サイバーシーパワーとサイバーランドパワー|地政学で今後の海外マーケティングを考える

デジタルマーケティングを考える上で、国ごとの特性をおさえたマーケティング戦略を立案し、それを実行していくことが重要です。

コロナ禍のような、社会を揺るがすような大変革が多発する昨今の世の中においては、地政学的な知見もマーケティングを考える上で非常に重要な要素です。

また、コロナ禍前とコロナ禍後では、マーケティングのあり方にも変化が生じている部分が報告されており、マーケティング戦略をアップデートをすることが大切です。

この記事では、地政学の基本的な考え方やこれからの時代に必要なサイバーパワーの概念、サイバーランド・シーパワーといった概念について紹介します。

デジタルマーケティング戦略を地政学やサイバーパワーの観点から考えることで、よりその国に合ったマーケティング戦略を実行することができるはずです。

コロナ渦を契機として海外マーケティングは様変わり

コロナ禍前やウィズコロナ期、コロナ禍後ではマーケティングは様変わりしました。

時期マーケティングのあり方トレンド主な海外事業
コロナ禍前足で稼ぐ営業→デジタルでサポート・クラウド・SEO・Web広告渡航・駐在が中心
ウィズコロナ消費者行動・ビジネスがデジタルを基本に・リモートワークツールを導入・スマホ動画が流行リモート前提→中国・ロシアとのビジネスが分断
コロナ禍後リアル世界×デジタルの融合を目指す・Web3・GPA−4・ChatGPT費用対効果を考えた海外事業施策

オフィスワークからリモートワークへの以降が進み、オンライン上での商談やマーケティングをしていく中で、デジタルマーケティングのあり方が変化してきた結果です。

近年は円安・ドル高による相場変動やウクライナ紛争によるエネルギー価格の高騰、ITを駆使したマーケティング手法など、ビジネスを取り巻く状況が激変しました。

また、デジタル戦略を考える上で真っ先に考えなくてはならないのが個人情報保護に関する法律の遵守です。2018年にはEUでGDPR法、アメリカのカリフォルニアではCCPA法、日本でも2020年改正個人情報保護法が採択され、企業は個人情報の取り扱いに、これまで以上にセンシティブにならざるを得ない状況となっています。

このように、国内外のマーケティングは近年の社会情勢によって激変しており、変化に沿ったマーケティング戦略を実行していく必要があるのです。

地政学上のシーパワーとランドパワーとは

海外マーケティングを考える上では、地政学のシーパワー・ランドパワーという考え方を知っておくことが大切です。地政学とは、地理によって気候や周辺国が決まり、民族性や産業、歴史、統治制度が決まっていくとする考えをもとに地域を研究していく学問です。

地政学的な視点で海外の国を分析することで、世界情勢を俯瞰でき、より中長期的な視点に立ち、マーケティング戦略を立案・実行につなげられます。

ここでは、それぞれの単語の意味について確認しましょう。

シーパワーとは

シーパワーをもつ国には島国国家が該当します。島国国家の特徴は長い海岸線をもち、広大な海から外へ向かって進出する圧力が働くのが特徴。日本やイギリス、アメリカ、スペイン、台湾などの国々が島国国家に該当します。

ランドパワーとは

ランドパワーをもつ国には大陸国家が該当します。陸続きで多くの国と国境を接しており、歴史的に侵略したりされたりを繰り返すのが特徴。他国に責められる前に自分たちから攻め込む考えに陥りやすく、強権的な政権で外への侵略をするという傾向にあります。

中国やロシア、モンゴルなどの国々が大陸国家に該当します。

シーパワーとランドパワーの均衡は月日と共に変化してきた

歴史を振り返ってみると、シーパワーとランドパワーの力関係は航海技術の発展によって、ランドパワーからシーパワーに力の均衡が移動してきました。しかし、その後に鉄道網が発達すると、ロシア・ドイツのようなランドパワーをもつ国が台頭しました。

20世紀になると、今度はシーパワーをもつアメリカや日本が成長してきたのを見ると、シーパワーとランドパワーはその年代によって変化してきていることがわかるのです。

参考URL:https://cocreco.kodansha.co.jp/cocreco/general/books/nonfiction/m44uY

参考URL:https://newspicks.com/news/1138216/body/

これからの時代に必要なサイバーパワーの概念とは

21世紀からはサイバーパワーが重要になってくるといわれています。ウクライナ紛争を見てもわかるとおり、インターネットにおける情報発信や敵国のサイバーインフラを攻撃することで侵攻を遅らせるなど、サイバーパワーの大きさは国力に匹敵するといえます。

デジタルマーケティング戦略においても同様のことが当てはまり、サイバーセキュリティやIT活用の有無が、マーケティングで結果を出すための必須条件だといえるでしょう。

参考URL:https://thinktank.php.co.jp/voice/7756/

参考URL:https://toyokeizai.net/articles/-/385580?page=4

サイバー領域でも地理的な制約を受けることもある

サイバー領域では地理的な制約を受けないと勘違いしてしまいがちですが、一部では制約を受ける部分もあります。具体的には、下記のような場合が当てはまります。

  • サーバーが離れた国にあるとアクセススピードが遅くなる(SEOに不利)
  • 越境ECを行う場合に輸送コストを考える必要がある
  • コールセンターが外国にあるとユーザー対応が遅れてしまうこともある

また、グローバル市場で見た時のデータ経済圏は中国とそれ以外という経済圏の区分けになっており、グローバルなアプリやサービスに関しては、アメリカ発のものが多いです。

このようなサイバー領域の制約や現状を踏まえたマーケティングが重要だといえます。

サイバー領域上のシーパワーとランドパワー

サイバー領域上のシーパワーとランドパワーには、下記の特徴があります。

サイバーシーパワー:アメリカのIT企業を筆頭とするグローバル市場に向けたデジタルマーケティング戦略を展開する。日本もサイバーシーパワー型

サイバーランドパワー:中国のグレートファイアウォールで米国からの情報を遮断。欧州ではGDPRでサイバーシーパワーを排除しようとする動きがある。

ロシアにおいてもVPNを経由しないInstagram・Twitterへのアクセスが制限されている。

このようなサイバー領域上のシーパワー・ランドパワーの有無や強弱を見極めて、デジタルマーケティングの方針を決めることが大切です。

サイバーランドパワーの影響が強い国については、海外からのサービスは受け入れられにくい傾向にあり、事前にマーケット調査を行って方針を決めるようにしましょう。

地政学を理解して、地域ごとに最適化したマーケティング施策を行おう!

この記事では、コロナ禍前後でのマーケティングを取り巻く状況の変化や地政学のシーパワーとランドパワー、サイバー領域のシーパワー・ランドパワーを紹介しました。

海外デジタルマーケティングを考える上では、地政学的なシーパワー・ランドパワーの関係性を見て、ビジネス対象国におけるビジネスプランの立案に活かすのがおすすめです。

また、サイバー領域上のシーパワー・ランドパワーも重要な概念です。サイバーシーパワーを拡大しようと考えることが多い日本企業は、進出先のサイバーランドパワーの有無や程度を理解し、現地で受け入れられるようなビジネスを展開する必要があります。

地政学を理解して、地域の特性に合ったマーケティングを展開していきましょう。

この記事を書いた人

野口慎平

GDX 事業責任者 兼 UDX株式会社ゼネラルマネージャー。
新卒で大手外資系総合コンサルティングファームにビジネス&テクノロジーコンサルタント職として就職。2016年よりプルーヴ株式会社に法人営業職として入社。慶應義塾大学理工学部・同大学院 理工学研究科電子工学修了。
海外SEOとマーケティングオートメーションを軸としたデジタルマーケティングを得意とする。
Salesforce Pardot甲子園2021優勝

取得資格:
応用情報技術者、IPAプロジェクトマネージャ、上級ウェブ解析士、IoTコーディネーター取得
Salesforce認定アドミニストレーター