円安の進行は海外事業や輸出入・株価にどんな影響を与える?メリット・デメリット、仕組みや対策を解説 

2022年5月現在、日本経済に大きな影響を与えている要因の一つとして、円安の急激な進行が挙げられます。製品やサービスの価値が短期間で下落・上昇したことで、各企業はその対応に追われています。 

また、円安の進行は日本企業の海外事業にも大きな影響を与えるため、ビジネスの見直しを図る必要もあるでしょう。今回は円安の仕組みに触れつつ、進行が海外事業に与える影響や、円安の進行に伴い日本企業が取り組むべき対策について、わかりやすく解説します。 

外国為替における円高と円安 

円高や円安といった現象は、そもそもどのような状況を指すのでしょうか。外国為替におけるこれらの仕組みについて、あらかじめ確認しておきましょう。 

外国為替について 

外国為替(がいこくかわせ)は、一言で言えば、国同士のお金を交換する取引を指します。どれくらいの額を出せば外国のお金を入手できるのか、という交換比率は日々変動しており、各国の経済事情が大きく反映されています。 

外国為替の動向を把握することで、客観的にグローバル経済の対局をつかめます。 

円高とは 

外国為替における円高とは、アメリカドルに対して円の価値が相対的に高い状況を指します。これまでは1ドルを手に入れるために100円を用意する必要があったのが、1ドルのために90円だけ用意すれば良いという取引額の変動があれば、「円の価値が上がった」、つまり円高の傾向にあると言えます。 

何を持って「円の価値が高い」とするかについて、明確なボーダーラインや数字はありませんが、過去数ヶ月、数年の取引額と比較して、1ドルを交換するために必要な円の額が小さければ、円高の経済状況であると判断できます。 

円安とは 

円高はアメリカドルに対して円の価値が高い、という状況を指しますが、円安はその逆です。アメリカドルに対して円の価値が低く、以前より多くの円を用意しなければドルを得られない、つまり外貨の獲得ができない状況を指します。 

1ドルを100円で手に入れられる時代だったのが、1ドルあたり130円も必要になった場合、大いに円安が進行していると言えるでしょう。 

また、アメリカドルは世界の基軸通貨として広く認識されており、世界で最も価値の高い通貨として知られています。そんな価値ある通貨を手に入れるために多くの円を差し出さないといけない場合、ユーロや元といった、他の国の通貨取引の際にも多くの円を必要とする傾向にあります。円の価値が下がっている円安状況下では、海外の通貨獲得の負担が大きくなっていると考えるのが適切です。 

円高・円安が与える輸出業への影響 

円高や円安の到来によって、日本のビジネスはどのような影響を受けるのでしょうか。まずは輸出業に与える影響について、確認します。 

円高の影響 

円高が進むことで、輸出業はダメージを受けるケースが一般的です。というのも円の価値が高いということは、それだけ外国からすれば「日本製品の値段が上がっている」ということになるため、客足が遠のくためです。 

これまで1台あたり1万円で購入できた炊飯器が、1台1万5,000円になってしまうと、従来なら3万円で3台購入できたところを、2台しか購入できません。これならもっと安い国の製品を買うということになり、海外からの客足が遠のくこととなります。 

つまり、円高トレンドが強力な時代においては、輸出業は圧倒的に不利であるため、国内需要の創出を進めなければなりません。 

円安の影響 

円の価値が安い時代に最も活躍できるのが、輸出業です。円高の時代とは異なり、円の価格が下がった円安の市場では、従来と同じ価格でより多くの製品を海外企業や消費者は購入することができます。 

円安トレンドが明確になった場合、国内消費ではなく海外の需要に注目し、積極的な海外輸出を検討することが大切です。 

円高・円安が与える輸入業への影響 

一方で、円高・円安によって輸入業者にはどのような影響が与えられるのでしょうか。結論から言うと輸入業者は輸出業者と正反対の影響を被ることになるのですが、ここでそれぞれのパターンについて、確認しておきましょう。 

円高の影響 

まず円の価値が高まっている場合、輸入業者は絶好のビジネスチャンス到来と言えます。従来よりも安い価格で商品を購入できるので、多くの海外製品を輸入し、国内需要を満たすことができます。 

また、海外に工場などを建設し、生産拠点を海外に移すことで、これまでよりも安く生産を実施し、コストパフォーマンスに優れた供給網を確保することもできます。 

円安の影響 

円安の時代が到来した場合、輸入業は冷え込みを迎えることとなります。従来よりも割高な価格での商品輸入となってしまい、値上げによって利益率を維持しなければなりません。コストカットに向けた企業努力が求められ、多くの成長と利益を求めることが難しくなります。 

円安の進行が海外事業に与える影響 

2022年4月現在、日本では急速な円安が進み、4月20日には20年ぶりの円安水準となる1ドル=129円台前半まで値下がりしました。 

参考:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220420/k10013591291000.html 

円安の進行によって、海外事業を展開する日本企業にはどのような影響が想定されるのでしょうか。 

コスト削減を目的とした海外進出は効果が期待できない 

まず、コスト削減を目的とした海外進出は期待できなくなるため、この時期に生産拠点を海外に移すのは控えた方が良いでしょう。 

ものづくり大国と言われた日本も、近年は多くの企業で海外進出が実現し、生産拠点を中国や東南アジアに移転するケースが増えています。しかしこれらの取り組みは、外国為替がおおむね円高の傾向にあったことや、生産拠点を設置した国々がいずれも発展途上国であったことの条件が揃っていたためです。 

しかし、現在は円安傾向が強まったことで、人件費や運送費の相対的な増加が見られます。また、生産拠点の設置先として親しまれてきたアジアの途上国における経済発展と、外貨獲得が進んだことで、わざわざこれらの国で商品を製造するメリットも小さくなってきました。 

そのため、オフショア開発や海外工場の新設といったビジネスプランを検討している場合、プランの見直しが必要になるでしょう。 

輸出業をベースとした海外進出は有効 

円の価値が下がっている円安の状況は、必ずしも悪いことばかりではありません。前述の通り、円安は外国企業にとっては少ない円で多くの製品を日本から購入できる時期であるため、国内輸出業が大きく潤う時期にあると言えます。 

海外進出とは一言で言ってもさまざまなアプローチがありますが、これから海外のマーケットを開拓し、日本の商品を各地で売り込んでいきたいと考えている場合には、円安というのは絶好のタイミングと言えるでしょう。 

円安が進む中で日本企業が取り組むべき対策とは 

円安時代の突入に際して、多くの日本企業が対策を進めています。2022年4月に行われた調査によると、調査に協力した56.5%の企業が円安対策に取り組んでいると回答しました。 

参考:https://www.j-cast.com/kaisha/2022/04/14435223.html?p=all 

優先的に検討すべき円安対策を、ここで確認しておきましょう。 

商品価格の値上げ 

最も実践が容易な取り組みの一つに、商品の値上げが挙げられます。高騰する輸入原材料費を補うべく、商品価格を相場相応に引き上げることで、円安による赤字を防ぎます。 

シンプルな方法な反面、消費者や取引先からの反発を受けやすく、客足が一気に遠のいてしまう可能性もあるため、引き上げ額や時期に注意する必要があります。 

燃料費の節約 

燃料費の節約も、円安対策の一種と言えます。運送頻度を抑えることで流通コストを抑え、燃料費の節約を実現できます。仕入れや出荷が以前ほど柔軟にできなくなる恐れもありますが、負担の増加を軽減可能です。 

その他固定費の削減 

原材料費や燃料費以外の固定費も、見直しを進めましょう。日々の光熱費や人件費、オフィス賃料など、余剰が発生している部分のカットを行い、値上げによる顧客の離脱を回避できます。 

仕入れ先の見直し 

国際市場の変化に伴い、仕入れ先をより安いところに切り替えることも検討することをおすすめします。今よりも安く取引できる会社が見つかったり、円安の進展に伴い取引内容を変更したりと言った交渉の余地を見出せます。 

国内生産の強化 

海外での生産、及び海外からの原材料輸入を見直し、国内生産、国内取引を強化することで円安の影響を軽減することもできます。最近では周辺国の経済発展に伴い、海外工場を引き上げ、国内生産に切り替える企業も増えています。 

海外生産を続けてきたが、採算が合わなくなってきたという場合には、円安を機に国内生産や国内での原材料調達に舵を切るのも一つの手です。 

円安は実はチャンス。今こそ海外事業を始めるべき

まとめ 

経済のグローバル化が進む中で、必ずしも海外進出を強行することが善であるとは限りません。円安の時代に突入した今、生産コスト削減のための海外進出は悪手となり、国際取引のアプローチを見直すべきタイミングに差し掛かっています。 

円安によってどんなコストをカットすべきなのか、そしてどんな市場にチャレンジするべきなのかを見極めながら、事業を展開しましょう。 

この記事を書いた人

野口慎平

GDX 事業責任者 兼 UDX株式会社ゼネラルマネージャー。
新卒で大手外資系総合コンサルティングファームにビジネス&テクノロジーコンサルタント職として就職。2016年よりプルーヴ株式会社に法人営業職として入社。慶應義塾大学理工学部・同大学院 理工学研究科電子工学修了。
海外SEOとマーケティングオートメーションを軸としたデジタルマーケティングを得意とする。
Salesforce Pardot甲子園2021優勝

取得資格:
応用情報技術者、IPAプロジェクトマネージャ、上級ウェブ解析士、IoTコーディネーター取得
Salesforce認定アドミニストレーター