東南アジアは、中国や日本に次いで経済成長の著しい国家が多く存在し、近年注目を集めています。今回は、そんな東南アジアの中でも注目度の高いシンガポールについて、同国におけるデジタルマーケティングの概況をご紹介します。
目次
シンガポールの概要
シンガポールは東南アジアに浮かぶ島国ですが、国土面積は約720平方キロメートルと、東京23区と同程度の大きさの国家です。人口は2022年1月時点で592万人に達しており、年々増加傾向にあります。
しかしシンガポールでは女性1人が生涯に産む子供の数が少なく、出生率は日本よりも低いとされています。また移民の入国制限強化やビザ発給の要件引き上げによって、永住者ではない外国人の人口が減っています。
このようなことから、シンガポールでは将来人口及び消費者の数が減っていくことが現段階では予想されています。
また、シンガポールでは中華系の民族が大半を占めていますが、他にもマレー系、インド系などの民族が住む多民族国家としても有名です。このことから、シンガポールにおける国語はマレー語ですが、公用語として英語、中国語、タミール語も使われています。宗教については仏教をはじめイスラム教、キリスト教など様々な種類の宗教を信仰する民族がいます。
一人当たりのGDPは60,727米ドルで、国家GDPは3,452億米ドルです。直近5年の数値は以下の通りです。
2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年(※) | |
各目GDP (10億ドル) | 367.99 | 375.48 | 345.29 | 396.99 | 424.43 |
各目GDP(10億シンガポールドル) | 508.5 | 512.22 | 476.4 | 533.35 | 573.8 |
一人当たりの各目GDP(ドル) | 66,857.27 | 65,833.20 | 60,727.62 | 72,794.91 | 79,575.89 |
一人当たりの各目GDP(シンガポールドル) | 90,179.88 | 89,806.91 | 83,788.42 | 97,798.74 | 107,579.91 |
経済成長率(%) | 3.5 | 1.35 | -5.39 | 6.03 | 3.22 |
物価上昇率(%) | 0.44 | 0.57 | -0.18 | 2.31 | 3.49 |
失業率(%) | 2.1 | 2.25 | 3.0 | 2.63 | 2.4 |
※ 2022年の数値はIMFによる2022年4月時点の推計
出展:IMF – World Economic Outlook Databases(2022年
シンガポールのデジタルマーケティング概況
続いてシンガポールにおけるデジタルマーケティングを支えるインターネット環境について、解説します。シンガポールのインターネットユーザー数は545万人で、総人口の92.0%の人がインターネットを利用できる環境にある状況です。
インターネットユーザーの数は増加傾向にあり、同国のユーザー数は2021年から2022年にかけて、4万3000人(+0.8%)の増加が見られました。
現在、シンガポールでオフライン環境にある人は47万3600人と見られており、これは人口の8.0%に当たります。またシンガポール人の1日あたりのインターネット利用時間は、平均で7.29時間にのぼり、昨年比では38分(−7.8%)減りました。
しかしテレビを視聴している平均時間が2.53時間、ラジオの視聴時間が1.02時間であることを考えると、シンガポールではインターネットが国民にとって身近な存在であることが分かります。
シンガポールにおけるSNSユーザー数
ここから、シンガポールにおけるSNSユーザーの数を見ていきましょう。シンガポールでは現在、530万人ものSNSユーザーが存在し、全人口の約89.5%がソーシャルメディアを活用しています。
SNSユーザー数は2021年から2022年の間に340千人(+6.9%)増加していて、多くの国民にとってSNSは生活に欠かせない存在となりつつあります。
対象SNS | SNS利用ユーザー数 |
---|---|
355万人 | |
Youtube | 508万人 |
305万人 | |
TikTok | 183万人 |
Facebook Messenger | 205万人 |
320万人 | |
285万人 |
1日あたりの平均利用時間は2.31時間で、前年よりも約10%増加しています。
対象SNS | 一ヵ月に利用する割合 |
---|---|
83.7% | |
79.4% | |
66.3% | |
Telegram | 49.2% |
Facebook Messenger | 46.6% |
Tiktok | 44.3% |
36.1% | |
33.6% | |
30.3% | |
28.3% | |
Skype | 24.6% |
IMessage | 22.8% |
21.9% | |
LINE | 21.4% |
Discord | 15.6% |
Facebookのユーザー数
世界で圧倒的なユーザー数を誇るSNSの一つがFacebookです。シンガポールでも2022年初頭で355万人と多くのユーザーを抱えています。インターネットユーザーの半数以上がFacebookを利用していることが分かります。
また2022年の開始時点で、シンガポールにおけるFacebookの広告リーチは総人口の60.0%に達しており、広告媒体としても訴求力の高さが見受けられます。さらに13歳以上のFacebook利用対象ユーザーに限定すると、そのリーチ数は67.2%に伸び、シンガポールにおけるデジタルマーケティングの重要な媒体として活躍が期待できます。
Youtubeのユーザー数
世界的動画共有プラットフォームであるYoutubeは、シンガポールにおいても人気を博しています。シンガポール国内でのYoutubeのユーザー数は508万人にのぼり、その数字はなんとFacebookよりも大きいのです。Youtubeの広告リーチも、シンガポールの総人口比で85.8%と、非常に訴求効果が高いと分かります。
またインターネットユーザーに限定すると、そのリーチ数は93.3%と驚くほど高く、Youtubeが同国のネット上で大きな役割を果たしていることが見て取れます。YouTubeはシンガポールを対象とするデジタルマーケティングには欠かせないサービスと言えるでしょう。
Instagramのユーザー数
続いては、Instagramです。サービスの特性上、日本では比較的若年層にユーザーが固まっているInstagramですが、シンガポールでは305万人ものユーザーを抱えています。シンガポールではInstagramもFacebookやYouTubeと同様に、人気のSNSとして多くのユーザーに利用されています。
Instagramの広告リーチ数は総人口の51.5%に達しており、インターネットユーザーに限定すると56.0%にのぼります。また、シンガポールにおけるInstagram広告利用者の男女比は、男性が45.8%、女性が54.2%と、やや女性が多い傾向にある点も特徴です。
TikTokのユーザー数
ByteDanceが運営する中国発のSNSとして人気を誇るTikTokは、シンガポールでも一定の影響力を持っています。2022年時点で183万人のユーザーを同国で抱えており、他のSNSに引けを取らない人気があると言えるでしょう。
またByteDanceが発表する、成人に到達したシンガポール全体への広告リーチ数は、全体の36.2%に及びます。年齢に関係ない、インターネットユーザーに限定した場合、その割合は33.5%です。
また、TikTokもInstagram同様、女性ユーザーに人気のあるサービスで、ユーザー全体の46.0%が男性、54.0%が女性となっています。
Facebook Messengerのユーザー数
Facebookユーザー同士がリアルタイムでメッセージのやりとりを行えるFacebook Messengerは、シンガポール国内にて205万人の人々に広告がリーチしています。総人口で見ると、全体の34.6%にあたる数字で、インターネットユーザーに限定すると、37.6%にリーチしています。
LinkedInのユーザー数
ビジネス特化型SNSであるLinkedInは、シンガポールにおいて320万人の登録ユーザーを獲得しています。広告のリーチ数は、総人口比で54.1%、インターネットユーザーに限定して58.8%です。
ビジネス向けのSNSであるにも関わらず、他のSNSに劣らない数字であり、シンガポール国内での人気が伺えます。
SnapChatのユーザー数
画像・動画の投稿アプリであるSnapChatは、シンガポールで99万5000人のユーザーを抱えています。広告リーチ数は総人口の16.8%、インターネットユーザーでも18.3%と、他のSNSと比較すると少ない数値であることが分かります。
Twitterのユーザー数
日本では圧倒的な人気を誇るTwitterですが、シンガポールのユーザー数は285万人と、Facebook、YouTubeに比べるとやや少なめな印象です。
広告リーチ数は総人口の48.1%、インターネットユーザー全体の52.3%と、平均的な影響力と言えるでしょう。
そこそこの規模感はあるものの、シンガポールで今後も人気を得ていくには運用に工夫が必要でしょう。
検索エンジンシェア率
検索エンジン | シェア率 | 前年比 |
---|---|---|
95.20% | -0.1% | |
BING | 2.24% | +39.1% |
BAIDU | 0.19% | -17.4% |
YAHOO! | 1.78% | +15.6% |
YANDEX | 0.09% | +50.0% |
DUCKDUCKGO | 0.33% | +26.9% |
ECOSIA | 0.06% | 不明 |
その他 | 0.11% | +10.0% |
続いて、検索エンジンのシェアを見ていきます。シンガポールで最も利用されている検索エンジンは、95.230%で圧倒的にGoogleです。そのほかBingが2.24%、Yahoo!が1.78%と続きますが、ほとんどの人はGoogleを利用しているということになります。
新しい商品・ブランドを何で最初に知るか
シンガポールの人々にとって、最も新たな商品やブランドとの接点となっているのは、検索エンジンです。34.4%の人々が検索エンジンを通じてこれらのコンテンツを発見しています。その他には、調査によると31.2%の人が口コミ、31.0%の人々がオンラインショップで商品・ブランドを知ると回答しています。
検索エンジン | 34.4% |
口コミ | 31.2% |
通販サイト | 31.0% |
ソーシャルメディア広告 | 29.0% |
店舗ディスプレイ・プロモーション | 27.0% |
ブランド・商品のウェブサイト | 25.7% |
TV広告 | 25.1% |
ソーシャルメディアコメント | 24.6% |
ウェブサイトの広告 | 24.2% |
消費者レビューサイト | 23.3% |
パンフレット・カタログ | 21.5% |
モバイルアプリ広告 | 20.9% |
交通広告 | 18.4% |
TV番組・映画 | 18.2% |
メルマガ広告 | 17.5% |
商品・ブランドを何を通じて調べるか
続いて詳しい商品情報をどのような手段で調べるかについてです。シンガポールでは、やはり検索エンジンや口コミで調べる人が多く、53.7%が検索エンジン、41.0%が口コミと回答しています。
検索エンジン | 53.7% |
消費者レビュー | 41.0% |
SNS | 38.0% |
ブランドウェブサイト | 37.8% |
価格比較サイト | 28.4% |
モバイルアプリ | 24.5% |
クーポンサイト | 22.9% |
Q&Aサイト | 17.6% |
ブランド・商品のブログ | 17.1% |
フォーラム&メッセージボード | 16.6% |
専門家のレビューサイト | 16.5% |
ビデオサイト | 14.6% |
メッセージ・ライブチャット | 12.5% |
VLOGS | 10.5% |
個人ブログ | 8.3% |
デバイスの比率(PC・スマートフォン・タブレット)
インターネット利用のデバイスですが、シンガポールの90.9%のインターネットユーザーが、スマートフォンからアクセスしていると回答しています。次点のPCは80.1%、タブレットについては33.4%となっており、スマートフォンが主流となっていることが分かります。
まとめ
今回はシンガポールのデジタル環境やデジタルマーケティング施策に関して、概要をご紹介していきました。シンガポールはハイテク化が進む東南アジア有数の国であり、多くの国民がインターネットやSNSを日々利用しています。
しかしまだ他の国と比べて、検索エンジンや口コミを好む面もあるため、デジタルマーケティングを行う際は意識してみましょう。