オーストラリア連邦政府は2025年までに全てのサービスをデジタル化し、世界でトップ3のデジタル政府の1つになることを目指した新しい政策「デジタル政府戦略」をまとめました。
今回は、 そんな「デジタル先進国」オーストラリアへの事業進出を検討している方に向けて、同国の2022年における基本的なデジタルマーケティングトレンドについてご紹介します。
目次
オーストラリアの概要
2022年1月現在、オーストラリアの人口は2,593万人で前年比プラス1.1%、28万4,000人程度の増加が見られます。また男女比は50.2%が女性、49.8%が男性と、やや男性の方が多い結果となっています。
オーストラリアの人口の86.5%は都心部に住んでおり、ほとんどが進学や就職に伴い都心部へ移住していると見られます。また年齢の中央値は38.3歳で、人口の年齢層別内訳を見てみると、最も多い人口が65歳以上で16.8%、続いて25歳から34歳で13.9%、そして35歳から44歳で13.8%となっています。
オーストラリアで話されている公用語は英語で、現在では人口の78%が家庭で英語を使用しています。ただ、移民大国として知られるオーストラリアでは、英語だけでなく様々な国の言語が使われているケースもあります。
オーストラリアはキリスト教徒が約60%を占め、約22%が無宗教となっています。その他にもイスラム教、ヒンズー教、仏教、ユダヤ教などが約10%と他信仰国家でもあります。
2021年のオーストラリアのGDPは1兆6332億ドルで、前年比マイナス0.3%となっています。2020年はコロナショックの影響からマイナス成長となりましたが、1992年から2019年まで先進国で最も長い28年連続のプラス成長を達成しました。IMFデータによると、2021年以降は回復が見込まれています。直近5年の数値は以下の通りです。
2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
各目GDP(10億ドル) | 1,416.98 | 1,386.64 | 1,357.32 | 1,633.29 | 1,748.33 |
各目GDP(10億オーストラリア・ドル) | 1,894.00 | 1,993.95 | 1,965.92 | 2,172.57 | 2,382.61 |
一人当たりの各目GDP(ドル) | 56,293.33 | 54,254.86 | 52,847.68 | 63,529.29 | 67,464.39 |
一人当たりの各目GDP(オーストラリア・ドル) | 75,244.33 | 78,016.93 | 76,543.98 | 84,505.24 | 91,939.84 |
経済成長率(%) | 2.8 | 2.0 | -2.2 | 4.7 | 4.2 |
物価上昇率(%) | 1.93 | 1.59 | 0.89 | 2.82 | 3.94 |
失業率(%) | 5.30 | 5.16 | 6.49 | 5.10 | 4.03 |
※ 2022年の数値はIMFによる2022年4月時点の推計
出展:IMF – World Economic Outlook Databases(2022年)
オーストラリアのデジタルマーケティング概況
ここから、オーストラリアのデジタルマーケティングに関する情報をご紹介します。まずオーストラリアにおけるインターネットユーザーの数ですが、2022年2月時点で2,360万人を記録しています。インターネット普及率は総人口比でみると91%にも達していて、おおむね全ての人がインターネット利用環境にあります。
オーストラリアのインターネットユーザーは2021年から2022年にかけて、前年比プラス3.4%の77万人増加しています。また1日におけるインターネット利用時間が6時間13分と、勉強や読書などの活動と比べると最も多くの時間を割いており、その内の86%がスマートフォンを媒体として利用しています。
インターネットを利用する主な目的としては、「情報収集」が66.3%、「家族や友人との連絡」が62.2%、「方法調べ」が60.9%となっています。
オーストラリアにおけるSNSユーザー数
オーストラリアでは総人口の82.7%にあたる2,145万人のSNSユーザーが存在し、複数のサービスを利用しています。2021年から2022年にかけて、前年比プラス4.6%の95万人増加したことが明らかになっています。このうち女性ユーザーが54.5%、男性ユーザーが45.5%と、やや女性ユーザーが多くなっています。
1日の平均SNS利用時間は1時間57分で、1ヶ月の利用SNS数は平均6.1コンテンツとなっています。
SNSを利用する主な目的は、54.3%が「友人や家族と連絡を取るため」で、36.8%が「暇つぶし」、26%が「ニュースを読むため」としています。
ここで、それぞれの主要なSNSの人口について、確認しておきましょう。
Facebookのユーザー数
オーストラリア国内で最も使用されているSNSであり、76.8%が使用しています。2022年時点で、オーストラリアにおけるFacebookのユーザー数は1,500万人にも達しています。広告リーチが総人口の57.9%に相当し、このうち53%が女性で、47%が男性となっています。
60%以上のユーザーがスマートフォンのみを利用してアクセスしており、パソコンとスマートフォンの両方でアクセスしているユーザーが37.4%、パソコンからのみアクセスしているユーザーが2.4%と、圧倒的にスマートフォンからのアクセスが多いことがわかります。
また、1ヶ月あたりの平均利用時間が17.6時間で、前年比マイナス3%となっています。
Youtubeのユーザー数
世界最大の動画共有サイトであるYoutubeのオーストラリアにおけるユーザー数は、2022年の時点で2,130万人に達しています。Youtube広告のリーチ数は、オーストラリア人口の82.2%にあたる数となっています。その内、女性ユーザーが51.1%で、男性ユーザーは48.9%となっています。
Youtube内で検索されているワードとしては、1位「song」で2位「songs」、3位「music」となっており、音楽を楽しむツールとして利用しているユーザーが多いことがわかります。
1ヶ月あたりの平均利用時間17.1時間で、前年比プラス5%となっています。
Instagramのユーザー数
写真共有サービスのInstagramでのユーザー数は、2022年時点で1,275万人(前年比プラス8.1%の95万人増)となっています。Instagramの広告リーチ数は総人口の49.2%に相当します。しかしInstagramには年齢制限があり13歳以上しか利用できないことになっているため、他のSNSよりもユーザー数は若干劣るものの、若年層に対して強力な広告効果を有しています。
広告オーディエンスの56.1%は女性で、43.9%が男性となっており、男性よりも女性にとって有力なSNSでもあります。また「国内で人気のあるSNS」第2位にランクインしており、1位のFacebookに続いて16.2%の支持を獲得しています。近年のInstagram人気がこの数字から伺えます。
1ヶ月あたりの平均利用時間は8.3時間で、前年比プラス2%となっています。
TikTokのユーザー数
短い動画を共有できる新興SNSのTikTokは、四半期プラス7.5%の51万人増で、18歳以上のユーザー数が738万人に達しており、今一番勢いがあるSNSです。オーストラリアの18歳以上の成人全体における37%にTikTok広告はリーチしており、利用者の55.3%は女性です。
「国内で人気のあるSNS」ではFacebook、Instagramに続いて第5位にランクインし、6%の支持を得ています。
1ヶ月あたりの平均利用時間は23.4時間と他のSNSに比べ長く、伸び率もプラス40%と他のSNSに比べて最も高くなっています。
Facebook Messengerのユーザー数
Facebookのメッセージ機能を担うFacebook Messengerは、オーストラリアにおいて約49万人のユーザー数を抱えています。オーストラリアにおけるFacebook Messengerの広告リーチ数は総人口の約2%であり、52.8%が女性で、47.2%が男性ユーザーになっています。
国内ではFacebookに続いて2番目に多く使用されており、66.4%の支持を獲得しています。
LinkedInのユーザー数
就職また転職活動専用だと知られるSNSとして世界中で人気のLinkedInのオーストラリアのユーザー数は、前年比プラス8.3%の1300万人に達しています。
広告のオーディエンス数はオーストラリア人口の50.1%で、そのうち46.1%が女性、53.9%が男性ユーザーとなっており、他のサービスに比べてやや男性ユーザーが多くなっています。
SnapChatのユーザー数
24時間でアップした写真や動画が削除されるSnapChatのオーストラリアにおけるユーザー数は、725万人に達しています。
広告のオーディエンス数は総人口の28%に相当し、53.6%は女性ユーザーで、46.4%は男性ユーザーでした。近年はInstagramなどの他のサービスにトレンドが奪われている影響により、ユーザー数は前年比マイナス4%の30万人減少になりましたが、いまだにオーストラリアのインターネットユーザーの30.7%に広告はリーチしており、女性中心に人気のあるサービスであるため、無視できないSNSであることがわかります。
Twitterのユーザー数
少ない文字数のつぶやきが可能なTwitterは、オーストラリアにおいては前年比マイナス5.1%の370万人のユーザー数となっています。この数字はオーストラリアの人口の14%にあたり、相応の発信力を抱えていることがわかります。
広告のリーチ数については、オーストラリアのインターネットユーザーの約16%にあたります。
Pinterestのユーザー数
Webサイト上にある画像を集めてブックマークできるWebサービスで、商品の認知拡大やブランディングなど、企業にも幅広く利用されているPinterestは、オーストラリアにおいては410万人のユーザーを抱えています。他のSNSに比べてユーザー数は劣るものの、広告のリーチ数はオーストラリア総人口の15.8%に相当します。
ユーザーの77.6%が女性で、15.1%が男性と、圧倒的女性人気の高いSNSとなっています。
検索エンジンシェア率
オーストラリアにおける検索エンジンのシェア率は、Googleが約94%を占めるなど、圧倒的な人気を誇ります。続いてBingやYahoo!がランクインしますが、どちらも5%以下にとどまるなど、影響力はGoogleが圧倒的です。
オーストラリアの検索言語
オーストラリアでは公用語が英語ということもあり、検索キーワードもほとんどが英語です。ただ、海外の情報を仕入れる場合は、その他の言語が使われているケースもあります。
新しい商品・ブランドを何で最初に知るか
オーストラリアで新しい商品やブランドを認知するにあたって、有力な媒体はSNSです。オーストラリアでは約25%のユーザーが新商品の情報をSNSから仕入れることが明らかになっており、ブランド認知を高める上でSNSが重要な役割を担っていることがわかります。
TVCM | 37.3% |
検索エンジン | 37.3% |
口コミ | 33.6% |
店舗ディスプレイ・プロモーション | 25.9% |
ソーシャルメディア広告 | 24.6% |
ブランドウェブサイト | 24.5% |
パンフレット・カタログ | 22.1% |
TV番組・映画 | 20.2% |
ウェブサイトの広告 | 19.7% |
通販サイト | 19.0% |
会社メール・レター | 18.1% |
ソーシャルメディアコメント | 17.2% |
消費者レビューサイト | 17.1% |
モバイルアプリ内の広告 | 15.7% |
ラジオ広告 | 15.2% |
商品・ブランドを何を通じて調べるか
ブランド認知がSNSを通じて行われる一方で、ブランドについての深堀りもSNSで行われています。30.3%のユーザーはSNS経由で更なる追加情報を獲得しており、消費を大きく支えるツールとして機能していることがわかります。
デジタルマーケティングとSNSマーケティングは、少なくともオーストラリアにおいては同義的な手法として機能しつつあります。
検索エンジン | 59.6% |
ブランドウェブサイト | 38.3% |
消費者レビュー | 35.7% |
SNS | 30.3% |
価格比較サイト | 26.2% |
専門家のレビューサイト | 18.7% |
クーポンサイト | 17.8% |
Q&Aサイト | 16.4% |
モバイルアプリ | 15.2% |
フォーラム・メッセージボード | 13.5% |
ビデオサイト | 13.1% |
ブランド・商品のブログ | 12.1% |
メッセージ・ライブチャット | 10.6% |
オンラインピンボード | 7.5% |
VLOGS | 7.5% |
デバイスの比率(スマートフォン)
オーストラリアにおけるインターネット利用を大いに支えているだけあり、スマートフォンの保有率は非常に高いと言えます。実にオーストラリアの約96.6%の人がスマホを保有しており、パソコンが77.2%、タブレットが47.5%となっているので、他のデバイスと比べても圧倒的なシェアを誇ります。
スマートフォンの中で最も利用されている機種はApple iOSで全体の56.95%を占めています。続いてAndroidが41.7%を占めています。Apple iOSは、前年比プラス4.8%とiPhone人気が継続していることがわかります。一方でAndroidは、前年比マイナス7.8%と減少しています。
スマートフォンの1日あたりの平均利用時間は3時間53分で、アプリの総ダウンロード数は7億を超えていますが、前年と比べるとマイナス5%と減少傾向にあります。アプリ内課金は年間20億円となっており、前年比プラス21%の増加傾向にあります。
デジタルマーケティングを考える場合、意図するユーザー像としてはスマホユーザーが適切と言えるでしょう。
まとめ
今回はオーストラリアのデジタルマーケティングトレンドについてご紹介しました。
デジタル先進国のオーストラリアでは、スマートフォンやインターネット、SNS関連について十分に成熟しています。他の欧米圏と比較しても、検索言語やSNS使用率など特別に大きな違いはないので、他の国で培った経験や能力があれば、比較的マーケティングしやすい国だといえます。
オーストラリアをターゲットにして事業展開を検討している方は、本記事でご紹介した内容を十分に活用し、マーケティングトレンドを掴みましょう。