日本人の人口が減少しています。2023年3月に総務省統計局によって発表された人口推計の推計値を見てみると、75万人前後の減少幅となりました。高齢化社会も相まって、国内市場から国外市場へのビジネス展開を本格的に検討している企業も少なくないでしょう。
海外ビジネスについて検討する際には、すでに海外展開で成功をおさめているドン・キホーテやAEONといった企業のマーケティング戦略を参考にするのが効果的です。
本記事では、ドン・キホーテやAEONといった企業の特徴やそれぞれの海外展開の現状、マーケティング戦略について紹介します。自社が海外展開する際のマーケティングについて考えていて、日本企業の海外展開の事例を知りたい方は参考にしてみてください。
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目次
そもそもドン・キホーテとAEONはどんな会社?
海外展開をして成功をおさめているドン・キホーテとAEONですが、どんな会社なのか、会社設立にいたる背景や展開している事業がわからないという方もいるでしょう。
この章では、それぞれの会社の特徴について紹介します。
ドンキ・ホーテ
ドン・キホーテは、株式会社ドン・キホーテが運営する、都心や地方都市に全国展開しているディスカウントストア。高く積み上げられた商品棚やPOP、迷路のように多ジャンルの商品から選べるのが面白いスーパーマーケットで有名です。
創始者である安田隆夫が1978年に創業した「泥棒市場」から始まったドン・キホーテは、コンビニに先駆けて深夜営業を始めたことで大ヒットしました。2,000年には東証一部に上場し、日本のスーパーの中でもとくに根強いファンがいるお店に成長しています。
安田隆夫氏は2015年に社長、会長職を退きシンガポールに移住。2017年には東南アジア地域への進出を手がけ、2017年にシンガポールに第一号店を出店しました。
環太平洋地域を中心に事業を展開していくという思いをこめて、株式会社ドンキ・ホーテから現在のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスと社名変更。
今後も東南アジア地域を中心に出店し、売上を伸ばしていくことが考えられます。
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AEON
AEONは、イオンモール株式会社が運営している大型ショッピングセンターです。「お客様第一」を理念に掲げ、アジア50億人の心を動かす企業を目指しています。会社の創業は1911年11月で、2023年4月現在の会社の代表者は岩村康次氏です。
大型ショッピングモールづくりや都市型事業、次世代モール開発など、他の企業とも連携しながら、地域内におけるショッピングモール開発を進めています。
2008年に中国にイオンモール海外1号店を出店してからは海外事業にも積極的に着手しており、これから小売業で海外に進出したい企業にとって参考になる事例も多いです。
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ドン・キホーテとAEONの海外展開の現状
ドン・キホーテとAEONは、海外展開の業態やビジネスビジョンが異なります。この章では、それぞれの海外展開の現状について知りましょう。
ドン・キホーテの場合
ドン・キホーテは、「海外リテール事業」として、アメリカにドン・キ・ホーテUSA、高品質な生鮮4品(青果・鮮魚・精肉・惣菜)を中心に展開するGalson’s Markets、シンガポール・タイ・香港・マカオ・台湾で展開するDON DON DONKIなど、俗に言うドン・キホーテの業態だけでなく、高級路線の小売店なども幅広く展開しています。
アメリカや東南アジアを中心に海外展開している点が特徴です。
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AEONの場合
AEONは、海外事業を「中国事業」と「ASEAN」事業の大きく二つに分類できます。中国事業では、北京・天津・山東省、江蘇・浙江、湖北、広東の4つのエリアに展開。
成長や人口増加の著しいエリアに集中的に出店することで、企業のブランディングを高め、グループ全体としての売上アップを目指しています。日本水準の清潔で安心・安全なマーケット空間を提供することで、年々売上を拡大している点に注目です。
アセアン事業では、インドネシア・カンボジア・ベトナムに12店舗を出店しており、平均年齢が低く、経済成長が著しいカンボジアでは、若者が集まるスポットとして大人気。
ベトナムでは日本食や日本文化に触れられる設備やお店を集めることで、老若男女から人気を集めるスポットとして注目を浴びているようです。
インドネシアでは娯楽施設を兼ね備え、同国最大の大きさを誇る観覧車とショッピングセンターの複合施設で、地元の人から愛される場所になっています。
AEONは中国とアセアン地域で、知名度を獲得しつつあるといえるでしょう。
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ドン・キホーテの海外展開ビジネスの特徴
ドン・キホーテの海外展開ビジネスの特徴は、「日本のものを適正価格で売る」というミッションの下で、生鮮食料品を中心とした販売戦略を展開しているという点です。
この章では、ドン・キホーテの海外展開の方法について見ていきましょう。
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日本の食品を適正価格で売ること
ドン・キホーテが海外展開で最も重要視している点は、日本のものを適正価格で売るということです。遠く離れた日本へ旅行に行かずとも、日本で売られている食品や商品を手頃なお値段で購入できることで、日本に興味関心がある層を効果的に集客できます。
生鮮食品やお惣菜が売り場面積の半分以上
海外のドン・キホーテ(DON DON DONKI)では、生鮮食品やお惣菜などが売り場面積の半分以上を占めており、生鮮食料品がお店のメインに据えられています、。中国や東南アジアには、現地駐在員や日本の食文化が好きな現地人も少なくない地域です。
海外にいながら日本さながらの商品ラインナップをそろえているドン・キホーテは、他のスーパーマーケットにはない魅力にあふれたディスカウントストアだといえますね。
品揃えが豊富で日本旅行気分を味わってもらう
海外のドン・キホーテは、「ジャパンブランド・スペシャリティストア」を目標に掲げ、現地人たちの雇用と裁量を重視した経営方針を打ち出しています。日本のものを適正な価格で売るだけでなく、現地人のアイディアを借りながら、店舗を運営しています。
日本の商品の品揃えも豊富で、現地にある他のスーパーとは一線を画すスーパーです。
AEONの海外展開ビジネスの特徴
AEONの海外展開の特徴は、一部の地域に集中的な投資をする手法や地域ごとにマーケティング戦略を最適化している点です。それぞれ具体的に見ていきましょう。
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特定の地域に根付く環境づくり
AEONの海外展開の特徴は、特定の地域に集中的に出店し、AEONとしてのブランディングを浸透させ、地域全体における売上アップを目指す戦略をとっている点です。
中国では人口増加率や経済活動が活発な地域を4つ選択して、それぞれのエリアに集中的に出店することで、ブランディング価値を高めることに成功しています。
ASEAN地域でも出店地域の選択と集中の戦略を採用していて、今ではテナント募集説明会には多くの出店希望者が話を聞きにくる状態が続いているそうです。
イオンモールを建設することで移住者が増え、売上がアップするという好循環で、ASEANでは広く知られるスーパーマーケットになっています。
地域ごとに注力する事業を取捨選択
地域によって求められている業態やAEONの出店場所は異なります。娯楽施設に力を入れたり、日本文化の発信に力を入れたりなど、モール自体の性格が国によって異なります。
出店場所に関しても、大型ショッピングモールが都心部に集中している場合は、郊外に建設することで、現地での旺盛な需要にマッチすることに成功しているのです。
地域ごとに注力する事業が異なる点は、AEONの海外戦略を語る上では外せません。
ドン・キホーテやAEONの海外展開のあり方を知って、自社の海外マーケティングに活かそう!
この記事では、ドン・キホーテやAEONの会社の概要や海外展開の特徴について解説しました。ドン・キホーテは日本のものを適正な価格で売ることを目的に、安くバリエーション豊かな日本の食品や商品を幅広く販売し、現地で人気を得ています。
AEONは、出店するエリアを選択・集中して出店することで、AEONとしてのブランドを確立し、地域全体における売上アップを目指しているのが特徴です。
日本のブランディングを生かしつつ、売上アップを見込める地域に積極的に投資をしていくことが、海外マーケティングで成功するための基本だといえるでしょう。