越境ECに興味がある方々に進出先の国・地域の選び方を紹介します。越境EC参入のよくあるパターンで成功しやすいのはどれか、パターン別のおすすめの候補国・地域もお伝えしましょう。
目次
まずはノックアウト条件の調査から
越境ECの参入国・地域の選定では、まずノックアウト条件(致命的な条件設定)の有無を調査し、次に個別事情を考慮していきます。
国内営業と違って、越境ECは海外展開になるため、軌道修正が簡単ではありません。「こんなはずではなかった…」と後悔しないよう、慎重にノックアウト条件を洗い出し、その後、参入先の国・エリアを絞りこんでいきましょう。
越境ECのノックアウト条件とは
越境ECのノックアウト条件とは、どう努力しても当該国・地域ではEC展開が不可能な条件、たとえば各種規制やマーケットニーズを指します。
自社もしくは商品がノックアウト条件に該当すると、あらかじめ承知していなくても、越境ECの参入前に失敗(撤退)が確定します。そのようなことにならないよう、越境EC参入を検討する一番初めの段階で問題がないか確かめましょう。
以下に、越境ECで代表的なノックアウト条件を紹介します。
法規制/業界規制
【各国・地域の規制】
- 輸入規制
- 通関・関税
【業界規制】
- 食品:添加物、許認可、ハラル認証
- 医薬品:販売ライセンス・許認可
- 機械・通信ハイテク:電波法、電気通信事業法
国や地域によっては、保護政策が敷かれています。さらに、業界標準が日本と異なる場合、対応できないこともあります。また、宗教上の戒律や慣習による制約は無視できません。
注意したいのは、販売先でなく輸入元(日本)に遡っての規格適用です。たとえば、販売先の国(地域)の規格に沿った製造環境/工程の整備だったり、取引先(卸や代理店)から農業生産の持続可能性に関する認証を求められることがあります。
最近、個人情報保護にともなうデータ規制の強化がみられます。EUなどの先進国のほか、中国や東南アジアの新興国でも消費者保護のもと、情報データの扱いに関する法規制が整備されつつあります。
特に新興国では経済成長の速さもあいまって、法令や規制、当局の運用が変わるのも早く、随時キャッチアップと対応が必要です。
既存品の仕様との相性の悪さ
既存商品のラインアップや仕様が消費者の特性や嗜好と乖離していると、選びづらかったり、使いにくいため売れません。市場規模や販売ロット次第で採算割れの恐れも生じます。
【主な仕様の違い】
- サイズ
- ボリューム
- カラー
- 機能
まず、サイズ関係では現地の人々の体格に合ったサイズ展開が必要です。日本人向けのサイズ展開をそのまま持ちこんでも、長さと横幅のバランスが合わないため現地の方が着られません。
使う量が日本人の感覚と違う場合、容量や量目変更を余儀なくされることもあります。
インテリアや化粧品など、色の好みや形が日本人と異なる場合、商品ラインアップを練り直さなければなりません。また、習慣や気候の違いなどで、商品の売りである機能が通用しないこともあります。
商習慣の違い
越境ECでは、現地との商習慣の違いやギャップからミスマッチが起こる場合があります。
【商習慣の相違例】
- 返品制度
- サポート
- 商品単価
たとえば、米国や中国では消費者が気に入らない場合の無条件返品制度があり、日本とは返品に対する感覚が異なります。
現地語でサポートできないと消費者からの信用は得にくいです。チャットサポートが主流の中国ではレスポンスの速さも重要です。
日本と新興国の消費者の購買力の差があると、商品単価が見合わないこともあります。複数個以上のまとめ買いによる大幅値引の商習慣がある国・地域も存在するため、単身者向けの特化品は販売しにくいでしょう。
国・エリアの絞り込み方法あれこれ
越境EC先の候補にノックアウト条件が判明したら対象から外し、次に具体的な参入先の絞り込みに入ります。
越境EC先の選定において、一般企業の典型的な判断基準に以下の4つがあげられます。
- 市場との相性(△)
- 自社リソース(◯)
- 理念・社内方針(◎)
特に決まった基準なし(?)
市場性から判断
越境ECに限らず、ある市場が自社に有利と判断すれば、企業が参入を検討するのは当然です。
越境ECの場合、以下のような理由で参入を決定するケースがあります。
- 明らかに潜在顧客が多いという仮説が成立
- 対象国の購買力と商品単価の合致
- 対象国の商習慣とのギャップが小さい
【問題点】
参入先の選定理由としては妥当といえますが、実務レベルであまり参考にならないことがほとんどです。なぜなら市場のポテンシャルが高くても、越境ECを展開するノウハウに乏しい、言語・地理的な障壁があり情報が得にくい環境下では難易度が高いためです。
ノウハウがなければ現地企業との提携も考えられますが、規模や信用力が必要になる可能性があり、中小企業にはあまり適しません。
自社リソースから判断
越境ECの対象に関連するリソースを既に持っている場合、参入の難易度が下がります。
- 対象国の事情に詳しい人材を保有
- 対象国に駐在員事務所/現地法人あり
学習コストや事業化、展開スピードを考慮すると、最もおすすめな選択基準です。
海外展開において現地事情の理解は必須であり、現地に拠点があれば一次情報を集めやすいです。対象国で教育を受けた社員や外国人材が自社にいれば、活用できないか検討しましょう。
社内通達・企業理念から判断
越境ECの対象国選定で社内検討プロセスがスムーズに進みやすい、やや特殊なケースです。
- トップダウンによる決定
- 企業理念からの妥当性
参入方針や越境EC展開の方向性が明確なため、事業化が最も実現しやすいパターンです。経営層が直接推進にあたれば、リソースも整いやすい。また、全社的な認識合わせが済んでいれば、企画や施策定の決定・実行も早く進められるでしょう。
特に基準なし
越境ECは市場参入の一つの選択肢としてとらえている企業もあるでしょう。
実は、越境ECの参入で、無理に国・地域を絞り込む必要はありません。
日本企業が比較的取り組みやすい国や地域に参入してみてはいかがでしょうか。
当社ではこのようなケースの場合、「米国」「シンガポール」「台湾」を推奨しています。言語の汎用性、市場性、マーケット規模からテストに最適なためです。自社商品の特徴から、グローバルな大市場の米国か、日本に近いアジア・中華圏かを選びましょう。
越境ECプラットフォームだけでなく、独自ECストアを展開する場合、非英語圏であっても英語対応をまず行い、その後に繁体語の対応をしていくのがベターです。
まとめ
越境ECをどの国・地域で展開するかで、その後の成否が左右されます。参入先選定にあたり、ノックアウト条件だけでなく、参入理由別のおすすめ候補もぜひ参考にしてください。
越境EC事業に興味がある、または海外でのEC展開で気になる点がありましたら、お気軽にお問い合わせください。