「売り上げを伸ばしたい」「今年こそ新規顧客を増やしていきたい」毎年同じ悩みを抱えていませんか。フリーランス、自営業、会社員とほぼ9割の方は同じ悩みを抱えているかと思います。
誰もが抱える悩みの種を取り除くチャンスが、越境ECには転がっています。記事の後半でも詳しく解説していますが、越境ECによって成功している日本企業は数多く、中国やアメリカの消費者の購入額は年々伸びている傾向です。海外とのやり取りが活発ということは、日本の商品やサービスを求めている消費者が世界にたくさんいるといえるでしょう。
本記事では、越境ECの概要を始め、初めてでも成功確率を高められる方法や越境ECのメリットなど、知識ゼロでも全体像を理解できる内容にまとめています。
越境ECについて理解を深められれば、ビジネスチャンスを掴む選択肢が増え、会社経営の土台をさらに固められる可能性が広がります。今後10年20年と、継続して経営できる会社へと成長するためにも、早速読み進めていきましょう。
目次
越境ECとは
インターネット通販サイトを経由した、国境を超えての電子商取引のことを越境ECといいます。もっと簡単に説明すると、主に海外のECサイトで自社商品を販売する、あるいは国内のECサイトで海外商品を販売するビジネスモデルのことです。
ECサイトの身近な例ですと『Amazonジャパン』『楽天市場』や『Yahoo!ショッピング』などが分かりやすいでしょう。今日までにこれらの国内ECサイトを通じて、出品者が海外の方の商品を購入した経験はありませんか。海外製のキャンプ用品、海外製の服など、購入品の出品者が国外の方であった場合、既に越境ECを経験されています。
逆に、日本人の方がアメリカのECサイト『Amazon』や『Walmart』に出店し、日本からアメリカへ商品を発送することも越境ECになります。
販売したい国で実店舗を構えなくても自社商品やサービスを販売できるのが、越境ECの最大の魅力といえるでしょう。日本企業においても大手のみならず、中小企業も乗り出しており、創業からわずか6年で越境ECの売上が40億円に到達した企業も存在しています。
各国で活気に溢れている越境ECですが、実際の現状はどうなのでしょうか。高まる気持ちを少し押さえて、実情をみていきましょう。
越境ECの現状
経済産業省の資料によると、2019年から2021年にかけて越境ECでの消費者の購入額は、日本は約600億円、アメリカは約5,000億円、中国は1兆1,000億円と伸びています。
(参照:経済産業省 https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220812005/20220812005.html)
また、令和3年における日本・アメリカ・中国の3カ国間の越境ECの取引額にあっては、次の図の通り、各国の購入額が前年よりも増えています。特に、中国の消費者による日本やアメリカからの越境ECの購入額は、約4兆7,000億円にもなり、昨年に続き増加傾向です。
さらに、日本からの越境ECの販売額は、中国に対して約2兆1,000億円、アメリカに対して約1兆2,000億円と合計で約3兆3,000億円に達しています。このことから、日本製品を買いたい人が多いと伺えるのではないでしょうか。
(参照:経済産業省 https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220812005/20220812005-h.pdf)
これらの資料から、日本人向けの販路を増やすより、中国やアメリカで越境ECをした方が、今後の売上は見込めそうと感じた方も多いのではないでしょうか。ただ、越境ECの購入額が伸びているとはいえ、全ての商品が人気ということではありません。
中国の消費者、アメリカの消費者がどんな商品を購入しているのか、何に惹かれて購入しているのか把握することが大事です。では、越境ECで成功するにはどうすればよいのでしょうか。
越境ECで成功確率を高める方法
普段のビジネスと同様で越境ECにおいても「市場把握」と「消費者理解」はとても大切です。そこで、実際に売れているカテゴリーや消費者と商品の接点について探っていきましょう。
販売する商品を見極める
2021年において、中国やアメリカの消費者が最も購入した商品は何か分かりますでしょうか。日用品、ベビーグッズやファッション関係などを想像した方もいるかと思いますが、BEENOSの調査によると「おもちゃ・アニメ・ゲーム」関連の商品が最も人気だったとのデータがあります。
また、同じ調査では、ヨーロッパ、東アジア、東南アジア、北米のエリアでの第1位が「おもちゃ・ゲーム」、第2位が「ファッション」とTOP2のカテゴリーが同一なのも分かりました。
なぜ「おもちゃ・ゲーム」の売上が高かったのか。その原因として、世界でユーザー数を拡大しているNETFLIXやAmazonなどのVODを通じて、『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』など日本のアニメが世界に配信されたことが挙げられるかもしれません。
越境ECで食品や生活雑貨などの販売を検討中の方は、取り組み始める前に、販売する商品を見極めることが大事です。海外の人が日本の商品やサービスの何に興味を示しているのか、その見極めが成功と失敗を左右する結果となります。
SNSの活用
経済産業省の報告によると、越境EC利用者の多くは商品を見つける際、SNSの活用、家族や友人の口コミを参考にしていることが分かりました。
なぜ周りの意見を大事にする人が多いのか。その理由は、中国のビジネスの実態から読み解けるかと思います。
現代でも、実店舗やオンライン上で偽物が数多く出回っているようで、商品の広告にあっては、品質の誇大広告や中古品なのに新品表示するなど、偽物と悪質な広告に頭を悩ませる消費者が多くいるといわれています。
そのため、信頼できる家族や友人の口コミを参考にし、購入する消費者が多い傾向にあります。SNSで情報発信を行いつつ、海外ユーザーの信頼を得られれば越境ECで成功する確率を高められます。
越境ECのメリット3つ
ここまでの内容でも越境ECに興味を持った方もいるのではないでしょうか。他にも魅力があり、さらに3つのメリットを解説していきます。
新たな顧客にリーチできる
世界に情報を発信するため、自社商品を知る人が増える可能性を秘めています。売上には認知度と配下率を上げることが重要で、越境ECを活用すれば、認知度と配下率を高めることに繋がります。
さらには、購入者から友人や家族と身の回りの人に口コミが伝われば、予想以上の新規顧客にリーチできる可能性も考えられます。
また、越境ECの利用者のなかには、日本への旅がきっかけとなった人も多いようで、実際に目で見て触れて良いと感じた経験から、越境ECを利用する流れが主流なのかもしれません。
越境ECを展開することで、消費者の購入機会を増やせるのは間違いないといえるでしょ。
低コストで海外展開できる
低コストで海外出店できるのも越境ECのメリットです。もし実店舗を海外に出そうとすると、テナント料、人件費、光熱費や設備投資費といくらお金があっても足りないほどコストがかかります。
一方で、越境ECサイトを利用する場合にかかる費用は、月額の利用料金や出品数に応じた利用料金などです。越境ECサイトにより相場は変わるものの、実店舗での販売コストと比較すると、初期費用にかかるコストは雲泥の差でしょう。
初期投資の削減は、ビジネスを成功させる上で重要なことです。これを実現できるのが越境ECなのです。
海外ユーザーの情報を入手できる
越境ECサイトによっては、購入者情報を入手できるサイトもあります。購入者情報を入手できることで、今後の出品計画や情報発信の改善など、将来のマーケティングに役立ち、ライバルとの競争も優位に進められることでしょう。
また、新規顧客からのコメントをきっかけに、商品の新たな改善点やアピールポイントの発見に繋がるかもしれません。
越境ECは新規顧客の獲得、低コストでの海外出店、購入者情報の入手など、ビジネスを広げるチャンスがゴロゴロしています。チャンスを拾い逃さない人が、ビジネスで勝ち残っていくのでしょう。
越境ECの注意点
残念ながら、ビジネスを伸ばせる魅力が詰まった越境ECにも注意点はあります。注意点を知らずに始めるのは、自ら落とし穴にかかるようなもの。越境ECを成功させるためにも注意点を知っておきましょう。
低価格での販売が難しい
会社の商品の魅力は何でしょうか。使いやすい、壊れにくい、汚れにくいなど様々あるかと思いますが、安く手に入ることをアピールしている商品では、越境ECでの成功は難しいかもしれません。
というのも、海外に自社の保管庫や在庫がある場合は別として、基本的に配送料や手数料、関税などにコストがかかるためですり
そのため、低価格でアピールするにしても海外製品の方が安くなる、若しくはあまり値段が変わらない可能性が考えられます。
販売する国で法律が異なる
例えば、日本でインターネットサイトを開設、運営する場合と中国で同じことをする場合、全く同じようにできると思いますか。
実は、中国でインターネットサイトを開設、運営するには、許可が必要で「ICPライセンス」を取得しなければいけません。
また、自社サイトを立ち上げず中国のECサイトに出店する場合でも、中国法人を設立する必要があり、営業許可証の明示や納税義務が発生します。
代表例に中国を挙げましたが、他の国においても日本と同じ要領が通用しないリスクはあります。必ず、国の法律を調べる必要があります。
各国で輸入制限を設けている
アメリカでは、肉や肉類を含む加工食品、食品や飲料については輸入制限しています。また、医薬品についてもFDAの販売許可がないと、輸入を許可してくれません。
中国でも同様に、輸入について規制しており、化粧品、医薬品などを中国に輸出したい場合には「CFDA」への登録が必要です。さらには、「CCC」認証がないと輸入・販売が認められておりません。
他の国でも輸入制限を設けているため、販売したい商品と輸入制限のルールを照らし合わせながら確認することを推奨します。
日本企業の成功事例
いくつもの企業が越境ECに取り組んでいるなかで、「Shopify」を利用している企業を2つ紹介します。
Fake Food Japan(フェイクフードジャパン)
名前のとおり「食品サンプル」を海外の消費者に販売してる会社です。食品サンプルの技術を活かし、iPhone、USBメモリやイヤホンジャックの電子機器の装飾から、ペンダントやイヤリングなどの装飾品も手がけています。
食品サンプルは、外国人観光客の間で人気の商品ということもあり、越境ECにおいても足元が揺るがないビジネスではないでしょうか。
BENTO&CO(ベントーアンドコー)
京都に本店を構える、弁当箱の販売事業を行う会社です。個人の越境ECサイトを立ち上げ、今では世界105カ国に輸出をしているそうです。売上の7割は、海外の法人や個人のお客様で、残り3割の売上は、実店舗と日本向けサイトの購入と、越境ECサイトの成功事例といえるでしょう。
弁当箱の販売を行うきっかけは、経営者の母親が雑誌で日本の弁当箱を見て感動したことだったそうです。弁当箱のように、日本にしかない、日本だから買いたいと思ってもらえる商品であると、越境ECで成功する確率は高まりやすいのかもしれません。
6.まとめ
これまで、越境ECについて網羅的に解説してきました。改めて、本記事のポイントを振り返りましょう。
・越境ECの取引額は年々増えている
・取り組む前に、国の法律や輸入制限について調べる
・越境ECで成功の鍵は、SNSの活用と販売商品の見極め
越境ECに取り組んでいる企業は大手だけではありません。事例で紹介したように中小企業も参加しており、支援会社も多くあるためハードルは低くなっていると思います。
今後も継続した会社経営を考えているならば、越境ECの波にあなたも乗るべきです。ビジネスの良い波に乗り遅れないよう、越境ECに取り組んでみてはいかがでしょう。