2025年現在、アメリカ市場におけるデジタルマーケティングは急速に進化を遂げており、SNSや検索エンジンの利用状況、消費者の情報接触経路に大きな変化が見られます。こうした環境の変化に対応することは、日本企業がアメリカ市場で成果を上げる上で欠かせない戦略の一つです。
特に、近年は「ユーザーの検索意図を汲み取ったコンテンツ戦略」や「SNSを活用したブランド認知の向上」、「スマホを中心としたUI/UXの最適化」などが成果を分ける重要なポイントとなっています。実際に多くのグローバル企業が、米国市場をターゲットとしたデジタル施策で競争優位性を確立しています。
本記事では、最新の調査データをもとに、米国のインターネットユーザーの行動特性や人気のSNS、検索エンジンのシェア率、商品認知から購買に至るまでのカスタマージャーニーを分かりやすく解説します。貴社のグローバル戦略、特に北米展開を見据えたマーケティング施策立案にぜひお役立てください。

目次
米国とは
アメリカ合衆国(USA)は、世界最大の経済規模を誇る先進国であり、デジタルマーケティング分野においても影響力が大きい市場です。多民族国家であることから、消費行動やメディア接触にも多様性があり、日本企業が海外進出を図る際の重要なモデルケースでもあります。
以下は、米国の主要な経済指標の推移(2022年〜2025年)です。アメリカ経済の基礎的な理解を深め、マクロ環境からマーケティング戦略の検討に役立ててください。
| 年度 | 人口(人) | GDP(ドル) | 経済成長率(%) | 消費者物価指数(CPI) | 物価上昇率(%) | 失業率(%) |
| 2022 | 3億3,200万 | 25.46兆 | 2.1 | 294.6 | 6.5 | 3.6 |
| 2023 | 3億3,500万 | 26.24兆 | 2.5 | 308.7 | 4.8 | 3.7 |
| 2024 | 3億3,700万 | 27.15兆 | 2.2 | 319.4 | 3.5 | 3.9 |
| 2025 | 3億3,900万 | 28.10兆(予測) | 2.0(予測) | 328.1(予測) | 3.1(予測) | 4.0(予測) |
※データ出典:IMF(国際通貨基金)、World Bank、米労働統計局(BLS)、U.S. Census Bureau(2025年4月時点)

米国のデジタルマーケティング概況

2025年のアメリカにおけるデジタルマーケティングの中心は、依然として”モバイルファースト”のアプローチです。GWIによる最新の調査(2025年2月)によると、16歳以上のインターネットユーザーの93.9%がスマートフォンを含むモバイルデバイスを使ってネットにアクセスしています。これは、日本企業がモバイル最適化されたコンテンツ設計を優先すべきであることを示しています。
以下は、各デバイスのインターネットアクセス利用率です:
| デバイスカテゴリ | 利用率(%) |
| モバイル端末(スマホ含む) | 93.9 |
| スマートフォン | 92.0 |
| ノートPCまたはデスクトップ全体 | 72.7 |
| パーソナルラップトップまたはPC | 64.3 |
| タブレット | 42.7 |
| コネクテッドテレビ | 39.9 |
| スマートホームデバイス | 29.8 |
| 仕事用ノートPCまたはデスクトップ | 26.6 |
| ゲームコンソール | 23.3 |
| VR(バーチャルリアリティ)機器 | 6.9 |
| フィーチャーフォン | 4.4 |
このデータからも明らかなように、スマートフォンはあらゆるデモグラフィックにおいて最も重要な接点であり、Web広告、SNSキャンペーン、ECサイトなどの全施策でスマホ最適化を最優先とすべきです。
また、タブレットやコネクテッドテレビといった大画面端末の利用率も増加傾向にあることから、動画コンテンツや長時間視聴型メディアにも注力する価値があります。BtoC商材においては特に、クロスデバイスでの一貫したUX設計が成果を大きく左右する要因となるでしょう。

SNSシェア率

SNSはアメリカ市場におけるデジタルマーケティングの主戦場のひとつであり、各プラットフォームの利用動向を把握することが戦略設計の出発点になります。2025年2月時点における16歳以上のユーザーの月間利用率データは以下の通りです(出典:GWI 2024年Q3)。
| 順位 | プラットフォーム | 月間利用率(%) |
| 1 | 74.4 | |
| 2 | Messenger | 59.3 |
| 3 | 57.8 | |
| 4 | TikTok | 45.1 |
| 5 | iMessage | 40.2 |
| 6 | 35.8 | |
| 7 | X(旧Twitter) | 34.6 |
| 8 | Snapchat | 32.4 |
| 9 | 31.1 | |
| 10 | 30.6 | |
| 11 | 29.4 | |
| 12 | Nextdoor | 16.2 |
| 13 | Discord | 14.9 |
| 14 | Telegram | 14.1 |
| 15 | Skype | 11.5 |
Facebook系(Facebook、Messenger、Instagram)は依然として強い影響力を持っており、幅広い年齢層をターゲットにしたマーケティングに有効です。
また、TikTokは45.1%と高い月間利用率を記録しており、特にZ世代や若年層に対する影響力が非常に強く、インフルエンサーマーケティングやUGC(ユーザー生成コンテンツ)施策の中心的チャネルとなっています。
LinkedInはビジネス層向けのBtoBマーケティングにおいて引き続き注目されており、採用活動やナレッジ発信といった文脈でも活用が進んでいます。
企業は自社のターゲット層に応じて、これらのSNSを組み合わせたクロスメディア戦略を検討することが、マーケティングROIの最大化につながります。
検索エンジンシェア率
アメリカのインターネットユーザーがオンライン上で最も多く行う行動のひとつが「情報収集」であり、全体の75.0%が主目的として挙げています(出典:GWI 2024年Q3)。次いで「やり方を調べる(66.9%)」「家族・友人との連絡(64.4%)」が続いており、検索エンジンは依然としてWebマーケティングにおける要のチャネルであることが分かります。
以下は、主なインターネット利用目的のランキングです:
| 利用目的 | 割合(%) |
| 情報の検索 | 75.0 |
| やり方を調べる | 66.9 |
| 家族や友人との連絡 | 64.4 |
| ニュースや時事の把握 | 59.1 |
| 商品・ブランドのリサーチ | 58.9 |
| 映画・TV・動画視聴 | 56.6 |
| 音楽のストリーミング | 51.0 |
| インスピレーションの収集 | 48.6 |
| 暇つぶしやブラウジング | 46.9 |
| 旅行や観光地の情報調査 | 46.1 |
| 資産管理や貯蓄 | 45.5 |
| 健康関連の調査 | 45.0 |
| 教育目的での利用 | 35.1 |
| ゲーム | 31.8 |
| 日常生活の整理 | 28.3 |
このように検索エンジンは、商品検討段階から日常的な課題解決まで、幅広い目的に対応するツールとして使われており、SEO施策や検索連動型広告への投資は今後も有効なマーケティング手段であるといえます。

デバイスの比率
アメリカのインターネットユーザーにおけるデバイス保有状況も、マーケティング戦略を構築するうえで重要な判断材料です。2025年2月時点のGWIの調査によると、スマートフォンは97.3%のユーザーに保有されており、最も一般的なデジタルデバイスとなっています。PCやスマートTV、スマートウォッチといった周辺デバイスの浸透も進んでおり、クロスデバイス対応がますます不可欠になっています。
以下は、米国における主要デバイスの保有率(16歳以上)です:
| デバイスカテゴリ | 保有率(%) |
| モバイル端末(スマホ含む) | 97.7 |
| スマートフォン | 97.3 |
| ノートPCまたはデスクトップ | 69.1 |
| スマートTV | 62.1 |
| タブレット | 48.6 |
| TVストリーミングデバイス | 39.2 |
| ゲームコンソール | 35.2 |
| スマートリストバンド(全体) | 34.8 |
| スマートウォッチ | 28.6 |
| スマートホームデバイス | 25.4 |
| 電子書籍リーダー | 13.5 |
| スマートリストバンド(専用) | 11.6 |
| VRデバイス | 8.5 |
| フィーチャーフォン | 3.8 |
このように、スマートフォンを基盤としつつも、TV関連デバイスやウェアラブル端末など、情報接点が多様化しているのが特徴です。特にBtoCマーケティングでは、複数デバイスに対応したクリエイティブやメディア配信が必要不可欠となっており、”マルチチャネル×マルチデバイス”戦略の構築が成果を左右する時代に突入しています。

新しい商品・ブランドを何で最初に知るか
ユーザーが新しい商品やブランドと初めて接点を持つメディアは、マーケティングの最上流である認知段階において極めて重要です。2025年現在、消費者の情報源は多様化しており、企業はオンライン上での信頼性と可視性の両立が求められています。
以下は、GWI調査(2025年2月時点)に基づく「ブランド認知のきっかけ」ランキングです。
| 情報源カテゴリ | 認知率(%) |
| クチコミ(Word of Mouth) | 38.3 |
| テレビ広告(TV Ads) | 37.9 |
| 検索エンジン(Search Engines) | 34.2 |
| 小売サイト(Retail Websites) | 32.7 |
| 店頭プロモーション(In-store Promos) | 29.9 |
| SNS広告(Social Media Ads) | 28.6 |
| ウェブ広告(Ads on Websites) | 24.4 |
| ブランド公式サイト(Brand Websites) | 24.3 |
| 映画・TV番組(TV Shows and Films) | 22.7 |
| モバイルアプリ内広告 | 19.5 |
| レビューサイト | 17.8 |
| メールやDM | 17.4 |
| SNSコメント | 17.1 |
| 商品サンプルやトライアル | 15.9 |
| ゲーム内広告(モバイルゲーム含む) | 13.9 |
最も効果的な認知チャネルは「クチコミ(38.3%)」であり、ユーザー生成コンテンツ(UGC)やレビュー施策が引き続き有効です。テレビ広告(37.9%)や検索エンジン(34.2%)も強力な影響力を維持しており、マスメディアとデジタルのハイブリッド戦略が成果を出すカギとなります。
また、SNS広告やウェブ広告、ブランドサイトといったオンラインチャネルも約1/4以上のユーザーが接点を持っており、デジタルマーケティングにおけるクリエイティブと導線設計の重要性が高まっています。
今後の施策設計においては、信頼性のある情報源を通じた接点の構築と、マルチチャネルを意識したブランド露出の最適化がポイントとなるでしょう。

商品・ブランドを何を通じて調べるか
消費者が新しく知った商品やブランドについて「詳しく調べる」際に利用する情報源は、購入に至るまでの意思決定プロセスを大きく左右します。2025年のGWI調査によれば、最も多く利用されているのは「検索エンジン(60.4%)」であり、SEO施策や検索連動型広告の重要性が再確認されています。
以下は、ユーザーがブランドリサーチを行う際に使用する主なチャネルのランキングです:
| 情報チャネル | 利用率(%) |
| 検索エンジン(Search Engines) | 60.4 |
| 消費者レビュー(Consumer Reviews) | 41.8 |
| ブランド公式サイト | 38.5 |
| ソーシャルネットワーク | 32.3 |
| 価格比較サイト | 22.0 |
| モバイルアプリ | 21.4 |
| Q&Aサイト | 18.1 |
| 専門レビューメディア | 15.2 |
| クーポン・割引サイト | 14.3 |
| 動画サイト | 14.0 |
| 掲示板・フォーラム | 12.6 |
| 商品・ブランドのブログ | 10.6 |
| メッセンジャーアプリ | 9.5 |
| オンラインピンボード(Pinterest等) | 9.3 |
| Vlog(ブイログ) | 6.9 |
このデータから、ブランドリサーチの初期段階では「検索エンジンとレビュー」が中心的役割を果たしており、これらのチャネルで信頼性と説得力のある情報を提供することが購買促進の鍵となります。
また、SNS(32.3%)や動画サイト(14.0%)の活用も一定の支持を得ており、視覚的・感情的な訴求力を活かしたコンテンツ展開が有効です。ブランドは、自社が信頼される情報源として機能するために、継続的なコンテンツ運用とUI/UXの最適化を図る必要があります。

検索言語
基本的には英語がメインですが、スペイン語検索の割合も一定数存在しており、ヒスパニック系へのローカライズも検討の余地があります。

まとめ

2022年から2025年にかけて、米国のデジタルマーケティング環境は大きな進化を遂げました。特に、スマートフォン普及率のさらなる上昇(96.1% → 97.3%)や、SNS・動画・レビューサイトを通じたユーザーの購買行動の変化は、企業のマーケティング戦略に直結するトレンドです。
また、SNSの勢力図も変化しています。従来から強かったFacebookやInstagramに加え、TikTokやRedditといったエンゲージメントの高いプラットフォームが台頭し、ユーザーの可処分時間の取り合いが激化しています。さらに、ユーザーの情報への接触経路は「検索エンジン・口コミ・レビュー」へと集約しつつも、動画・SNS・アプリなど視覚的/能動的チャネルの活用も広がっています。
今後の動向予測
- プライバシー意識の高まりにより、Cookieレス対応やゼロパーティデータ活用が不可欠に
- 短尺動画・ライブ配信を活用したSNS施策がより重要に(特にZ世代への訴求)
- 音声検索やスマートデバイス対応など、UX最適化がデジタル接点の競争力を左右
- 生成AIの活用によるパーソナライズコンテンツの普及
企業への対策提案
- モバイルファーストのUI/UX設計:スマホ・アプリユーザー中心の導線最適化
- SEOとE-E-A-T強化:検索エンジン経由の信頼獲得がリードとCVを生む
- SNS+動画活用:TikTok/Instagramを中心にUGCやインフルエンサー施策を展開
- ファネル横断型戦略:検索/SNS/レビュー/ブランドサイトを一気通貫で構築
- ユーザー視点のコンテンツ提供:信頼性・共感性のある情報発信でLTVを高める
米国市場は引き続き競争が激しく変化も早い環境です。しかし、正しいユーザー理解とデータ分析に基づいた施策を展開すれば、中小企業でも確かな成果を上げられる土壌があります。今後のグローバル展開を見据える日本企業にとって、米国デジタルマーケティングの動向を把握することは、成功の第一歩となるでしょう。




