UKのデジタルマーケティングトレンド2022(Web/SNS事情/EC、マーケット傾向分析)

イギリスの首都ロンドンは金融と文化の中心地として国際的に影響力が高い街です。金融サービス業界は特に基幹産業であり、ロンドンは世界最大の金融センターとして重要な役割を果たしています。

今回は、 イギリスへの事業進出を検討している方に向けて、同国の2022年における基本的なデジタルマーケティングトレンドについて、ご紹介します。

イギリスの概要

2022年1月現在、イギリスの人口は6,835万人で前年比プラス0.4%、30万人程度の増加が見られました。また男女比は50.6%が女性、49.4%が男性と、やや女性の方が多い結果となっています。

イギリスの人口の84.4%は都心部に住んでおり、ほとんどが進学や就職に伴い都心部へ移住していると見られます。また年齢の中央値は40.8歳で、人口の年齢層別内訳を見てみると、最も多い人口が60歳以上で19%、続いて35歳から44歳で13.3%、そして25歳から34歳で13.2%となっています。

イギリスで話されている公用語は、英語です。イギリスはイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドから構成されているため、それぞれの国が土着の文化や言語を大切にしています。そのため、英語の他にもスコットランド語やウェールズ語、アイルランド語、コーンウォール語などが使われています。

イギリスはプロテスタントの英国国教会が半数以上を占め、仏教やイスラム教、ヒンズー教なども認める他信仰国家でもあります。また日本と同様に、約23%の人々は特別な信仰を持っていないという調査結果もあり、他人の宗教に干渉しない文化があるようです。

イギリスのGDPですが、2021年のGDPは3.187兆ドルと、最悪の水準となった2019年から持ち直して7.5%増加し、2年ぶりのプラス成長となりました。GDPの伸び率も前年比プラス7.5%でした。これは新型コロナウイルスの感染対策の緩和に伴って、経済活動が再開され個人消費が増えたためです。直近5年の数値は以下の通りです。

 2018年2019年2020年2021年2022年※
各目GDP(10億ドル)2,904.512,880.362,758.873,187.633,376.00
各目GDP(10億スターリング・ポンド)2,174.382,255.282,150.382,317.052,520.29
一人当たりの各目GDP(ドル)43,718.9743,121.0641,127.4447,202.5849,761.13
一人当たりの各目GDP(スターリング・ポンド)32,728.9433,763.2432,056.4834,311.0937,148.19
経済成長率(%)1.71.7-9.37.43.7
物価上昇率(%)2.481.790.852.597.41
失業率(%)4.083.834.534.504.15

※ 2022年の数値はIMFによる2022年4月時点の推計 

出展:IMF – World Economic Outlook Databases(2022年

イギリスのデジタルマーケティング概況

ここから、イギリスのデジタルマーケティングに関する情報をご紹介します。まずイギリスにおけるインターネットユーザーの数ですが、2022年2月時点で6,699万人を記録しています。インターネット普及率は総人口比でみると98%にも達していて、おおむね全ての人がインターネット利用環境にあるとみて間違い無いでしょう。

イギリスのインターネットユーザーは2021年から2022年にかけて前年比プラス0.4%の約30万人増加しています。また1日におけるインターネット利用時間が6時間12分と、勉強や読書などの活動と比べると最も多くの時間を割いており、その内の89.4%がスマートフォンを利用しています。

スマートファンの平均スクリーンタイムは前年より47分長い、5時間40分なっており、新型コロナウイルスのパンデミックによるロックダウンで、行動制限されオンデマンド・コンテンツの利用が増えたためです。

インターネットを利用する主な目的としては、情報収集が74.4%、方法調べが65.6%、家族や友人との連絡が63.5%となっています。

イギリスにおけるSNSユーザー数

イギリスでは5,760万人のSNSユーザーが存在し、複数のサービスを利用しています。2021年から2022年の間に前年比プラス8.7%の460万人増加したことが明らかになっています。このうち女性ユーザーが53.8%、男性ユーザーが46.2%と、やや女性ユーザーが多くなっています。1日の平均SNS利用時間は1時間48分で、前年よりマイナス0.1%の1分減少となっています。1ヶ月の利用SNS数は平均6.3個となっています。

対象SNS1カ月に利用する割合
Whatsapp74.8%
Facebook73.5%
Facebook Messenger58.5%
Instagram56.3%
Twitter45.1%
IMessage35.4%
TikTok31.8%
SnapChat31.2%
Pinterest30.2%
LinkedIn28.9%
Skype20.8%
Reddit20.0%
Discord12.1%
Telegram10.2%
Nextdoor9.5%
引用:GWI.com

SNSを利用する主な目的は、53.6%が友人や家族と連絡を取るためで、37.1%が暇つぶし、26.7%が新聞やニューズ記事を読むためとしています。ここで、それぞれの主要なSNSの人口について、確認しておきましょう。

WHATSAPPのユーザー数

イギリスで最も利用者の多いSNSが、WHATSAPPです。素早くバックアップしたり、どのデバイスにも簡単にインストールしたりすることができます。操作が簡単で年配のユーザーでも使いやすい製品であります。

2022年時点で、同サービスのイギリスにおけるユーザーの割合は74.8%を占めています。

Facebookのユーザー数

16歳から64歳を対象とした調査で「国内で人気のあるSNS」第1位が、21%の支持を獲得したFacebookです。2022年時点で、Facebookのイギリスにおけるユーザー数は3,505万人にも達しています。イギリスにおいてFacebookの広告リーチが総人口の51.3%に相当し、このうち54.1%が女性で、45.9%が男性となっています。

70%以上のユーザーがスマートフォンのみを利用してアクセスしており、パソコンとスマートフォンの両方でアクセスしているユーザーが27.5%、パソコンからのみアクセスしているユーザーが2.3%と、圧倒的にスマートフォンからのアクセスが多いことがわかります。

また、1ヶ月あたりの平均利用時間が15.5時間で、前年比マイナス6%となっています。

Youtubeのユーザー数

世界最大の動画共有サイトであるYoutubeのイギリスにおけるユーザー数は、2022年の時点で5,760万人に達しています。Youtube広告のリーチ数は、イギリス人口の84.3%にあたる数となっています。その内、女性ユーザーが50.6%で、男性ユーザーは49.4%となっています。

Youtube内で検索されているワードとしては、1位「song」で2位「songs」、3位「music」となっており、音楽を楽しむツールとして利用しているユーザーが多いことがわかります。

1ヶ月あたりの平均利用時間は16.1時間で、前年比マイナス4%となっています。

Instagramのユーザー数

写真共有サービスのInstagramでのユーザー数は、2022年時点で3,175万人(前年比プラス2.4%の75万人増)となっています。Instagramの広告リーチ数は全人口の46.5%に相当します。しかしInstagramには年齢制限があり、13歳以上しか利用できないことになっているため、他のSNSよりもユーザー数は劣るものの、若年層に対して強力な広告効果を有しています。

広告オーディエンスの56%は女性で44%が男性となっているなど、男性よりも女性にとって有力なSNSでもあります。また「国内で人気のあるSNS」第3位に14.6%でランクインしており、近年のInstagram人気がこの数字から伺えます。

1ヶ月あたりの平均利用時間は7.9時間で、前年比マイナス1%となっています。

TikTokのユーザー数

短い動画を共有できる新興SNSのTikTokは、四半期プラス8.7%の170万人増で、18歳以上のユーザー数が2,181万人に達しており、今一番勢いがあるSNSです。イギリスの18歳以上の成人全体における40.4%にTikTok広告はリーチしており、利用者の約60%は女性です。

「国内で人気のあるSNS」第4位にランクインし、6.3%の支持を得ています。

1ヶ月あたりの平均利用時間は27.3時間と、比較的長い時間で、FacebookやInstagramなどが前年比マイナスになっている中、TikTokはプラス37%と利用時間が増加しています。

Facebook Messengerのユーザー数

Facebookのメッセージ機能を担うFacebook Messengerは、イギリスにおいて2,730万人以上のユーザー数を抱えています。イギリスにおけるFacebook Messengerの広告リーチ数は、現地のインターネットユーザーの40.8%に達しており、55%が女性で、45%が男性ユーザーになっています。 国内では58.5%のユーザーがおり、「最も利用するSNSランキング」ではWhatsappやFacebookに続いて第3位にランクインしています。「国内で人気のあるSNS」第6位にランクインし、4.3%の支持を得ています。

LinkedInのユーザー数

求人SNSとして世界中で人気のLinkedInのイギリスのユーザー数は、3,400万人に達しています。 広告のオーディエンス数はイギリス人口の49.7%で、そのうち43.8%が女性、56.3%が男性ユーザーとなっており、他のサービスに比べてやや男性ユーザーが多くなっています。

SnapChatのユーザー数

24時間でアップした写真や動画が削除されるSnapChatのイギリスにおけるユーザー数は、2,065万人に達しています。 広告のオーディエンス数はイギリス人口の30.2%に相当し、55.5%は女性ユーザーで、44.1%は男性ユーザーでした。近年はInstagramなどの他のサービスにトレンドは奪われている影響によりユーザー数は前年比マイナス2.1%の45,000人減少になりましたが、いまだにイギリスのインターネットユーザーの30.8%に広告はリーチしており、女性中心に人気のあるサービスであるなど、無視できないSNSであることがわかります。

Twitterのユーザー数

少ない文字数のつぶやきが可能なTwitterは、イギリスにおいては1,840万人のユーザーを抱えています。この数字はイギリスの人口の26.9%にあたり、相応の発信力を抱えていることがわかります。

広告のリーチ数については、イギリスのインターネットユーザーの27.5%にあたります。

Pinterestのユーザー数

検索エンジンシェア率

イギリスにおける検索エンジンのシェア率は、Googleが約90%以上を占めるなど、圧倒的な人気を誇ります。次点ではBingやYahoo!がランクインしますが、どちらも10%以下にとどまるなど、影響力はGoogleが圧倒的です。

検索エンジンシェア率前年比
Google92.76%+0.1%
Bing4.42%-8.5%
Baidu 0.02%+100%
Yahoo!1.48%+22.3%
Yandex0.07%+40%
DuckDuckGo0.83%+2.5%
Ecosia0.33%+6.5%
その他0.09%-30.8%
引用:Statcounter

イギリスの検索言語

イギリスでは公用語が英語ということもあり、検索キーワードもほとんどが英語です。ただ、海外の情報を仕入れる場合や検索内容が難しい場合は、スコットランド語やウェールズ語など、各地域で日常的に使用している言語が使われているケースもあります。また英語といえども、アメリカ英語やイギリス英語など、同じ意味でも違う言い方をする言葉もあるので、そういった違いを理解しておく必要があります。

新しい商品・ブランドを何で最初に知るか

イギリスで新しい商品やブランドを認知するにあたって、有力な媒体はSNSです。イギリスでは22.5%のユーザーが新商品の情報をSNSから仕入れることが明らかになっており、ブランド認知を高める上でサイトが重要な役割を担っていることがわかります。

TV広告37.1%
検索エンジン36.9%
口コミ35.2%
通販サイト33.7%
ブランド・商品ウェブサイト26.7%
ソーシャルメディア広告22.5%
店舗ディスプレイ・プロモーション22.5%
ウェブサイト内の広告19.5%
TV番組・映画19.4%
消費者レビューサイト19.1%
会社メール・レター19.1%
商品比較サイト18.4%
ソーシャルメディアコメント15.9%
商品サンプル15.0%
モバイルアプリ内の広告14.8%
引用:GWI.com

商品・ブランドを何を通じて調べるか

ブランド認知がSNSを通じて行われる一方で、ブランドについての深堀りもSNSで行われています。29%のユーザーはSNS経由で更なる追加情報を獲得しており、消費を大きく支えるツールとして機能していることがわかります。デジタルマーケティングとSNSマーケティングは、少なくともイギリスにおいては同義的な手法として機能しつつあります。

検索エンジン61.7%
消費者レビュー41%
ブランド・商品サイト37%
価格比較サイト30.7%
SNS29%
専門家のレビューサイト19.8%
クーポンサイト18.1%
Q&Aサイト17.1%
モバイルアプリ14.5%
フォーラム・メッセージボード13.1%
ビデオサイト12.7%
ブランド・商品のブログ10.2%
メッセージ・ライブチャット8.8%
VLOGS7.3%
オンラインピンボード7.1%
引用::GWI.com

デバイスの比率(スマートフォン)

イギリスにおけるインターネット利用を大いに支えているだけあり、スマートフォンの保有率は非常に高いと言えます。実にイギリスの98.3%の人がスマホを保有しており、他のデバイスと比べても圧倒的なシェアを誇ります。

携帯電話からのアクセス数は2022年初めに7,184万にも達しており、これはイギリス総人口の105%に相当しています。またモバイル接続数は前年比プラス3.8%の260万増加となっています。

スマートフォンの中で最も利用されている機種はApple iOSで全体の54.7%を占めています。続いてAndroidが44.7%を占めています。Apple iOSについては前年比プラス6%とiPhoneの人気の高さが数字から見て取れます。一方でAndroidは前年比マイナス7.1%とやや下がっています。

スマートフォンの1日あたりの平均利用時間は3時間59分で、アプリの総ダウンロード数は20億を超えていますが、前年と比べるとマイナス8%と減少傾向にあります。アプリ内課金は年間40億円となっており、前年比プラス24%の増加傾向にあります。

デジタルマーケティングを考える場合、意図するユーザー像としてはスマホユーザーが適切と言えるでしょう。

まとめ

今回はイギリスのデジタルマーケティングトレンドについてご紹介しました。

イギリスはインターネットに費やす時間がかなり長く、SNSを活発に利用していることがわかります。特にスマホの普及率はほぼ100%で、インターネットも70%以上のユーザーがスマホ経由で利用しており、生活雑貨やビジネス用品、嗜好品などあらゆる消費がSNS経由で行われている様子も伺えます。

スマホユーザーの存在を念頭に置いたデジタルマーケティングが、イギリスにおいては非常に効果が高いと思われます。

イギリス向けのマーケティングを検討されている方は、ぜひ積極的にSNSを活用されることをおすすめします。

この記事を書いた人

野口慎平

GDX 事業責任者 兼 UDX株式会社ゼネラルマネージャー。
新卒で大手外資系総合コンサルティングファームにビジネス&テクノロジーコンサルタント職として就職。2016年よりプルーヴ株式会社に法人営業職として入社。慶應義塾大学理工学部・同大学院 理工学研究科電子工学修了。
海外SEOとマーケティングオートメーションを軸としたデジタルマーケティングを得意とする。
Salesforce Pardot甲子園2021優勝

取得資格:
応用情報技術者、IPAプロジェクトマネージャ、上級ウェブ解析士、IoTコーディネーター取得
Salesforce認定アドミニストレーター