSを通じて行われています。調査によると、80%以上の人々がSNS経由で新商品の情報を知ると回答しており、その影響力の高さがうかがえます。
検索エンジン | 31.3% |
ブランド・商品のウェブサイト | 27.5% |
ソーシャルメディア広告 | 26.6% |
口コミ | 26.2% |
ソーシャルメディアコメント | 25.0% |
TV広告 | 22.4% |
ウェブサイトの広告 | 21.5% |
通販サイト | 20.3% |
検索結果に応じたおススメシステム | 20.1% |
有名人・著名人の推薦 | 19.6% |
商品比較サイト | 19.2% |
モバイルアプリ内の広告 | 18.4% |
TV番組・映画 | 18.4% |
ブランドのソーシャルメディア投稿 | 18.2% |
商品サンプル | 18.1% |
商品・ブランドを何を通じて調べるか
新商品についての情報を深掘りする際も、SNSやWebサービスが積極的に活用されています。SNSはもちろんのこと、質問フォーラムや掲示板といったサービス経由で、より深く商品情報をリサーチしています。
SNS | 58.0% |
検索エンジン | 55.1% |
モバイルアプリ | 34.9% |
価格比較サイト | 28.5% |
ブランドウェブサイト | 28.1% |
消費者レビュー | 24.9% |
クーポンサイト | 24.3% |
ビデオサイト | 20.1% |
Q&Aサイト | 18.1% |
個人ブログ | 16.8% |
ブランド・商品のブログ | 16.6% |
メッセージ&ライブチャット | 14.1% |
専門家のレビューサイト | 11.1% |
フォーラム・メッセージボード | 10.0% |
オンラインピンボード | 9.3% |
デバイスの比率(PC・スマートフォン・タブレット)
サウジアラビアにおいてインターネットに利用されているデバイスは、92.3%がスマートフォンです。次点でPCの57.1%、タブレットの23.5%が続いていますが、スマホを併用することが前提と考えて間違い無いでしょう。
まとめ
サウジアラビアではインターネットが広く普及しており、その影響力も大きいと言えます。SNS利用者の数も多く、毎日多くの時間をネットとSNSに費やしています。
デジタルマーケティングを展開する上では、この国のネット事情をよく理解し、訴求効果の高いツールを活用することが重要です。