ベトナムのデジタルマーケティングトレンド2022 (Web/SNS事情/EC、マーケット傾向分析)

東南アジアは、中国に劣らない高度経済成長期を迎えており、複数の国でデジタル活用が盛んになっています。
今回はベトナムに注目し、同国のデジタルマーケティングの概況について、ご紹介します。

ベトナムの概要

ベトナムは2022年現在、およそ9,850万人の人口を抱えている東南アジアの一国です。2021年から2022年にかけて、人口は全体の0.8%にあたる80.8万人の増加を記録し、人口比は男女ほぼ同数であることから、今後も人口の増大が予想されています。

平均年齢は33.3歳と、非常に若いのもベトナムの特徴です。25歳〜34歳の年齢層が16%と最も厚く、労働人口と消費者の数に優れている点がうかがえます。

また、国民のおよそ38.7%が都市部に住み、残りの61.3%は地方・郊外の在住です。今後も経済成長が進めば、都市への人口流入も進むでしょう。

ベトナムは東南アジアの中では比較的複数の宗教が混在している国でもあり、キリスト教と仏教、そしてカオダイ教と呼ばれる土着宗教がポピュラーです。国民一人当たりのGDPは3,520米ドル、国家全体のGDPは3,429億米ドルとなっています。

直近5年の数値は以下の通りです。

 2018年2019年2020年2021年2022年※
名目GDP(10億ドル)  303.09 327.87 342.94 366.20408.9
名目GDP(10億ドン)  6,977,294.1 7,615,567.5 7,966,121.5 8,398,606.2 9,249,159.6
一人当たりの名目GDP(ドル)  3,201.69 3,398.213,520.74 3,724.54 4,121.50
一人当たりの名目GDP(ドン)  73,704,330.3 78,930,885.2 81,782,613.5 85,420,189.7 93,216,034.2
経済成長率(%)  7.27.15 2.95  2.58 6.63
物価上昇率(%)  3.542.8 3.22 1.87 3.85 
失業率(%)  2.192.17 3.3 2.7 2.4 

※ 2022年の数値はIMFによる2022年4月時点の推計 

出展:IMF – World Economic Outlook Databases(2022年4月版) 

ベトナムのデジタルマーケティング概況

ベトナムはここ10年ほどで、インターネット活用が広く普及しています。2022年現在、ベトナムではおよそ7,210万人ものインターネットユーザーを抱えており、国民の73%以上の人がインターネットを利用できる環境にあることがわかります。

ネットユーザーの数は2021年から2022年にかけて340万人増加していますが、インフラが各地に普及することで、更なる増加も見込まれます。

ユーザー増加の要因の一つとして、回線速度の改善も挙げられます。ベトナムにおけるインターネット回線の速度は、携帯電話の速度が35.14Mbps、固定回線の速度が68.50Mbpsとなっています(いずれも中央値)。

携帯電話回線については、前年比で8.66 Mbps(+32.7%)の高速化、固定回線に至っては25.36Mbps(+58.8%)もの増加を記録しています。

ベトナム人が1日あたりでインターネットに費やす時間は、平均して6.38時間です。テレビの視聴時間が2.47時間、ラジオが38分であることを踏まえると、インターネットの影響力は多大であることがわかります。

ベトナムにおけるSNSユーザー数

ここから、ベトナムにおけるSNSユーザーの数について見ていきましょう。ベトナムでは現在、平均して1日あたり2.28時間がSNSの利用に費やされており、7,695万人のユーザーが存在します。

どのようなSNSに注目が集まっているのか、確認しておきましょう。

対象SNSSNS利用ユーザー数
Facebook7,040万人
Youtube6,250万人
Facebook Messenger5,400万人
TikTok3,991万人
SnapChat2,775万人
Instagram1,165万人
LinkedIn420万人
Twitter285万人
引用:Meta,Google,Twitter,Tiktokなど各社のオープンデータ
対象SNS1カ月に利用する割合
Facebook93.8%
Zalo91.3%
Facebook Messenger82.2%
TikTok75.6%
Instagram59.7%
Twitter34.4%
Telegram 27.4%
Pinterest25.8%
IMessage22.4%
Skype17.4%
Viber16.2%
LINE12.4%
Whatsapp12.4%
LinkedIn11.2%
Reddit11.0%
引用:GWI.com

Facebookのユーザー数

SNSの代名詞として広く知られているFacebookは、ベトナムにおいても大きな影響力を発揮しています。2022年現在、同サービスはベトナム国内で7,040万人ものユーザーを抱えているとされており、同国のネット利用者のほとんどがFacebookのアカウントを所有していると言えます。

Facebook広告のリーチ数は、同国全体における70%以上に到達しているとみられ、インターネットユーザーに限定すると、その数字は97.6%に達します。つまり、ベトナムのデジタルマーケティングにおいて、Facebookは強力な広告媒体であると言えるでしょう。

Zalo

ベトナムのLINEともいえる国民的なコミュニケーションツールです。Facebook同様に高い利用率であり、ベトナムマーケットを考えるうえではZaloの検討は必須と言えます。10年間改善のための不断の見直しを行うとともに、その結果、今のスーパーアプリができました。1つのアプリで、コミュニケーションだけでなく、ショッピングをはじめ、情報の検索、QRコード決済など、すべてを行うことができます。

Youtubeのユーザー数

世界最大の動画共有プラットフォームとして知られるYoutubeも、日本や他の地域同様にベトナムで多大な影響力を発揮しています。

ベトナムにおけるYoutubeユーザーの数は6,250万人に達しています。Youtube広告のリーチ数は国民全体で63.4%、インターネットユーザーに限定すると、86.7%に達します。

また、ユーザーの男女比率もほぼ同数となっており、TVなどと同様、幅広い層に向けてアプローチできる広告媒体と言えるでしょう。

Instagramのユーザー数

若年層を中心に人気の高いInstagramは、FacebookやYoutubeにはユーザー数の母数では劣るものの、高い影響力を発揮するSNSとして注目されています。

ベトナムにおけるInstagramのユーザー数は、2022年に1,165万人に到達しています。広告のリーチ数は総人口比で11.6%、インターネットユーザー比で見ると16.2%です。

総合的なリーチ数で言えばFacebookのようなサービスに劣りますが、注目すべきはその男女比です。Instagramの利用者の63%は女性と、女性に人気のサービスであることがわかっています。ターゲットを絞ったデジタルマーケティングを展開する際には、積極的に活用すべきツールです。

TikTokのユーザー数

中国発のSNSとして注目を集めるTikTokは、新興サービスでありながら強力な発信力を備えています。ユーザー数は3,991万人と、TikTokよりも歴史のあるサービスであるInstagramの4倍ちかいユーザー数を確保しており、その影響力がいかにベトナムで高いかを物語っています。

TikTok広告は、公式に記録されている18歳以上のベトナム国民の55.6%にリーチし、現地のインターネットユーザー全体で見ても55.4%と、広いプロモーションに成功している様子がうかがえます。

利用者については53.5%が女性であるなど、わずかに男性よりも女性ユーザーの数が多いという点も特徴と言えます。

Facebook Messengerのユーザー数

Facebook Messengerを利用すれば、Facebookユーザー同士がテキスト通話、音声通話、ビデオ通話、グループビデオチャットのやり取りを行えることができます。スタンプが多様だし、相手のメッセージをいいねだけでなく、携帯の絵文字をそのまま使ってリアクションできることが魅力だと言えます。

Facebook元々Facebook上で多くのユーザーを抱えていることもあり、ユーザー数は5,400万人に到達しています。広告リーチ数は総人口の54.8%、インターネットユーザーに限定すると、74.9%に達しています。男女比はFacebook同様、ほぼ同数です。

LinkedInのユーザー数

ビジネス向けSNSとしてユーザーを増やしているLinkedInは、ユーザー数が420万人と、他のサービスに比べて物足りない印象を受けます。

ただ、これはLinkedInが大衆向けのサービスではなく、ビジネスパーソンに特化した転職サイトとして機能している側面もあるため、一概に他のSNSと比較してその影響力を測るのは難しいかもしれません。

広告のリーチ数は総人口の4.3%、インターネットユーザーに限定すると5.8%です。

Twitterのユーザー数

日本では根強い人気を誇るTwitterは、ベトナムのユーザー数が285万人と、やや物足りない印象を受けます。ベトナム市場に参入する当初にはベトナム語版がなかったため、利用し始めることがしづらいではないかと思われます。現在、ベトナム語版があるようになっても、消費者の習慣を変えることが難しいということはユーザー数が少ない理由の一つとなります。広告リーチ数は総人口の2.9%、インターネットユーザーに限定しても4.0%と、大衆向けのサービスとしては今ひとつ影響力に欠ける部分があります。

国内でのSNS活用をTwitter中心で展開していた場合、ベトナム進出に際しては何らかのテコ入れが必要になるでしょう。

検索エンジンシェア率

続いて、検索エンジンのシェアについてです。ベトナムでは諸外国と同様、Googleが圧倒的な検索シェアを誇っており、その割合は90.9%に達します。次点で1.42%のYahoo!、1.21%のbingが続きますが、Googleのシェアを脅かす存在とは言えません。

検索エンジンシェア率前年比
Google90.92%-2.4%
Bing1.21%-17.1%
Baidu0.11%+83.3%
Yahoo!1.42%+23.5%
Yandex0.33%+1.55%
DuckDuckGo0.05%-16.7%
Ecosia0.03%-50.0%
その他5.93%+47.5%
引用:STATCOUNTER

ベトナムの検索言語

ベトナムでは公用語がベトナム語ということもあり、検索言語もベトナム語が大半です。ベトナム向けにWeb集客を展開する場合、ベトナム語の活用は欠かせないでしょう。

新しい商品・ブランドを何で最初に知るか

新しい商品やブランドについての情報インプットも、SNSが主流です。ベトナムのインターネットユーザーの85.2%の人がSNS経由で新たな商品やブランドを知ると回答しており、情報収集の第一歩をここから踏み出していることがわかります。

検索エンジン34.2%
TV広告34.1%
消費者レビューサイト31.5%
ソーシャルメディアコメント30.5%
商品比較サイト30.1%
ブランド・商品のウェブサイト28.8%
口コミ27.9%
TV番組・映画27.%
ソーシャルメディア広告26.4%
ブランドのソーシャルメディア投稿25.6%
ウェブサイトの広告24.6%
商品サンプル23.6%
モバイルアプリ内の広告23.1%
専門家のブログのレビュー21.8%
店舗ディスプレイ・プロモーション21.5%
引用:GWI.com

商品・ブランドを何を通じて調べるか

また、新商品やブランド情報を知った後のリサーチについても、SNSやその他Webサービスが活躍しています。Q&Aフォーラムやメッセンジャーアプリ、各種掲示板を活用している様子が見られ、検索エンジンよりもWebサービスの重要性がデジタルマーケティングの現場では高まっています。

SNS62.6%
検索エンジン52.9%
消費者レビュー41.9%
モバイルアプリ37.9%
価格比較サイト35.5%
ブランドウェブサイト33.9%
ブランド・商品ブログ25.9%
ビデオサイト25.2%
Q&Aサイト24.0%
クーポンサイト21.5%
フォーラム&メッセージボード20.5%
メッセージ&ライブチャット17.9%
VLOGS17.9%
専門家のレビューサイト15.3%
個人ブログ15.2%
引用:GWI.com

デバイスの比率(PC・スマートフォン・タブレット)

Webトラフィックシェア

ウェブトラフィックのシェアはモバイルが45.61%、デスクトップが52.64%です。
ウェブサイトはスマートフォン・PC両方の対応が必要と分かります。

デバイス流入シェア前年比
モバイル45.61%1.3%
デスクトップ52.64%-0.5%
タブレット1.73%-16.4%
その他0.02%+100%
引用:STATCOUNTER

EC市場

EC市場規模推移

引用:Statista

ベトナムEC市場規模は上記図の通り。右肩あがりで市場規模は膨らむ想定です。

ECプラットフォーム(ハノイ)

引用:トランス・コスモス「アジア10都市オンラインショッピング利用動向調査2020」

ECプラットフォームではASEANを中心にシェアの高いShopee、LazadaとFacebookを通じて購入する割合が高い状態です。

購入商品(ハノイ)

引用:トランス・コスモス「アジア10都市オンラインショッピング利用動向調査2020」

購入分野ではファッション、化粧品・医薬品、配車サービスの順となっています。

まとめ

ベトナムは著しい経済発展と併せて、通信インフラの改善も進んでいます。特にスマートフォン利用者の数は近年急増しており、現地におけるインターネット利用の重要なツールです。

デジタルマーケティングをベトナムで展開する場合、ベトナム語の活用や現地で人気のあるSNSの運用、そしてスマホユーザー向けの施策を実施する必要があるでしょう。

この記事を書いた人

野口慎平

GDX 事業責任者 兼 UDX株式会社ゼネラルマネージャー。
新卒で大手外資系総合コンサルティングファームにビジネス&テクノロジーコンサルタント職として就職。2016年よりプルーヴ株式会社に法人営業職として入社。慶應義塾大学理工学部・同大学院 理工学研究科電子工学修了。
海外SEOとマーケティングオートメーションを軸としたデジタルマーケティングを得意とする。
Salesforce Pardot甲子園2021優勝

取得資格:
応用情報技術者、IPAプロジェクトマネージャ、上級ウェブ解析士、IoTコーディネーター取得
Salesforce認定アドミニストレーター