フィリピンのデジタルマーケティングトレンド2022(Web/SNS事情/EC、マーケット傾向分析)

フィリピンは多くの島によって構成される、世界有数の島国です。また日本とも地理的に距離が近いだけでなく、実際フィリピンは世界随一の新日国家と言われています。

そんな日本にとっても注目度の高いフィリピンを今回は掘り下げ、同国におけるデジタルマーケティングの概況についてご紹介していきます。 

フィリピンの概要 

フィリピンには7641もの島があり、国土面積は298,170平方キロメートルと日本の約8割の大きさを持つ国家です。 人口は2022年1月時点で1億1180万人でした。 この人口は2021年から2022年の間で150万人(+ 1.3%)増加していて、今後も増加傾向にあることが予測されています。 

また、フィリピンの国語及び公用語はフィリピノ語ですが、もう一つの公用語である英語を話せる国民が多く、他にも180以上の言語が存在します。 宗教については、フィリピンはASEAN唯一のキリスト教国家であり、国民の83%がカトリックを信仰しています。 

一人当たりのGDPは3,323米ドルで、名目GDPは3,614億米ドルです。直近5年の数値は以下の通りです。

2018年2019年2020年2021年2022年※
各目GDP(10億ドル)346.842376.823361.489393.612411.978
各目GDP(10億フィリピン・ペソ)18,265.1919,517.8617,938.5819,387.2121,393.31
一人当たりの各目GDP(ドル)3,279.523,512.203,323.433,571.803,686.84
一人当たりの各目GDP(フィリピン・ペソ)172,704.15181,916.90164,922.17175,927.50191,451.36
経済成長率(%)6.36.1-9.65.66.5
物価上昇率(%)5.312.3922.3933.9274.261
失業率(%)5.3255.110.47.7585.833

※ 2022年の数値はIMFによる2022年4月時点の推計 

出展:IMF – World Economic Outlook Databases(2022年4月版) 

フィリピンのデジタルマーケティング概況 

続いてフィリピンにおけるデジタルマーケティングを支えるインターネット環境について、紹介します。フィリピンのインターネットユーザー数は7601万人で、総人口の68.0%の人がインターネットを利用できる環境にあります。 

インターネットユーザーの数は増加傾向にあり、同国のユーザー数は2021年から2022年の間に、210万人(+2.8%)の増加が見られました。 現在、フィリピンでオフライン環境にある人は3577万人と見られており、これは人口の32.0%に当たります。このようなデータを見ると、フィリピンは他のアジア地域と比べてインターネット普及が進んでいないと言えるでしょう。 

またフィリピン人の1日あたりのインターネット利用時間は、平均で10.27時間にのぼり、昨年比では29分(−4.4%)減りました。 しかし、テレビを視聴している平均時間が3.35時間、ラジオの視聴時間が0.50時間であることを考えると、フィリピンではインターネットが国民にとってかなり身近な存在であることが分かります。 

フィリピンにおけるSNSユーザー数 

次に、フィリピンにおけるSNSユーザーの数を見ていきましょう。フィリピンでは現在、9205万人ものSNSユーザーが存在し、全人口の約82.4%がソーシャルメディアを活用しています。 

SNSユーザー数は2021年から2022年の間に310万人(+3.4%)増加していて、多くの国民にとってSNSは生活に欠かせない存在となりつつあります。 

1日あたりの平均利用時間は4.06時間で、前年よりも約3.5%減少しています。 

対象SNSユーザー数
Facebook8,385万人
Youtube5,650万人
Instagram1,865万人
Tiktok3,596万人
Facebook Messenger5,515万人
LinkedIn1,100万人
SnapChat1,060万人
Twitter1,050万人
引用:Meta,Google,Twitter,Tiktokなど各社のオープンデータ
対象SNS1カ月に利用する割合
Facebook96.2%
Facebook Messenger94.4%
Instagram75.7%
TikTok67.9%
Twitter59.2%
Pinterest44.6%
Telegram36.7%
Viber36.2%
SnapChat33.6%
Discord31.6%
Skype29.3%
Whatsapp27.8%
LinkedIn26.6%
Reddit22.2%
IMessage16.7%
引用:GWI.com

Facebookのユーザー数 

世界で圧倒的なユーザー数を誇り、SNS随一の人気を集めるのがFacebookです。フィリピンでも2022年初頭で8385万人と多くのユーザーを抱えています。ほとんどのインターネットユーザーがFacebookを利用していることが分かります。 

また2022年の開始時点で、フィリピンにおけるFacebookの広告リーチは総人口の75.0%に達しており、広告媒体としても訴求力の高さが見受けられます。さらに13歳以上のFacebook利用対象ユーザーに限定すると、そのリーチ数は100%となり、Facebookはフィリピンにおいてデジタルマーケティングの非常に重要な鍵と言えるでしょう。 

Youtubeのユーザー数 

世界的動画共有プラットフォームであるYoutubeは、フィリピンにおいても多くのユーザーに利用されています。フィリピン国内でのYoutubeのユーザー数は5650万人で、Facebookと比較するとやや少なめとも言えます。2022年の広告リーチ率は、フィリピンの総人口比で50.5%でした。 

またインターネットユーザーに限定すると、そのリーチ数は74.3%と高く、男女ともに多くの国民が活用していると分かります。YouTubeもFacebookと同様、フィリピンを対象とするデジタルマーケティングに重要なサービスと言えるでしょう。 

Instagramのユーザー数 

続いては、Instagramです。世界中に人気であるSNSは写真と動画の投稿をメインとしているサービスとよく知られます。コンテンツを探したり、友人や家族と繋がるのに、最適なアプリと言えるが、フィリピンではユーザー数が1865万人と、やや少ない印象を受けます。広告リーチ数は総人口の16.7%と低く、インターネットユーザーに限定すると24.5%となっています。また、フィリピンにおけるInstagram広告利用者の男女比は、男性が35.8%、女性が64.2%と、女性ユーザーの方が多い傾向にある点も特徴です。 

TikTokのユーザー数 

ByteDanceが運営する中国発のSNSとして世界的な人気を誇るTikTokは、フィリピンでも一定の影響力を持っています。2022年時点で18歳以上の3596万人のユーザーを同国で抱えており、若者を中心に人気を集めています。 

またByteDanceが発表する、成人に到達したフィリピン全体への広告リーチ数は、全体の49.4%に及びます。年齢に関係ない、インターネットユーザーに限定した場合、その割合は47.3%です。 

また、TikTokもInstagram同様、フィリピンでは女性ユーザーに人気のあるサービスで、ユーザー全体の34.7%が男性、65.3%が女性とかなり差があります。 

Facebook Messengerのユーザー数 

Facebookユーザー同士がリアルタイムでメッセージのやりとりを便利に行えるFacebook Messengerは、フィリピン国内にて5515万人の人々に広告がリーチしています。やはりFacebookと連動するサービスであるため、自然とユーザー数もFacebookユーザー数とほぼ同じく、多いと明らかになります。総人口で見ると、全体の49.3%にあたる数字で、インターネットユーザーに限定すると、72.6%にリーチしています。 

LinkedInのユーザー数 

ビジネス特化型SNSであるLinkedInは、フィリピンにおいて1100万人の登録ユーザーを獲得しています。広告のリーチ数は、総人口比で9.8%、インターネットユーザーに限定して14.5%です。 

LinkedInにて就職や転職活動を行うプラットフォームだけでなく、近年、LinkedInを通して情報交換や人脈作るのに、利用するユーザーが増える印象があります。ビジネス向けのSNSということで、他のSNSと比較すると年齢や属性などユーザーを選ぶサービスであると言えます。 

Twitterのユーザー数

日本では老若男女問わず、圧倒的なユーザー数を誇るTwitterですが、フィリピンのユーザー数は1050万人という。双方向性が低い印象で、他のSNSと比較するとユーザー数は少なめの理由の一つと思われます。広告リーチ数は総人口の9.4%、インターネットユーザー全体の13.8%と、デジタルマーケティングによる幅広いアプローチには若干不向きと言えるでしょう。 

フィリピンでデジタルマーケティングを展開させていく場合は、他のSNSと併用しての運用を検討しましょう。 

検索エンジンシェア率 

続いて、検索エンジンのシェアを見ていきます。フィリピンで最も利用されている検索エンジンは、94.85%で圧倒的にGoogleです。そのほかBingが2.87%、Yahoo!が1.62%と続きますが、ほとんどの人はGoogleを利用しているということになります。 

検索エンジン シェア率 前年比 
Google 94.85% -0.4% 
Bing 2.87% 6.3% 
Baidu 0.03% -50.0% 
Yahoo! 1.62% -4.1% 
YANDEX 0.02% +100% 
DUCKDUCKGO 0.15% +25.0% 
ECOSIA 0.13% -31.6% 
その他 0.33% +1.0% 
引用:Statcounter

新しい商品・ブランドを何で最初に知るか

フィリピンの人々にとって、最も新たな商品やブランドとの接点となっているのは、ソーシャルメディア広告です。48.1%の人々がソーシャルメディア広告を通じてこれらのコンテンツを発見しています。その他には、43.9%の人がTV広告、41.8%の人々が小売サイトで知ると回答しています。下記の表を見ると、広告が新たな商品・ブランドを知る接点になっていることが分かります。 

ソーシャルメディア広告 48.1% 
TV広告 43.9% 
小売サイト 41.8% 
モバイルアプリ内の広告 35.3% 
ウェブサイト内の広告 33.7% 
ブランドウェブサイト 33.3% 
口コミ 33.2% 
ソーシャルメディアのコメント 32.8% 
TV番組・映画 32.3% 
有名人・著名人の推薦 31.8% 
検索エンジン 31.8% 
VLOGS 31.6% 
専門家のブログのレビュー 31.1% 
消費者レビューサイト 29.1% 
オンライン動画のプレロール広告 29.0% 
引用:GWI.com

商品・ブランドを何を通じて調べるか 

続いて詳しい商品情報をどのような手段で調べるかについてです。フィリピンでは、SNSや消費者レビュー、検索エンジンで調べる人が多く、60.3%がSNS、53.7%が消費者レビュー、52.4%が検索エンジンと回答しています。この結果から、フィリピンでは日常的にSNSが活用されていることが分かります。 

SNS 60.3% 
お客様レビュー 53.7% 
検索エンジン 52.4% 
ブランドウェブサイト 42.3% 
モバイルアプリ 38.3% 
ブランド・商品ブログ 32.7% 
VLOGS 31.1% 
価格比較サイト 30.1% 
Q&Aサイト 27.2% 
ビデオサイト 27.2% 
クーポンサイト 26.9% 
専門家のレビューサイト 22.6% 
メッセージ&ライブチャット 17.8% 
フォーラム&メッセージボード 17.5% 
オンラインピンボード 13.3% 
引用:GWI.com

デバイスの比率(PC・スマートフォン・タブレット) 

コロナ禍の影響で、消費行動が変わることがおそらく誰でも感じるでしょう。そのうちには、SNS利用需要が高まることにより、モバイル・アプリの市場も好調に推移しています。ウェブトラフィックのシェアは下記のようになっています。 

デバイス 流入シェア 前年比 
モバイル 51.06% +14.5% 
デスクトップ 47.14% -9.8% 
タブレット 1.79% -42.3% 
その他 0.01% -50.0% 
引用:Statcounter

まとめ

今回はフィリピンのデジタル環境やデジタルマーケティング施策に関して、概要をご紹介していきました。フィリピンはアジアの他の国と比べても、まだインターネットの普及は進んでいません。しかしソーシャルメディアが多くのフィリピン人ユーザーに活用され、日常生活においても欠かせない存在となっています。経済成長とIT改革の著しいアジア有数の国であり、しかしSNS利用にはサービスによってかなりバラつきがあるため、デジタルマーケティングを行う際は注意しましょう。 

この記事を書いた人

野口慎平

GDX 事業責任者 兼 UDX株式会社ゼネラルマネージャー。
新卒で大手外資系総合コンサルティングファームにビジネス&テクノロジーコンサルタント職として就職。2016年よりプルーヴ株式会社に法人営業職として入社。慶應義塾大学理工学部・同大学院 理工学研究科電子工学修了。
海外SEOとマーケティングオートメーションを軸としたデジタルマーケティングを得意とする。
Salesforce Pardot甲子園2021優勝

取得資格:
ITストラテジスト、応用情報技術者、IPAプロジェクトマネージャ、情報処理安全確保支援士、上級ウェブ解析士、IoTコーディネーター取得
Salesforce認定アドミニストレーター